【市況】明日の株式相場に向けて=巨大なるバリューの伏兵トヨタとその周辺株
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートよりそれもそのはず、日経平均の下落幅の8割方はアドバンテスト<6857>とソフトバンクグループ<9984>の2銘柄によってもたらされたといってよい。これまではこの2銘柄が崩されて容易に戻れない状況となったら、相場全体の上昇トレンドも終了形という暗黙のコンセンサスがあった。しかし、その当然と思われたシナリオに良い意味で誤謬が生じているようだ。TOPIXはプラス圏で引け、NT倍率の低下が一段と急ピッチとなっている。このNT倍率の低下は何を意味するかと言えば、これまでモメンタム相場の極致にあったAI半導体やAIデータセンター関連から、バリュー株への資金シフトの流れが思いのほかスムーズに進んでいるということになる。銀行、保険などの金融や鉄道株などの内需インフラ関連が資金シフトの受け皿として機能しているのだ。
きょうの日銀短観(12月調査分)で企業の景況感を示す大企業・製造業DIがプラス15と3四半期連続で改善を示した。これを受け、今週末19日に発表される日銀の金融政策決定会合は、0.25%の利上げに動くことがほぼ確実という認識でマーケットも織り込む格好となっている。ただ、問題はその後に行われる植田和男日銀総裁の記者会見である。ここで植田総裁がタカ派的なコメントを発するか、ハト派的なコメントを発するかで来週以降の相場に大きな影響を与えるわけだが、市場では「一時メディアを通じてタカ派的なアドバルーンを上げたものの、マーケットは織り込めていないという感触をつかんだのか、ハト派路線に変更した印象」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。
住宅ローンの問題や地銀の財務面に影響を及ぼす拙速な利上げは危険、という判断がおそらく働いている。また、立地条件で劣後するタワーマンションなどからのチャイナマネーの退潮が観測され始めるなか、利上げを急いだことで、タワマンバブルの崩壊の端緒となるようなことは避けなければならない。そういう意味で火薬庫の存在は常に警戒しなければならないが、今の1%以下の低金利環境がモラトリアムで維持されれば、すぐに引火することもない。バリュー株への資金還流は利上げ後の緩やかな金融正常化と共存が可能である。
こうしたなか、静かにトヨタ自動車<7203>が強調展開を継続し、前週末に続いてきょうも連日で年初来高値を更新している。バリュー株への資金流入は自動車株の勝ち組にも向いているが、いうまでもなく同社はその筆頭に位置付けられる。ここはトヨタ系列の銘柄にも物色資金が波及する可能性を改めて念頭に置いておく場面と言えそうだ。具体的には売上高の約70%をトヨタ向けで占める大豊工業<6470>に注目。ベアリング、ダイカスト、金型3部門を主力展開するが、エンジンベアアリングでは世界首位級の商品競争力を誇っている。有配企業で配当利回りは2.5%台、PBRはわずか0.3倍台だ。26年3月期は営業利益見通しも増額修正されており、前期比3.8倍化を見込む。
また、同じくトヨタ向け売り上げが全体の70%以上を占めるフタバ産業<7241>もマークしておきたい。こちらはPBRが0.7倍台だが、PERが7倍台ということもあって買い安心が強い。更に3.8%台という高配当利回りも魅力となる。他方、思惑含みの値動きとなっているのが共和レザー<3553>だ。今月2日に商いを伴い急騰を演じ、その後は商いこそ細ったものの、高値圏でなお上値慕いの動きをみせている。トヨタ系の合成樹脂メーカーで、こちらは利益の増減が期ごとに大きく振れやすく収益は安定性に乏しい面がある。しかし、26年3月期業績は大幅減益見通しにあるにもかかわらず投資資金の波状的な流入が止まらない。PBRは0.6倍台で、5%台という高配当利回りは異色。信用買い残はほぼ枯れた状態にあり、需給面での足の軽さも短期筋の琴線に触れやすい。
あすのスケジュールでは、12月のS&Pグローバル日本製造業購買担当者景気指数(PMI)など。また、この日はIPOが1社予定されており、東証プライム市場にNSグループ<471A>が新規上場する。海外では8~10月期英失業率、12月のS&Pグローバル英PMI、12月のS&Pグローバルユーロ圏PMI、10月のユーロ圏貿易収支、12月の欧州経済研究センター(ZEW)独景気予測指数などが開示されるほか、米国では11月の米雇用統計にマーケットの関心が高い。このほか、9月の米企業在庫、10月の米小売売上高、12月のS&Pグローバル米PMI、米12月NY連銀ビジネスリーダーズサーベイなどが開示される。(銀)
出所:MINKABU PRESS

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