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【市況】S&P500 月例レポート ― 景気過熱と金利高止まりの長期化を警戒 (1) ―


S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2023年8月
個人的見解:6月と7月の上昇から揺り戻し、市場は高値水準を試す展開に

 米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ終了(および利下げ開始期待)と、インフレの収束(一時的という言葉が調整または再定義されました)を祝う6月と7月のパーティー(9.79%上昇)も、8月に終わってしまいました。市場は、個人消費と政府支出に後押しされた経済の好調を受けて金利が長期的に高止まりする可能性に注目し始め、今では経済がどの程度好調なのかという点に焦点が当てられています。経済の好調度合いに対する懸念から、市場は8月18日までに4.78%下落し、利益確定や資産配分の見直しといった動きも下落に拍車を掛けたとみられます。実際には、その後に発表された経済指標(住宅関連、JOLTS求人労働異動調査、雇用関連)は成長の鈍化を示しており、市場は18日以降に3.16%持ち直しましたが、最終的に1.77%下落して8月を終えました。

 8月は値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。6~7月には449銘柄が上昇し、54銘柄が下落しましたが、8月の値上がり銘柄数は153銘柄、値下がり銘柄数は350銘柄でした。どちらの期間を見ても、市場は下値支持線を探りながら水準を探っているようです。ボラティリティは高まり、日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は7月の0.68%から8月は1.01%に上昇し、3月の1.51%以来の高水準となりました。

 個別銘柄レベルでは、9月19日-20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にアナリストが2023年第4四半期および2024年通期の予想を見直すのに伴い、株価水準を試す展開が9月も続くとみられます。金融政策に関しては、先物市場は9月のFOMCで金利が据え置かれる確率を89%と織り込む一方、10月31日-11月1日のFOMCで0.25%の利上げが行われる確率は38%と織り込んでいます。利上げに関する明るい面として、市場は0.25%の利上げを受け入れる準備が完全に整っています。ただし、パウエルFRB議長の文言から、追加利上げは最後となることが示唆される場合に限ります。全体として、ボラティリティの上昇が予想されますが、その状況は業界や個別銘柄の見通しによって異なるほか、FRBの動きやコメントは相場全体の上下に影響するとみられます。

 大統領選挙までまだ16ヵ月もあるため、現時点では市場に大きな影響を及ぼしていませんが(コンプライアンス上、筆者の見解を述べることはできませんが、私の母が生きていたなら、そのリスクを取っていたでしょう)、議会と大統領を巡るさまざまな選挙結果を想定したポートフォリオの構築は進んでいるようです。

 また、1928年以降の統計で9月は最もパフォーマンスが悪い月であり、上昇の確率はわずか44%で、パフォーマンスを平均すると1.12%の下落となっています。ちなみに、2022年9月は9.35%下落、2021年9月は4.76%下落で、2020年9月は3.99%下落しました。

 S&P500指数は8月に1.77%下落して4507.66で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス1.59%)。7月は4588.96で終え、3.11%の上昇(同プラス3.21%)、6月は4450.38で終え、6.47%の上昇(同プラス6.61%)でした。過去3ヵ月では7.84%の上昇(同プラス8.28%)、年初来では17.40%の上昇(同プラス18.73%)、過去1年では13.97%の上昇(同プラス15.94%)でした。2022年は19.44%の下落(同マイナス18.11%)、2021年は26.89%の上昇(同プラス28.71%)、2020年は16.26%の上昇(同プラス18.40%)、2019年は28.88%の上昇(同プラス31.49%)、2018年は6.24%の下落(同マイナス4.38%)でした。2022年1月3日の高値からは6.02%の下落(同マイナス3.39%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは33.12%の上昇(同プラス41.00%)でした。

 8月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は7月の0.68%から再び1.01%に上昇(6月は0.88%、5月は0.96%、4月は0.92%、3月は1.51%)、年初来では1.09%となりました。2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした。8月の出来高は、6月に前月比4%増加、7月に同10%減少した後、1%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では12%の増加でした。2023年8月までの過去1年では前年比16%増加しました。2022年は同6%の増加でした。

 8月は1%以上変動した日数は23営業日中5日(上昇が2日、下落が3日)でした。7月は20営業日中に前日比で1%以上変動した日はありませんでした。6月は1%以上変動した日数は22営業日中4日(4日全て上昇)でした。年初来では、1%以上変動した日数は167営業日中46日(上昇が27日、下落が19日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。2022年は、1%以上変動した日数は122日(上昇が59日、下落が63日)、2%以上変動した日数は46日(上昇が23日、下落が23日)でした。2021年は、1%以上変動した日数は55日(上昇が34日、下落が21日)、2%以上変動した日数は7日(上昇が2日、下落が5日)でした。

 8月は23営業日中12日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動と3%以上の変動はありませんでした(7月は21営業日中2日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上と3%以上の変動はありませんでした)。年初来では1%以上の変動が80日、2%以上の変動が12日、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日、4%以上の変動が4日ありました。2021年は1%以上の変動が93日、3%以上の変動が3日ありました。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は8月に2.36%下落して3万4721.91ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス2.01%)。7月は3万5559.53ドルで終え、3.35%の上昇(同プラス3.44%)、6月は3万4407.60ドルで終え、4.56%の上昇(同プラス4.68%)でした。2022年1月4日の高値(3万6799.65ドル)からは5.65%下落しました。過去3ヵ月では5.51%の上昇(同プラス6.10%)、年初来では4.75%の上昇(同プラス6.37%)、過去1年では10.19%の上昇(同プラス12.58%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。

※「景気過熱と金利高止まりの長期化を警戒 (2)」へ続く

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