ユニリタ Research Memo(7):IT・事業・社会課題の解決を通じた成長加速に向けて、事業基盤の確立に取り組む
■中期経営計画の方向性
1. 基本方針とこれまでの経緯
ユニリタ<3800>は、2022年3月期より3ヶ年の中期経営計画をスタートし、最終年度を迎えている。「共感をカタチにし、ユニークを創造するITサービスカンパニーへ」を基本方針とし、グループの経営資源とITソリューション力を活かした事業活動を通じて、事業会社としての経済的価値と社会課題解決による社会的価値の双方を実現する方向性である。特に、これまでの事業構造変革を通じて強化した「データマネジメント」「サービスマネジメント」「プロセスマネジメント」の3つのコアテクノロジーをもとに、顧客のビジネスモデルを変革していくためのDXサービスを提供することで、成長を加速していく計画だ。
コロナ禍の長期化等に伴い、今後の成長ドライバーと位置付けている「クラウドサービス」の一部(事業推進クラウド事業、ソーシャルクラウド事業)の進捗に遅れが生じたことから、2022年5月13日付けの2022年度通期業績予想は中期経営計画を下回ったものの、その後、旺盛なDX投資を追い風に各事業が順調に伸びてきたことを踏まえ2023年5月12日付けで公表した2023年度通期業績予想は中期経営計画を上回るに至った。ただ、事業戦略そのものに当初からの変更はない。
2. 重要戦略
(1) サービス提供型事業の創出
プロダクト(自動化、帳票、メインフレーム)については、システム運用領域に集中し、社会基盤を支える顧客への高付加価値サービスを持続的に提供する体制を構築する。また、自社開発製品の強みを活かした所有型(オンプレミス型)と利用型(クラウド型)双方のニーズへの対応を図り、サービス提供型事業を創出していく。
(2) カテゴリ別戦略によるクラウドサービス事業の拡大
IT課題から事業課題、さらには社会課題への解決に向けた市場の拡大を見据え、同社の強みを活かしたクラウドサービスを、1) IT活用クラウド事業(ITの活用や合理化を支援)、2) 事業推進クラウド事業(ビジネスの成長に不可欠なサービスの提供/業種・業態別の共通プラットフォームの創出)、3) ソーシャルクラウド事業(データサイエンス事業の拡大/社会課題解決型事業の確立)の3つのカテゴリに区分した。カテゴリごとにユニークなクラウドサービスを創出し、積み上げ型の継続課金(サブスクリプション)モデルによる成長を実現していく。
(3) 新たな事業セグメントに対応したグループ機能の再編
グループの事業セグメントを以下の3つに再編し、環境変化のスピードと多様化するマーケットに適応する事業体制の下、事業を推進し社会課題の解決を図っていく。
a) プロダクトサービス
システム運用領域に集中し、中期的な収益基盤としてグループの成長投資を支える源泉を担う。特に、培ってきた強みを深化させ、DXの環境下での顧客ニーズへの対応力強化と事業効率の追求により、新規事業開発のリソースを創出する。
b) クラウドサービス
これまで比率の高かった「IT課題」解決領域から、「事業課題」「社会課題」解決領域へと拡大することで、新しい市場でスケールするビジネスモデルを構築していく。将来の事業の柱として確立するためにリソースを集中し、収益基盤としての成長を目指す。
c) プロフェッショナルサービス
「データ」「プロセス」「サービス」の3つのマネジメント領域における強みと専門性により、プロダクトやクラウドサービスの顧客価値を高める役割を果たし、第2の成長エンジンとして機能させる。コンサルティングからサービスの導入支援、システムインテグレーション、アウトソーシングまでのワンストップ提供体制を確立する。
(4) 企業価値向上に向けた経営基盤の強化
前中期経営計画で推進してきた「働き方変革への取り組み」「挑戦する文化の醸成」「CREDO※1の浸透」をさらに発展させ、CSV経営※2の実現へと結び付けていく方針である。特に、様々な施策を通じて「働き甲斐の醸成」と「業務変革の推進」に取り組むとともに、実効性の高いコーポレート・ガバナンスの下、企業価値を向上させるための体制構築を目指していく。
※1 同社の信条。「社名の由来でもある『ユニークな発想』と『利他の精神』の下、3つの強みによる価値を社会へ提供 不断の変革と挑戦を持って、社会とそして社員と共に成長する」ことをCREDO(信条)としている。
※2 Creating Shared Valueの略。「共通価値の創造」という意味で、マイケル・ポーター教授がハーバード・ビジネス・レビューで提唱した概念。企業が、社会ニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味する。
3. 弊社アナリストによる注目点
弊社でも、DX推進の動きが社会全体で本格化する一方、IT人材不足が顕在化するなかで、これまでのIT課題だけでなく、事業課題や社会課題にまで領域を拡げるとともに、ワンストップソリューション体制の提供により、需要の拡大を取り込んでいく方向性は、持続的な成長を実現していくうえでも理にかなっていると評価している。コロナ禍の長期化による影響もあり、新たな市場の開拓に時間を要しているものの、足元では様々な動きも出てきており、1つひとつ実績を積み上げていくことが今後の事業拡大につながるものと見ている。これまでのWebマーケティングによる新規開拓に加え、グループの顧客基盤の活用やパートナー企業との協業を通じた複合的なチャネル強化に期待したい。また、ソーシャルクラウド事業については、データを集めるところにこそ将来の優位性や参入障壁が確立されるビジネスモデルであるため、本格的な収益化にはさらに中長期の目線が必要になるだろう。いずれにしても、安定した収益源であるメインフレーム事業がキャッシュカウとしての役割を担っている間に、次の収益の柱を育て上げ、強固な収益基盤の維持・向上を図っていくことが中長期の最大のテーマであることは明らかであり、そういった視点から、今後の動向に注目する必要があろう。次の中期経営計画では、この3年間の取り組みをいかに発展させ収益化していくのか、事業ポートフォリオの変革と収益性改善に向けた道筋に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《SO》
提供:フィスコ