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【特集】世界に誇る日本文化、海外でも人気爆発の「アニメ」関連株は妙味満載 <株探トップ特集>

コロナ禍をきっかけにした配信の拡大で、アニメによる海外コンテンツ市場の開拓が進んでいる。これによりメリットを受ける企業も多く、アニメ関連銘柄は引き続き要注目だ。

―配信拡大で海外ファンも増加中、製作委員会で存在感増す企業に注目―

 今年8月、総務省は「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(2021年度)」を発表した。放送コンテンツの海外輸出額及び海外販売作品数に関する調査を実施したもので、放送コンテンツ海外輸出額は前年度比14.8%増の655億5900万円で、ジャンル別ではアニメーションが同14.3%増の567億2100万円とその大部分を占めた。

 今更ながら、世界に通用するコンテンツとしてのアニメの強さを見せつけられた格好だが、株式市場でもアニメ関連銘柄には根強い人気がある。今年12月には北米でもテレビシリーズが人気になった「劇場版SPY×FAMILY CODE:White」の公開も控えており、今後更に関連銘柄への人気が高まる可能性もありそうだ。

●海外アニメイベントは盛況

 海外におけるアニメファンの拡大は、アニメイベントの盛況ぶりを見ても分かるだろう。

 今年7月1日から4日にかけて、米ロサンゼルスで開催された「Anime Expo 2023」では、世界60カ国から過去最高となる約39万人が来場した。昨年11月にシンガポールで開催された東南アジア最大級のアニメイベントである「Anime Festival Asia 2022」では、過去最高の14万5000人以上の来場者を記録し、今年は更なる増加が見込まれている。

 また、今年4月から6月に開催されたサウジアラビアの「Jeddah Events Calendar 2023」では、日本の人気アニメコンテンツを一堂に集結させた体験型イベントエリア「アニメビレッジ」が開催され、イベントをプロデュースしたエイベックス <7860> [東証P]の業績にも貢献した。同社はサウジアラビアに新会社を設立し、今後もIPビジネスの拡大を図っていく方針だ。

●動画配信がアニメ人気上昇に貢献

 海外でアニメの人気が高まっている要因の一つとして挙げられるのが、サブスクリプションによる 動画配信の拡大だ。

 アニメビジネスには、一次利用としてのテレビ放送や動画配信、二次利用としてのアーカイブ動画配信や映画化、ゲーム化、グッズ化などがあるが、欧米では一次利用としてのテレビ放送は子ども向けアニメばかりで、日本で深夜帯に放送されるような幅広い年齢層を対象としたアニメの放送はなかった。それが近年の高速インターネットの普及とそれに伴う動画配信の拡大により、インターネットを通してアニメを見る人が増加している。

 例えば国内では、日本動画協会の「アニメ産業レポート2022」によると、21年のアニメ映像配信売り上げは前年比65.6%増の1543億円となり、これまで以上に拡大のペースを上げた。これにはコロナ禍の長期化に伴う巣ごもり需要によってサブスク型動画配信サービスの利用が増えたことが要因としてあるとみられている。

●存在感増すクランチロール

 コロナ禍が収束に向かうなか、配信市場の拡大も落ち着くとみられるが、一方で消費行動として定着したとの見方もある。また、北米では「ディズニー」「ピクサー」の大手アニメスタジオが配信ファーストの姿勢を見せていることから、動画配信の拡大は続きそうだ。

 更にソニーグループ <6758> [東証P]が展開する「Crunchyroll(クランチロール)」も配信市場の拡大に大きな役割を担っている。クランチロールは海外で日本のアニメをはじめとするコンテンツを配信するサービスで、有料会員数1200万人以上を有する、アニメ版の「ネットフリックス」とも呼ばれる巨大プラットフォーム。月額料金も割安であることから、今後もアニメによる海外コンテンツ市場の開拓に一役買いそうだ。

●製作委員会から関連銘柄に注目

 近年の日本のアニメ作品は、アニメ制作にかかる膨大なコストを複数の企業が共同出資で負担する「製作委員会」という方式で作られるのが主流となっている。製作委員会には、アニメ制作会社をはじめ、原作の権利を有する出版社、放送・上映・配信するテレビ局・映画会社・配信会社、広告代理店、ゲーム会社、玩具会社、その他の企業群でビジネスが成り立っている。アニメに関する収益は、基本的に製作委員会への出資比率によって按分されることになっている。

 そのため、この製作委員会に名を連ねるような企業が関連銘柄として挙げられそうだ。

 IGポート <3791> [東証S]は、グループのアニメ制作会社で「攻殻機動隊」「SPY×FAMILY」「サイコパス」「進撃の巨人」などの人気シリーズを多く手掛けているほか、子会社にコミック専門出版社を有している。23年5月期連結決算で営業利益が9億9100万円(前の期比72.9%増)と大幅増益となった一方、24年5月期は、大型出資作品の一時的落ち着きによる版権収入の減少や、出版事業における「魔法使いの嫁」の休載の影響などで同7億4800万円(前期比24.5%減)と大幅減益を予想するが、25年5月期は同20億600万円を計画している。

 東映アニメーション <4816> [東証S]は、老舗のアニメ制作会社として知られている。注目は海外事業で23年3月期連結売上高874億5700万円(前の期比53.4%増)のうち482億7900万円(同35.3%増)が海外売上高。全地域において増収となったが、特に北米では同41.8%増(170億2700万円)と大幅増となった。24年3月期第1四半期決算は、前年に映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」の収益寄与があった反動や映画「聖闘士星矢 The Beginning」の不振などで営業利益は20億9500万円(前年同期比49.0%減)と振るわず、24年3月期通期も同175億円(前期比39.0%減)を見込むが、25年3月期は回復が期待されている。

 KADOKAWA <9468> [東証P]は、角川スニーカー文庫、電撃文庫、MF文庫Jなどアニメと相性の良いライトノベルのレーベルを多く抱えており、原作を有する出版社として数多くの製作委員会に参加している。東映アニメ同様に注目は海外売上高で、23年3月期の海外売上高は524億2500万円で前の期比81.6%増と急増した。24年3月期第1四半期連結決算では、前年にゲーム事業で「ELDEN RING」が大きく貢献した反動もあり、営業利益32億6700万円(前年同期比66.0%減)と大幅減益となり、24年3月期通期も同178億円(前期比31.4%減)と大幅減益を見込むが、上期決算発表時に公表予定の新中期計画では、再成長への道筋を示すことが期待されている。

 アルファポリス <9467> [東証G]は、運営する投稿サイトのなかから人気のある小説やマンガなどを書籍化し出版しており、作品には映像化やアニメ化された作品も多い。刊行点数の増加が業績を牽引しており、24年3月期第1四半期単独決算で営業利益は5億2400万円(前年同期比21.4%増)と第1四半期として過去最高を更新。24年3月期通期は事業基盤強化を目的とした成長投資を行うため同23億円(前期比4.9%減)を見込む。特に専門部署におけるメディア化活動に注力しており、蓄積されたIPのメディア展開に注目したい。

 東宝 <9602> [東証P]は近年、アニメ製作への関与を強めており、「呪術廻戦」「SPY×FAMILY」などでは国内外の配信・商品化権収入に加え、各種配分金収入が業績に貢献している。7月13日には24年2月期の連結業績予想を営業利益で400億円から450億円(前期比0.3%増)へ引き上げたが、TOHO animation作品の各種事業展開の好調をその要因として挙げている。

 このほか、アニメ作品のトレーディングカードやデジタルコンテンツを手掛けるブシロード <7803> [東証G]、「機動戦士ガンダム」に関連する権利を一本化し、文字通り機動的な展開を行うバンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]、アニメ作品の原作や玩具などを手掛けるタカラトミー <7867> [東証P]、アニメ作品のグッズを手掛ける壽屋 <7809> [東証S]などにも注目したい。

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