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6257 藤商事

東証S
1,258円
前日比
-2
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PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
7.2 0.63 4.37 30.44
時価総額 307億円
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藤商事 Research Memo(4):大手の寡占化が進み業界全体の売上ベースでは緩やかな回復傾向に(1)


■藤商事<6257>の今後の見通し

1. 業界動向と市場シェア
(1) 業界動向
レジャーの多様化や規制強化などの環境変化を背景に、パチンコホール業界はここ数年、縮小傾向が続いてきた。特に2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)という逆風が吹き、外部環境が一段と厳しくなるなかで経営体力のない企業の撤退が相次ぎ、警察庁の発表資料によれば2022年末のホール軒数は7,665軒、前年末比で9.4%減となった。ホール軒数の減少に伴い遊技機の設置台数も年々減少傾向にあり、2022年末でパチンコ遊技機は同5.7%減の221万台、パチスロ遊技機は同7.9%減の136万台となった。また、業界団体である全日本遊技事業協同組合連合会が集計している組合加盟店における直近の営業店舗数を見ても、2023年10月末時点で前年末比6.9%減(472店舗減)の6,385店舗と減少傾向が依然続いている。10月末にホール大手の一角であった(株)ガイアが民事再生法の適用を申請したのは、遊技機業界の苦境を示す象徴的な出来事だったとも言える。ただし、ガイアのケースは会社の経営そのものに従来から問題を抱えていたところに、今回の市場環境の悪化が重なり、持ちこたえることができなかったと見られる。

店舗数の減少が続いているため、市場の縮小傾向が続いていると見られがちだが、売上ベースでは緩やかながらも回復傾向となっている。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によるパチンコホール売上高の前年同期比伸び率を見ると、2023年7~9月は前年同期比8.0%増となり2022年4~6月にプラスに転じて以降、6四半期連続でプラス成長が続いている。コロナ禍の収束やスマート遊技機の登場もあって若者から中年世代を中心に客足が徐々に戻ってきていることが背景にあると見られる。これは経営体力のない中小規模の店舗が淘汰され、大手の寡占化が一段と進んでいることの証左と見ることができる。実際、パチンコホール店舗数で国内トップのダイナムジャパンホールディングス<HK06889>のパチンコ事業の業績を見ると、2024年3月期第2四半期累計の売上高は前年同期比12.8%増と連続増収となった。コロナ禍前の2020年3月期第2四半期累計売上高に対してはまだ84%の水準ではあるものの、回復トレンドであることに変わりない。スマートパチスロ機を積極的に導入したことによって、パチスロの稼働率が上昇したことが要因だ。

こうした環境のなか、同社は2023年度の業界全体の出荷台数について、パチンコ遊技機は100万台(前年度比5.3%減)、パチスロ遊技機は70万台(同0.3%増)になると見ている。同見通しは期初計画を据え置いたものであり、実際にはスマスロでヒット機種が相次いだことから、パチスロ遊技機については80万台を超える可能性も出てきている。一方、パチンコ遊技機についてはスマパチの販売が総じて低調だったこともあり、当初の見通しからやや下振れする可能性もある。スマパチが低調だった要因は、従来機種とスペック面での差がほとんどなく、差別化が図りにくかった点にあると見られている。

(2) スマート遊技機(スマートパチンコ/スマートパチスロ)について
スマート遊技機と従来の遊技機との大きな違いは、スマパチについては玉が封入され循環式となったこと、スマスロはメダルレスとなったことが挙げられる。ともに遊技に必要な物理的な玉やメダルの貸出がなく、電子情報を元に遊技ができるため、感染防止対策になるほかプレイがしやすく不正防止対策にもなるなどメリットが多い。

ホール運営側は初期導入コストが掛かるものの、出玉やメダルの持ち運び、計数管理など店舗スタッフの業務が減少することで人件費の抑制につながる。また玉やメダルの補給装置が不要となるため省スペース化が図れるほか、店舗レイアウトも自由度が増すといったメリットがある。初期投資は掛かるが、ローコストオペレーションが可能となるため、スマート遊技機専門店舗が増えていく可能性もある。

メーカー側にとっては、スマート遊技機で魅力的な新機種を開発しシェアを拡大できる好機となる。今回のスマート遊技機の導入にあたって、ゲーム性が高く集客力向上が期待できるような遊技機の開発を可能とするため、規則の範囲内で業界内のレギュレーションが変更された。スマパチでは大当たり確率が従来の320分の1から350分の1になりスペック設計の幅が広がったほか、大当たりチャンス機能が拡充されるなど多様性のある遊技機開発が可能となった。ただ、前述のとおり従来機種と差別化を図れるほどのヒット機種が生まれていないのが現状であり、今後ホールの経営状況なども見ながらスペックの見直しが進められ、いずれは従来機からスマパチに置き換わっていくものと予想される。

一方、スマスロについては有利区間の最大遊技数※1が撤廃され、どの段階からも大当たりが期待できるようになったほか、出玉性能も従来は大当たり開始からの増加2,400枚が上限であったが、差枚で2,400枚が上限となり※2、これらを生かした新機種のヒットが相次ぎ、今後もスマート遊技機へのシフトが順調に進むと予想される。

※1 有利区間の最大遊技数は、現行の6.5号機までは有利区間の上限が連続4,000ゲームとなっており、最大遊技数に到達した場合に初期化され非有利区間(通常区間)に戻る。
※2 その日の台の収支がマイナス1,000枚だった場合、上限は3,400枚となる計算で、今まで以上に多くのメダルを獲得できるようになる(差枚方式については現行の6.5号機から採用)。


今回のスマート遊技機導入の目的の1つとして、業界の健全化につながるという点も挙げられる。各遊技機の出玉情報等を新たに設置された第三者機関の「遊技機情報センター」で一元管理することで、のめり込み対策や不正防止対策を行う体制を構築している。業界の健全化が進めば、客層の広がりにも期待が持てるようになる。スマート遊技機の普及率に関しては、2023年9月時点でスマスロが20%台、スマパチが3%弱の水準となったもようだ。当初は専用ユニットに用いられる半導体が不足して需要に供給が追い付かない状態が続いていたが、現状では部品不足の問題は解消しているようだ。

当初は2~4年で大半がスマート遊技機に置き換わるものと想定していたが、スマパチで従来機と差別化できる機種がいつ頃から導入できるかがポイントで、規制当局の意向次第となりそうだ。弊社では当面はホールの経営状況も見ながら慎重に進めるものと見ている。現状でスマパチの普及促進につながるスペックの規制見直しが行われた場合、スマパチへの投資余力のない中小ホールの経営状況がさらに悪化する可能性があるためだ。実際、2024年3月からライトミドル機や甘デジ機(大当たり確率1/200以上)を対象に「ラッキートリガー」※という新機能の搭載が可能となったが、スマパチだけでなく従来機でも搭載でき、こうした配慮が見て取れる。なお、市場の7割前後はミドル機で占められているため、台数増へのインパクトは限定的と見られるが、新機能の搭載により客足の回復が進めばホールの経営状況も良くなり、結果的にスマパチへの投資余力が生まれる。

※「ラッキートリガー」とは、これまで総量規制が6,400個(初回出玉を除く)と内規で定められていたものが、特定の条件を満たすことによって一部の獲得総量を9,600個(初回出玉を除く)まで高められるようになった。この状態をラッキートリガーという。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HH》

 提供:フィスコ

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