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2016年08月24日19時00分

中村潤一の相場スクランブル 「嵐の前の静けさか、それとも急騰前夜か」

株式経済新聞 副編集長 中村潤一

株式経済新聞 副編集長 中村潤一

●相場に求められるのは信念よりも柔軟な思考

 リオデジャネイロ五輪で日本は41個のメダルを獲得、前回のロンドン五輪を上回り過去最高を更新しました。土壇場での大逆転「金」などもあって大いに盛り上がりましたが、競技もさることながら選手の方たちの常に自然体でポジティブなコメントが心に残っています。フィジカルだけでなくメンタルトレーニングも行き届いている印象を強く受けました。

 一般社会においても「一念岩をも通す」とか「念ずれば通ず」というように、精神論からのアプローチで成功を勝ち得ることを是とする風潮があります。強い意志は物事を成就するうえで大切な要素に違いありません。しかし、残念ながら株式市場においては全く通用しない代物です。「信念は嘘よりも危険な真理の敵である」とはドイツ哲学の権威ニーチェの至言であり、これは相場においてもそのまま当てはまります。

 相場は海原のようなもの。投資家は流れに逆らわず、次に来る波の形をいかに早く察知するかが勝負ともいえます。波に飲まれるのではなく、波に乗るために必要なのは剛直さではなく柔軟性。同じ方程式でも時間軸によってその答えが変わるのが株式投資の難しいところでもあり、面白いところでもあるのです。

●嵐の前の静けさか、それとも…

 東京市場はいまだ方向感がはっきりしません。日経平均株価は25日・75日移動平均線がゴールデンクロスを示現した矢先に5日・25日線がデッドクロス、中期的には先高期待を内包しつつも足もとは気迷いムードを払拭できず、期待と不安が入り混じった微妙なバランスのなかで漂っています。26日のイエレンFRB議長のジャクソンホール経済シンポジウムでの講演内容を重視する声は強い。しかし、これは今買わない根拠として挙げやすいからであって、このスケジュールを消化しても、結局のところ株価や為替を大きく左右するような劇的な影響が出ることは見込みにくいと思います。

 ただし、米国株も日本株もチャート面で煮詰まっており、日柄的にはそろそろ動きが出てもおかしくない場面です。

 今最も警戒することは何かといえば、現象面からは大底圏まで急低下しているVIX指数の動向でしょう。昨年を振り返ると、同じ夏場の8月中旬から下旬にかけて事件は起こりました。チャイナ・ショックを背景に今のような10~13の底値圏から急騰し、瞬間風速で50を超える水準まで駆け上がったのです。VIX指数はいうまでもなく相場の波乱時に上昇する特徴があり、その時に照らし合わせて今が“嵐の前の静けさ”という見方も一部にはあるようです。

 実際、証券界には顧客を通じて派生商品で波乱を見込んだポジションを積み上げるような動きも観測されています。可能性として考えられるのは、売りの仕掛けを米国の利上げの動きに合わせてくるケース、もしくは中国リスクの再燃といったところでしょうか。

●緩和限界論とは対極のETF買い「見せ札」効果

 ただし、今は一部のヘッジファンドなど売り方に回っている側も苦しいことは事実でしょう。もみ合いの後、突如として踏み上げ相場(強制的な買い戻しによる加速的な上昇相場)のトリガーが引かれるケースも十分に考えられます。7月29日の金融政策決定会合で月額5000億円(年間6兆円)規模に倍増させた日銀ETF買いの威力が注目されましたが、その後の日経平均の上値の重さは見てのとおりです。ところが、8月に入ってからここまでの経緯をみても明らかなように、実際は「見せ札」にするだけで、日銀は想定に見合うペースでETFの買いを入れていないのです。

 月額5000億円消化するためには、3営業日に1回のペースで700億円強の買いを入れる計算になりますが、敢えて静観している。もし、日銀が「確信犯的」に焦らし戦術に出ているとすれば、ここ最近の後手後手に回っていたイメージを返上して、したたかさが復活した可能性もあります。外国為替市場では財務省・金融庁が為替介入を何度示唆しても足もとを見られ円高思惑がくすぶるのとは真逆のパターンで、まさに株式市場においては「沈黙」が売り方に対し強烈な牽制となっているのです。

 ポスト・アベノミクス相場のコンセプトが出来上がるまでにはまだ時間がかかるとの観点から、個人的には年内の日経平均1万8000円台回復は困難という見方を示してきました。しかし日銀の深謀遠慮が的を射た場合は、それが良い方向に外れる可能性も感じます。9月20~21日の決定会合での総括的検証を前に、マイナス金利や国債買い入れなど金融緩和策の限界論も囁かれるなか、行き詰まった感のある日銀の姿に売りの蓋然性が高まったと判断する動きがあって全く不思議はないところです。しかし、7月29日を境に状況は静かに変わったのかもしれません。

 ETF買い入れ枠倍増に対し意外なくらい市場の評価は低かったようにも思えますが、見せ札としてチラつかせるだけで今の水準を保っていることに意味があります。大人に後ろを押さえてもらって自転車に乗る練習をしている子供が、ペダルを漕ぎながらふと後ろをみたら既に手を放していたような状態。これは売り方にとってはかなりのプレッシャーです。

 ETF買いのカードを小出しのままで踏み上げ相場のスイッチが入るとすれば、日銀の究極の見せ札作戦が功を奏したことにもなりますが、果たしてどうでしょうか。

●半導体順張りかフィンテック、自動運転の安値買い

 物色対象としては、まず、強い株につくのであれば半導体製造装置関連。前週18日に米アプライドマテリアルズが発表した5-7月期決算が市場コンセンサスを上回り、出来高急増のなかマドを開けて買われており、その流れが東京市場にも波及しています。既にSCREENホールディングス <7735> は2006年1月以来、10年半ぶりの高値圏を走っている状況。同社株は特別な事例としても、東京エレクトロン <8035> やアドバンテスト <6857> なども同様に強いチャートで、今の地合いを反映しています。株式需給面で共通するのはいずれも大幅に売り長(信用売り残が買い残を上回る状態)であることで、上値の軽さを示唆しています。

 一方、テーマ株物色の動きも根強く続くとみています。ここ刺激材料の多いフィンテック関連ではさくらインターネット <3778> のほか、PERや配当利回りなど株価指標面で割安感のあるマネーパートナーズグループ <8732> 、システムの性能監視で業界を先駆し、IoT(モノのインターネット)やブロックチェーン関連分野で活躍が期待されるアイビーシー <3920> [東証M]などが狙い目。いずれの銘柄もチャート的に安値圏でリバウンド妙味が意識されていることもポイントです。

 ZMPフォーラムが31日から開催されるなか、自動運転関連にも物色の矛先が向く可能性があります。24日には、日産自動車 <7201> が自動運転機能を国内メーカーで初めて搭載した全面改良「セレナ」を発売。また、9月24、25日に長野県で開かれるG7交通相会合で、政府は自動運転車の安全基準案やサイバー攻撃対策を議題とする方針が伝えられており、自動運転の実用化に向けての環境整備が加速していくことになりそうです。アイサンテクノロジー <4667> [JQ]やアートスパークホールディングス <3663> [東証2]、モルフォ <3653> [東証M]など再注目される公算が大きそうです。

(8月24日記、隔週水曜日掲載)


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