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2676 高千穂交易

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高千穂交易 Research Memo(4):2017年3月期は減収増益、無借金経営が続き財務基盤は安定


■業績動向

1. 2017年3月期の業績概要
(1) 損益状況
高千穂交易<2676>の2017年3月期は、売上高19,037百万円(前期比4.8%減)、営業利益500百万円(同14.6%増)、経常利益700百万円(同70.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益279百万円(同171.0%増)の減収増益となった。

売上総利益率は25.3%となり、前期の24.9%から改善した。販管費は、のれん償却額が346百万円(前期は434百万円)へ減少したこともあり、4,313百万円(前期比4.9%減)となった。この結果、営業利益は前期比14.6%増となった。さらに、前期の為替差損の発生要因の解消を図り、営業外収益として為替差益114百万円を計上したことなどから経常利益は増益となった。親会社株主に帰属する当期純利益は特別損失の発生を経常利益の増加で吸収したことから大幅増益となった。尚、この特別損失のうち87百万円は、2012年の買収により発生したのれんを、償却を半年前倒しし、残存価額全額の減損損失を計上したことなどによるものである。

(2) 財務状況
2017年3月期末の財務状況を見ると、流動資産は15,699百万円(前期末比707百万円増)となった。主要科目では現金及び預金405百万円増、受取手形及び売掛金126百万円増、たな卸資産83百万円増であった。固定資産は2,861百万円(同400百万円減)となったが、内訳は有形固定資産が304百万円(同2百万円減)、無形固定資産1,147百万円(同440百万円減)、投資その他の資産1,409百万円(同42百万円増)となった。無形固定資産の減少は主にのれんの減少406百万円による。この結果、資産合計は18,561百万円(同307百万円増)となった。

流動負債は4,034百万円(同341百万円増)となったが、主な変動は支払手形及び買掛金の増加283百万円などであった。固定負債は691百万円(同24百万円減)となったが、主な変動は退職給付に係る負債の減少14百万円などである。純資産は13,834百万円(同10百万円減)となった。期末で833,957株(783百万円)の自己株式を所有している。なお、長年無借金経営を続けており、財務基盤は安定していると言えるだろう。

(3) キャッシュ・フローの状況
2017年3月期のキャッシュ・フローは以下のようであった。営業活動によるキャッシュ・フローは898百万円の収入(前期371百万円の収入)となった。主な収入は税金等調整前当期純利益の計上588百万円、減価償却費124百万円、のれん償却額346百万円、仕入債務の増加307百万円等であった。一方で、主な支出は売上債権の増加61百万円、たな卸資産の増加81百万円等であった。投資活動によるキャッシュ・フローは122百万円の支出(同349百万円の収入)となったが、主に有形固定資産の取得による支出111百万円など。財務活動によるキャッシュ・フローは407百万円の支出(同591百万円の支出)となったが、主に自己株式の取得による支出179百万円、配当金の支払いによる支出226百万円による。この結果、期中の現金及び現金同等物は391百万円増加し、期末残高は5,563百万円となった。

2. 2017年3月期のセグメント別状況
セグメント及びサブセグメント別の状況は以下のようであった。

(1) システム事業
システム事業の売上高は11,347百万円(前期比1.5%増)、営業利益は粗利益の増加、販管費の削減(のれん償却費の減少88百万円含む)によって294百万円(同253.6%増)と大幅増益となった。サブセグメントの状況は以下のようであった。

a) セキュリティ
売上高は7,174百万円(同2.6%増)となりセグメントの増収をけん引した。国内では、小売関係(GMS、ホームセンター/スポーツ、ドラッグなどの店舗向け)は、防犯に対する設備投資が未だ先送りとなっていることから、これらの企業向けの売上高は伸び悩んだが、モバイル(2017年3月期から新設)が大手携帯キャリア向けにディスプレイセキュリティシステムの大型案件を獲得したことでカバーした。またオフィス向けは、外資系企業を中心に入退室管理システムが好調に推移した。一方、海外では順調に拡大している。TKFS※は防火システムに加え、日系リテール(小売)向け商品監視システムも好調に推移した。Guardfireは、原油の値下がりの影響で石油プラント関連はやや低迷したが、新規・拡張が多く計画されている発電所案件に注力したことから、この分野は順調に推移した。

※TKFS:Takachiho Fire, Security & Services(Thailand) Ltd.


b) その他ソリューション
売上高は1,612百万円(同2.8%減)となった。期待されていたRFID関連は、顧客の要求複雑化と効果検証の長期化に伴い大型案件が後ずれしたことから売上高は456百万円(前期比23.9%減)となった。メーリングは、新機種の拡販に成功し、前期のマイナンバー関連の特需の剥落を最小限に抑え、売上高は549百万円(前期比6.9%減)に踏みとどまった。その一方で、ネットワークは引き続きクラウド型無線LANシステム(Meraki)がコンビニや小売店向けに好調に推移し売上高は606百万円(同29.5%増)となった。

c) カストマ・サービス
大手携帯キャリア向けディスプレイセキュリティシステムの大口保守収入などが増加したことから、売上高は2,561百万円(同1.2%増)となった。

(2) デバイス事業
デバイス事業の売上高は7,689百万円(同12.6%減)、営業利益は210百万円(同39.6%減)となった。減収に加えて円安や競争激化により利益率が低下したことから大幅な減益となった。サブセグメントの状況は以下のようであった。

a) 電子プロダクト
売上高は3,061百万円(同11.2%減)となった。重点市場にしている産業機器市場は1,388百万円(同0.9%減)とわずかながら減収となった。ターゲットとしていたIP-PBX(構内交換機)用プロセッサの大口案件が後ろ倒しとなったが、半導体製造装置などその他の製品向けでカバーしてほぼ前期並みを維持した。アミューズメントは、市場全体が低迷する中で、独自の電源周辺部品のソリューションの提案と開発により僅かだが増収となった。それ以外の家電向けや携帯電話向けなどは苦戦し、売上高は減収となった。

b) 産機プロダクト
売上高は4,627百万円(同13.6%減)と大幅な減収となった。向け先別では、自動機が1,573百万円(同24.1%減)と大幅減となったが、これは、これまで業績を牽引してきた中国のATM市場で自国製品へのシフトが進みつつあり、日本のATMメーカーの出荷が低減したことに連動したものである。今後は中国以外の成長市場向けのATMビジネスに期待する共に、一方で米国の世界最大級の小売チェーン店の金融端末向けの大型案件も獲得しており、ATM以外のビジネスも推進する。遊技機向けは競争激化により売上高は483百万円(同33.5%減)と大幅減収となった。住設の売上高は707百万円(同0.7%増)と微増収であったが、今後は米国市場での販売を本格的に開始する計画だ。

(3) トピックス(防火事業)
今後の同社の事業展開の中で、最も注目されるのが海外での防火事業だが、その主役を担うのがGuardfireである。

a) Guardfireの概要
2014年12月にM&Aにより取得し、高度防火システムプロバイダーとして、PPOG※1向けに最適なデザイン・機器供給を行っている。事業エリアは東南アジア全域で、顧客は主に日系、韓国系の大手プラント建設会社である。NFPA※2遵守が求められるプロジェクトで優位性を発揮している。

※1 PPOG(Power Petrochemical Oil and Gas)=発電所、化学工場、石油施設、ガス施設。
※2 NFPA(National Fire Protection Association)=米国防火協会が制定する防火・安全設備及び産業安全防止装置などの規格。


b) 東南アジアでの電力需要予想
Guardfireは、発電所がメインユーザーの一つである。東南アジアの主要国の電力需要予想は以下のようになっており、今後多くの発電所が建設される可能性が高い。Guardfireにとっては追い風の環境が続くと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《NB》

 提供:フィスコ

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