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【特集】売りの一巡でアメ株は年末ラリーに期待、では来年は?~中間決算明けの投資戦略★最終回

~株探プレミアム・リポート~
東海東京調査センター シニアエクイティマーケットアナリスト 仙石誠さんに聞く


シリーズ最終回はアメ株の動向について。目下の注視材料は12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、市場が期待する利下げスピードが減速されるのか。

0.75ポイントの3倍速利上げの継続など、期待に反した結果となれば、2018年末に起きた「クリスマスショック」の再現となる可能性もある。

年末までと、来年(23年)のアメ株市場について見方を聞いた。

(聞き手は真弓重孝/株探編集部、福島由恵/ライター)

仙石誠さん仙石誠さんのプロフィール:

証券会社でリテール向け営業に従事した後、市場分析アナリストのアシスタントや企画部門などを経て、現職に。現在は、マーケットアナリストとして株式市場分析を担当する。
テレビ東京の『Newsモーニングサテライト』『ゆうがたサテライト』や日経CNBC、ラジオNIKKEI等の番組にも出演している。

第1回「注目は『隠れ円安』に『嫌われ』~中間決算明けの投資戦略1」を読む
第2回「主役交代 ! もう無視できない個人好みの銘柄~中間決算明けの投資戦略2」を読む

需給のプラス材料で、年末に向け上昇期待あり

――ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数の主要3指数は、9~10月に年初来安値を更新しました(終値ベース)。これが反転サインとなるのか、それともさらなる底割れもあるでしょうか。

仙石誠さん(以下、仙石):  現時点では、この秋が大底となって年末に向けては上昇していくと見ています。

10月分のCPI(消費者物価指数)やPPI(卸売物価指数)が前年同月比で市場予想に届かなかったことなどを材料に、株式市場は12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では「利上げスピードが減速される」と期待を高めています。

しかし、米国の景気はまだ堅調さを保っていることもあり、複数のFRB(米連邦準備理事会)高官からは、前のめりになりがちな市場の見方を牽制する発言が出ています。

12月のFOMCの決定内容が、今年6月や9月に見られたように市場の期待とギャップが生じれば、失望売りを誘うこともあり得ます。

とはいえ、需給要因を踏まえれば、上昇しやすい環境にあります。

注:インタビューは、11月FOMCの議事録公表(現地時間11月23日)前に実施

■S&P500の日足チャート(21年9月~)
【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフは日経平均。色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同


過度な弱気姿勢は落ち着きつつある

――需給面からは上昇しやすいとのことですが、気になるのが4年前の再来があるか。2018年12月には、FOMCの決定内容に失望してNYダウは4日続落、▲8%超の1800ドルほど下げるという「クリスマスショック」が起こりました。

仙石: 仮に今年の12月に失望売りが起こるとしても、今回は4年前と同じような急落にはなりにくいと見ています。需給面から、売り手不在に近い状態になっているからです。

私はアメ株市場の過熱感を計測する際には、毎週、米国個人投資家協会が公表している「ブルベア比率」、加えて全米アクティブ投資家協会の「米株持ち高指数」を注視しています。前者は個人投資家、後者は機関投資家のセンチメント(投資家心理)がうかがえるからです。

いずれも今年10月時点で、2008年のリーマン・ショック時と同水準となっており、両者とも極端な弱気状態になっていました。たしかに米国景気は今後、減速ないし後退する懸念が高まっています。しかし、リーマンの時と同じレベルまで弱気にならなくても良いのではと、これらの指標の動きを観察していました。

ヘッジファンドの売りも一巡

――個人も機関投資家も、そこまでポジションを落とす必要はないレベルまで落とした状況なので、これ以上の売り、つまり株価の下落は見通しにくいということですね。

仙石: そうなります。加えて、ヘッジファンドの売りが一段落したことも、株価が底割れするとは考えにくい材料と見ています。ご存じのようにヘッジファンドは、ブル(強気)にしろ、ベア(弱気)にしろ、いかなる相場でも絶対収益の確保を必達目標にしています。

今年春から始まった金利上昇によって、彼らは資金をリスク資産の株式から安全資産のソブリン(国債)にシフトしてきたはずです。リスクフリーと目されている米国債で3%以上の利回りが得られるならば、リスクを取ってボラティリティー(株価の変動率)の高い株式で目一杯運用する必然性は薄れます。

18年12月にクリスマスショックが襲ったのは、FRBの利上げ決定に反応して、10年債利回りが急激に3%台へと跳ね上がったことが、相場下落の引き金となりました。

今年も、4月頃に10年債利回り(下のグラフの緑の線)が3%に迫った頃からS&P500(同紺の線)が下落に転じ、それから7月にかけて1000ポイントほどの下げとなりました(同赤の囲み)。

そして、7月頃に10年債利回りの天井感が見え始めると株価も回復に向かい始めましたが(同黄色の囲み)、8月に再び10年債利回りが3%超えとなると株価が再び軟調に転じました(同紫色の囲み)。

そして足元は10月に10年債利回りに天井感が表れ、株価は回復傾向となっています(同茶色の囲み)。

■米10年債利回りと株価の動き
【タイトル】
出所:QUICK・ファクトセットより、『株探』編集部作成

――足元では、12月のFOMCでの利上げ減速を織り込む形で10年債利回りが下落している局面での株価の反発となりますね。

仙石: こうした展開になっているのも、利上げ局面で絶対収益の確保を狙うヘッジファンドの存在があるでしょう。

10年債利回りで3%を境目に、株価が上昇・下落をしてきた中で、足元では利回りが3%を大きく超える段階で株価が反騰しています。これは、彼らの(株式の)売りが、かなり出尽くし状態になっていたためと思われます。

今年の年初から9月まで、ヘッジファンドは一貫して売り姿勢となっており、保有株式解約額は1200億ドルにまで上っています。この流出分はFRBがコロナ禍で大幅利下げに転じた20年3月以降の買い付け分だとみなしており、この分をある程度吐き出せば、株価下落は一段落するものと考えていました。

そうした観点で見ていくと、20年3月から米国が利上げに転じる直前の21年末までの資金買い付け額は1060億ドルに。この時期の流入分以上の金額は既に売り切った形となり、今後はそれほど大きな売りが出てこないことが想像できます。これを踏まえると、株式市場がこれから年初来安値を割り込むことは考えにくい。

――最近は金利が多少上昇しても、恐怖指数と呼ばれるVIX(ボラティリティ指数)も落ち着いています。これも弱気派が底をついた影響があるのでしょうか。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。



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