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世界が変わる! 量子コンピューター「最強穴株5銘柄」精選 <株探トップ特集>


―DXの次の革命ステージは次世代コンピューティング、量子技術で輝き放つ銘柄群は―

●次世代コンピューティングの主役

 AI・IoT時代の到来が叫ばれて久しいが、人類の進化はここで止まるわけではなく、次世代テクノロジーの領域としては未だ山麓に過ぎない。IT全盛時代へといざなうデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは、更に一歩先を見据え次のステージへ向かおうとしている。ハード面でその先導役となるのは次世代コンピューティング分野だ。

 そして、次世代コンピューティングの主役候補として脚光を浴びているのが「量子コンピューター」である。コンピューターの動作原理である「01」はいわゆるデジタルの代名詞といってもよい不動のコンセプトであり、たとえ最先端のスーパーコンピューターであってもこの基本原理に変化はない。

 ところが量子コンピューターはこの常識を覆し、スーパーコンピューターですら千年あるいは1万年という膨大な時を要する演算を、数分もしくは数十秒で完結してしまうという神がかり的なハイパフォーマンスを実現させた。量子力学的な領域である“重ね合わせ”や“もつれ”など極微の世界で起こり得る物理現象を利用して並列コンピューティングを実現させるというもので、「0であり、かつ1でもある」状態がその演算能力の源泉である。

●政府も量子技術育成に本腰

 政府は2020年1月に策定した「量子技術イノベーション戦略」に基づき研究開発を推進してきた。具体的には国内の大学や研究機関に8つの拠点を設置し、量子コンピューティングや量子暗号通信、量子センサーなどに絡む技術の深耕を図ったが、ここにきて世界的に同分野への取り組みが加速していることから、ブラッシュアップする形で今年4月に新戦略「量子未来社会ビジョン」を策定、政権内でも量子技術は国際的覇権争いの中核となる重要技術との認識が高まっている。

 また直近では、今月10日に政府は量子技術の産業化を議論する有識者会議を初めて開き、国策主導でサービス開発などに向けた動きを本格化させる方向にある。来年春にも報告書をまとめる計画という。量子技術のスタートアップ育成についても、今後は政策的な追い風が吹く可能性が高まっており、株式市場でも投資マネーが色めき立つことになりそうだ。

●オールジャパンで量子技術育成へ

 もちろん民間企業も負けてはいない。昨年9月に「量子技術による新産業創出協議会」が創設されたが、トヨタ自動車 <7203> [東証P]やNEC <6701> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、日立製作所 <6501> [東証P]、東芝 <6502> [東証P]、NTT <9432> [東証P]といった錚々(そうそう)たるメンバーを擁し、そのコンセプトは、量子技術の応用による中長期的な新産業の創出をオールジャパン体制で目指すというものだ。ちなみに、これらの大企業に交じって、システム開発 企業で量子コンピューター分野を先駆するフィックスターズ <3687> [東証P]が理事を務めているのは特筆に値する。同社は株式市場のフィルターをかけて見れば時価総額400億円弱の小型株だが、量子コンピューター分野では一目置かれた存在であることの証左ともいえる。

 Fスターズは100%子会社の「Fixstars Amplify(フィックスターズ アンプリファイ)」を設立し、量子コンピューターの進化に合わせ、クラウド基盤で組み合わせ最適化を実現するためのアプリ開発を支援している。同社はカナダの量子アニーリングの有力ベンチャーであるDウェーブ社と早くから業務提携しているが、このほか、国内では富士通や日立、海外ではIBM<IBM>などと提携して対応マシンを取り扱う。大企業を中心に量子コンピューター及びその周辺技術を育成する動きが活発化するなか、関連最右翼として、Fスターズに再びスポットライトが当たる日も近そうだ。

●意外性十分、株価変貌期待の5銘柄

 米国ではアルファベット<GOOGL>傘下のグーグルやIBM、マイクロソフト<MSFT>といった巨大IT企業が量子コンピューターを巡りしのぎを削っている。日本はそこから一歩も二歩も遅れた存在ではあるが、それだけに今後は官民を挙げて社会実装に向けた取り組みが加速する可能性が高い。岸田政権では22年度中に国産初の量子コンピューターを整備する方針を掲げ、30年には量子技術の利用者を1000万人とする数値目標も掲げている。これを前提に30年の量子技術による産業の生産額は実に50兆円規模に達するという試算もなされている。

 くしくも現在、株式市場では日米ともにテクノロジー株の人気が復活しているが、量子コンピューター関連は投資テーマとしてその流れに乗る。以前と比較して関連株の裾野も広がりをみせている。今回のトップ特集では、株価変貌の可能性を内在させる量子コンピューター関連の穴株を5銘柄厳選。ここからの株価パフォーマンスに注目したい。

◎オキサイド <6521> [東証G]

 オキサイドは光学分野における酸化物単結晶やレーザー光源、光デバイスの開発・製造を手掛ける“光関連企業”で、成長分野に特化したニッチトップのビジネスモデルを特長とする。半導体の高集積化が進むなか、紫外レーザーが旺盛な需要を確保している。一方、光学系分野の製品技術を量子分野にも横軸展開していることは要注目。同社は今年5月に横浜国立大学発のスタートアップで量子暗号通信の研究開発を行っているLQUOMに出資し、協業で同分野を深耕する動きにある。また、今期はR&Dを強化し、金額ベースで当初計画から7割引き上げる方針を示しているが、その背景にあるのが量子通信技術の研究開発だ。量子コンピューター間の通信に必須となる中継器に使われる光関連デバイスの製造を同社が担うことで、今後存在感を大きく高めることになりそうだ。業績も急拡大局面にあり、トップラインの伸びが顕著。23年2月期売上高は前期に続き3割以上の伸びを見込み、増収効果を反映して営業利益は前期比51%増の9億円を見込む。24年2月期以降も高い利益成長率が継続する公算が大きい。

◎日本航空電子工業 <6807> [東証P]

 航空電子はNEC系のコネクター 大手で、ほぼ専業的にコネクター製造を手掛けるが、高度な技術力を駆使してインターフェース・ソリューションや航機事業なども展開する。創業以来、積極的なR&D投資を推進し、量子コンピューター分野もその対象の一つ。同社は人工衛星など宇宙ビジネスで培った技術をベースに、量子コンピューターなどの最先端装置向け非磁性対応SMPM同軸コネクター及び超低温非磁性同軸ケーブルのアッセンブリー品試作開発に成功している。業績も好調だ。産業機器向けや車載用にコネクター需要が活況で円安メリットも発現しており、23年3月期上期(22年4-9月)は営業利益段階で前年同期比17%増の108億2200万円を達成し従来計画も超過した。更に通期営業利益については前期比22%増の220億円を見込んでいる。なお一株利益は203円を見込み、これは過去最高を大幅に更新する。来期以降も成長余力は十分であり、12倍前後のPERは株価水準訂正の可能性を強く示唆、早晩3000円台指向とみておきたい。

◎インテリジェント ウェイブ <4847> [東証P]

 インテリWはシステム開発を手掛け、特に金融決済システム分野で高い実績を持つ。大手クレジットカード会社を主要顧客にカード決済システムでトップシェアを有する。エンドポイントセキュリティーやクラウドセキュリティー管理ソリューションなど情報セキュリティー分野も強みとしている。筆頭株主は大日本印刷 <7912> [東証P]で同社の過半の株式を保有している。システム構築にとどまらず、ビジネスリライアビリティー(事業の信頼性)を支えるITサービス会社を標榜する同社は量子分野の研究にも余念がない。10月下旬に幕張メッセで開催された「第3回量子コンピューティングEXPO」で同社は仏Atos社製の量子シミュレーターを紹介。同シミュレーターは量子ハードウェアの制約を受けずに量子アルゴリズムの開発が可能というもので、今後注目度が高まりそうだ。業績も絶好調。23年6月期は売上高が135億円(前期比18%増)と4期連続で過去最高を更新する見通し。営業利益は18億円(同19%増)予想で、02年6月期に記録したピーク利益に21年ぶりに肉薄する。

◎多摩川ホールディングス <6838> [東証S]

 多摩川HDはモバイル端末や無線機器計測器の製造販売を行い、高速通信規格5Gの普及期に収益を大きく飛躍させた経緯がある。また、再生可能エネルギー分野に積極展開するなど異なる事業エリアそれぞれで実力を発揮している。量子技術分野にも参入し、今月7日に東京大学で同社が製作した量子センサー向けアルカリ原子マイクロセルの実証に成功、その成果が国内学会(第39回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム)で発表されることを開示した。同社は「通信」「エネルギー」「宇宙」分野でのソリューション提供に傾注しており、量子センサー向けマイクロセルの実証もその一環だ。業績面は跛行色が強く、22年3月期に営業8割増益を達成したものの、23年3月期は半導体不足に伴う部材調達難が直撃し、前期に達成した利益の伸びを吐き出す形で大幅な減益を見込む。しかし、24年3月期は部材不足の解消が予想され、2ケタ増益で切り返す公算大。株価はここ急動意しているが押し目狙いで。20年1月に4480円の高値をつけるなど天井は高い。

◎昭和電工 <4004> [東証P]

 昭和電工は総合化学メーカーとして石化・アルミなど幅広く展開。電炉用黒鉛電極ではトップシェアを誇るほか、研磨材などの半導体材料 も手掛けている。量子コンピューティング技術を活用して半導体材料の最適配合探索の高速化に取り組み、従来手法では数十年以上かかる計算をわずか数十秒で解に導くという飛躍的な時間短縮を実現、話題を集めた経緯がある。富士通の疑似量子コンピューターであるデジタルアニーラを活用した半導体材料開発で大幅な効率化ができることを実証している。これにより、近い将来の新材料開発に大きく貢献する可能性が高まっている。足もとの業績面は苦戦している。22年12月期は前期の事業売却の影響に加え、原料コスト上昇や半導体需要の軟化が響き、営業利益段階で前期比36%減の560億円を予想。しかし、来期は半導体関連の底入れに加え、原料コストの製品価格転嫁が進捗し利益採算改善が見込まれることから急回復も視野に入る。年間65円配当を継続するなか、解散価値を3割も下回る0.7倍のPBRは割安感を際立たせている。

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