貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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5802 住友電気工業

東証P
2,853.0円
前日比
+12.5
+0.44%
PTS
2,852.7円
13:56 12/18
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
14.8 0.97 2.70 11.61
時価総額 22,651億円
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林卓郎(岩井コスモ証券)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―

日米の株式相場が堅調に推移している。トランプ前大統領が米大統領選に勝利し、次期政権での減税や規制緩和を期待した楽観論が相場水準を押し上げている。歴史的な円安も、日本の株式市場への追い風となっている。もっとも、次期政権で想定される関税引き上げや国境管理の厳格化などの影響を受ける米国のインフレ懸念は根強い。ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ヒズボラ、ハマスなどとの衝突も依然として収束のメドがつかない。アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第32回は、岩井コスモ証券の林卓郎・投資情報センター長に話を聞いた。

●林 卓郎(はやしたくろう)
岩井コスモ証券 投資情報センター長。証券系調査機関での企業アナリストを皮切りに、テクニカルアナリスト、市場分析業務などに従事。国内保険会社にて国内株式を中心としたファンド運用や、為替トレードや外債投資を手掛けた後、2004年コスモ証券に(再)入社。自己売買部門での短期運用業務を担当後、2008年から日本株市場分析に従事。テレビ東京モーニングサテライトなどメディア出演多数。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。

林 卓郎氏の予測 4つのポイント
(1) 半年後の日経平均株価は4万2000~4万3000円程度
(2) 半年後のダウ工業株30種平均は4万6000ドル程度
(3) 米景気のハードランディング懸念は払拭。製造業の設備投資回復に注目
(4) 日本の株式市場では金融、電力インフラ、半導体、防衛関連に注目

―― 11月の米大統領選でトランプ元大統領が勝利し、経済政策への期待から日米株価は堅調に推移しています。半年後(2025年6月末)の株価水準をどう見ていますか。

林:私は半年後の日経平均株価は4万2000~4万3000円程度と予測しています。日経平均株価の動きは、2024年末高、25年は年央も高く、ひと休みして年末も高いというイメージです。半年後のダウ工業株30種平均は4万6000ドル程度だと見ています。

―― 「米大統領選後は株高」というアノマリー(経験則)通り、引き続き株高が続くとの予測ですね。背景を教えて下さい。

林:背景には、米景気の持ち直しが続き、今後も利下げによる景気浮揚が見込まれていることがあります。トランプ次期大統領は25年末に期限を迎える個人所得減税など、いわゆる「トランプ減税」の延長や、社会保障給付や残業代などへの免税など幅広い減税策を掲げており、さらなる景気の押し上げが期待できます。

 日本の景気も持ち直しの動きが始まっています。来年前半は海外景気が改善する方向で、日本企業の業績も改善するでしょう。ここへきて個人消費も回復の兆しが見えてきました。名目賃金から物価変動の影響を除いた10月の実質賃金は前年同月比で横ばいまで回復し、25年の春季労使交渉(春闘)でも一定の賃上げが期待できます。

 こうしたことから、25年3月期、26年3月期は日本企業の純利益は10%近い成長になると考えられます。米国企業も25年12月期、26年12月期は10%程度の増益となると予測しています。

―― 米国経済にはハードランディング(景気の急速な後退)懸念がありましたが、払拭されたのでしょうか。

林:私はすでに払拭されたと見ています。米国の製造業は大統領選前の設備投資の手控えもあって、業績改善がもたついていました。しかし、トランプ氏の勝利が確定し、製造業の投資も回復しつつあります。個人消費の強さを受けてサービス業は引き続き業績拡大が続きます。今後は景気を牽引してきたサービス業に製造業が追いつき、企業活動全体が活発になるでしょう。

―― トランプ次期米政権への政策期待は減税以外にもあるのでしょうか。

林:大統領選挙と上下両院選挙の結果、共和党は大統領職と上下両院の多数派を占める「トリプルレッド」を実現しました。大統領職と議会の多数派が異なる「ねじれ議会」と比べればトランプ氏が自らの政策を実現しやすいと言えます。トランプ氏はシェールオイルやシェールガスの開発に積極的で、関連産業にも恩恵があるでしょう。大統領選の不透明感も払拭されたことで、よほどのインフレにならない限りは景気減速の懸念はないでしょう。

―― 日本では石破茂政権が発足しましたが、経済政策への期待は。

林:市場関係者の間では安倍政権の経済政策「アベノミクス」復活を掲げる高市早苗氏への期待が大きく、金融所得課税に積極姿勢を示していた石破氏が総裁選で選出された際には、株式市場で「石破ショック」が起きたほどでした。しかし、石破氏はその後、金融所得課税への姿勢をトーンダウンし、所得税の納付が必要になる「年収103万円の壁」の引き上げや原発再稼働などに取り組もうとしています。景気浮揚策がスピードアップするようなら株式相場にも好影響があるかもしれません。来年の参院選に向けて、経済浮揚策に積極的な政権の誕生への期待が高まる可能性もあります。

―― 東京証券取引所によるPBR(株価純資産倍率)改善要請後、上場企業による自社株買いなど株主還元も積極化しています。

林:2024年の上場企業による自社株買いは10兆円を超え、過去最高水準に達する見通しです。よほどの業績悪化がなければ、25年もこうした傾向は変わらないでしょう。企業の株主還元やPBR改善の動きが日本の株式相場を押し上げる流れは続くと考えられます。

図1 自社株買い総額は過去最高を大きく更新へ(暦年)
【タイトル】

―― トランプ次期米大統領の政策には関税強化など負のリスクも懸念されています。

林:経済・景気への悪影響という意味で注目されるのは、高関税と移民政策です。いずれもインフレをさらに高める懸念があるためです。中国などへの追加関税は輸入物価を押し上げ、不法移民の強制送還などは人手不足を通じた賃金インフレを招く可能性があります。トランプ氏の政策はディール(取引)外交と言われますから、当初懸念していたよりはマイルドな政策になると期待しています。いずれにしても、変動率の高い日本の株式相場はトランプ次期政権の誕生後はさらに落ち着かない展開になりやすいと思います。

―― トランプ氏の米大統領就任後には中国による台湾侵攻など地政学的リスクも懸念されています。近い将来に株式相場が急落するリスクはありますか。
 
林:地政学的リスクへの懸念はありますが、世界大戦のような事態にならなければ株式相場の急落にはつながらないと思います。米国で予想外の高インフレが起こり、大幅な利上げをせざるを得ないなど想定外の事態が発生した場合、株価が2~3割下落することは考えられます。

―― とはいえ、米国株のPER(株価収益率)はかなり上昇してきています。

林:S&P500株価指数のPERは20倍を超え、過去に比べて高くはなっていますが、収益力と成長期待の強い米国の巨大テック7社「マグニフィセント・セブン」が引っ張っており、バブルとまでは言えません。金融面でも2008年の世界的な経済危機「リーマン・ショック」時のような金融システム不安に陥るような素地はないと思います。

―― 今後半年の円相場をどう予測していますか。

林:今後半年間は1ドル=145~150円程度の推移になると予測しています。米連邦準備理事会(FRB)は利下げ、日銀は利上げ方向ですが、双方ともペースは緩やかで、日米金利差の縮小はそこまで大きなインパクトはないと考えています。

―― 注目するセクター、銘柄を教えて下さい。

林:日本市場では銀行、損保など金融株です。日銀による利上げ期待から今後も株価上昇が続くと見られます。フジクラ <5803> [東証P]や古河電気工業 <5801> [東証P]、住友電気工業 <5802> [東証P]のような電力インフラ、三菱重工業 <7011> [東証P]など防衛関連にも注目しています。東京エレクトロン <8035> [東証P]など半導体や自動車関連にも戻り余地があるでしょう。

―― トランプ米政権の誕生を控え、世界の政治経済は激動の時代を迎えています。個人投資家は今後、どのような姿勢で投資をしていくべきでしょうか。

林:日本は企業改革やデフレ脱却の動きが続いており、株式相場の方向性は前向きに見て良いと思います。株価指数は神経質な動きが続きますが、業績の良い銘柄を仕込んでいくことが重要です。来年は今年前半のように日本株見直しの可能性もあると見ています。

(※聞き手は日高広太郎)


◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
【タイトル】
1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証1部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「B to B広報 最強の戦略術」(すばる舎)を出版。内外情勢調査会の講師も務め、YouTubeにて「【BIZ】ダイジェスト 今こそ中小企業もアピールが必要なワケ」が配信中。


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