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【特集】国際競技の地位獲得へ、「eスポーツ関連株」は秋相場に舞い上がる<株探トップ特集>

「eスポーツ」への注目度が年々高まっている。企業やスポーツ団体の取り組みを背景に市場規模は拡大を続けており、関連銘柄の活躍の舞台は一段と広がっている。

―大型スポーツ大会の実施競技に続々採用、市場規模は右肩上がりの基調続く―

 ゲームを競技として捉える「eスポーツ」が本格的な普及局面に入ろうとしている。国際オリンピック委員会(IOC)がeスポーツイベントを今年初開催し、アジア版オリンピックと呼ばれる「アジア競技大会」が今大会からeスポーツを正式競技に加えるなど、国際的なスポーツ組織がeスポーツ分野に本腰を入れ始めた。IOCは今月5日に「eスポーツ委員会」の新設を発表している。eスポーツが国際競技としての地位を獲得できれば、政府による支援の動きも強まるとみられ、これまで民間企業が牽引してきた業界に強力な追い風が吹くことになる。eスポーツ関連株は中長期でマークする必要がありそうだ。

●“アジア版五輪”でeスポーツ初採用、国体は19年から導入

 アジア競技大会が9月23日に中国・杭州で開幕する。同大会はアジア各国の国内五輪委員会で構成される「アジア・オリンピック評議会」が主催するスポーツ大会で、原則4年に1度開催される。コロナ禍で1年延期となった今回の2022杭州大会は日本を含む40以上の国・地域が参加し、野球やサッカー、陸上など全40競技が実施される。このなか注目されるのが、今回初めて正式競技に採用されたeスポーツだ。カプコン <9697> [東証P]の格闘ゲーム「ストリートファイター」など7種目の競技タイトルが用意され、日本勢はこのうち3種目に出場する。前回大会でデモンストレーション競技としてeスポーツが実施された際には、日本は1種目で金メダルを獲得している。

 eスポーツ大会開催の動きは国内外で広がりをみせている。“アジア版五輪”がeスポーツを初採用するなか、本家のIOCでは今年6月に「オリンピックeスポーツウィーク」をシンガポールで初開催。国内では国民体育大会の文化プログラムで2019年からeスポーツが導入されているほか、民間企業による大会もさまざま登場している。

 eスポーツは先行する海外に続いて国内でも認知度が高まりつつあり、関連市場は右肩上がりで拡大を続けている。業界団体の日本eスポーツ連合によると、国内の市場規模は25年に約180億円に達するとみられている。eスポーツ元年と言われた18年(約48億円)から3倍以上に膨らむ計算だ(出典:日本eスポーツ白書2022/角川アスキー総合研究所)。

●有力株の「カヤック・ウェルライ」親子、ゲームウィズやブロメディアも

 eスポーツ関連の有力株に位置づけられているのが、カヤック <3904> [東証G]とその子会社ウェルプレイド・ライゼスト <9565> [東証G]だ。カヤックはゲーム開発を軸にeスポーツ、ネット広告など手広く事業を展開。eスポーツ事業ではイベントの企画・制作をはじめ、大会運営プラットフォーム「Tonamel(トナメル)」やeスポーツ教室を手掛ける。同事業の成長は著しく、セグメント売上高は主力のゲーム開発事業に次ぐ規模を誇るまでに拡大している。

 そのカヤックのeスポーツ事業の中核を担うのがウェルライになる。「eスポーツの総合商社」を標榜し、イベントの企画・制作やプロゲーマーのマネジメント、eスポーツ施設の運営などを行う。昨年11月にeスポーツ専業として初の上場を果たし、大きな話題を呼んだ。業績は成長トレンドにあり、今期も増収増益を計画。9月13日に第3四半期決算の発表を予定している。

 ゲーム情報サイト運営のGameWith <6552> [東証S]も有力株の一角に位置づけられる。18年にeスポーツ事業へ参入し、プロ選手のマネジメントや動画配信を開始。21年にはプロチーム「DetonatioN FocusMe(デトネーション・フォーカスミー)」を買収している。eスポーツ事業を含む「eスポーツ・エンタメ」部門の売上高は、前期に前の期比4割強の伸びを示した。eスポーツコースを提供する通信制高校「ルネサンス高校グループ」運営のブロードメディア <4347> [東証S]も見逃せない。同コースの受講生は増加しており、ルネサンス高校グループ全体の入学生徒数は過去最高更新ペースにある。

●カバーが新プロジェクト始動、新会社設立など取り組み相次ぐ

 eスポーツ関連の主力どころとしては、傘下のNTTe-Sportsで事業を展開するNTT <9432> [東証P]、ゲームソフトや関連機器を手掛けるソニーグループ <6758> [東証P]、加えてeスポーツ大会で実施されるゲームを制作するコナミグループ <9766> [東証P]、カプコンなどのゲーム大手になる。eスポーツイベント「RAGE(レイジ)」を共同運営するサイバーエージェント <4751> [東証P]、エイベックス <7860> [東証P]、テレビ朝日ホールディングス <9409> [東証P]、高校生eスポーツ大会「STAGE:0(ステージゼロ)」を運営するテレビ東京ホールディングス <9413> [東証P]、電通グループ <4324> [東証P]といった大会運営に関わる銘柄も挙げられる。

 eスポーツ市場の拡大をビジネスチャンスと捉え、異業種から参入する企業も相次ぐ。eスポーツチーム「SCARZ(スカーズ)」の運営会社を昨年子会社化し話題となったJ.フロント リテイリング <3086> [東証P]をはじめ、eスポーツ事業を担う新会社「eスタジアム」を昨年設立した南海電気鉄道 <9044> [東証P]、20年に「SBI e-Sports」を設立しプロチームの運営を手掛けるSBIホールディングス <8473> [東証P]などがある。

 直近、eスポーツに関する発表を行った銘柄もみておこう。Vチューバー事務所大手のカバー <5253> [東証G]は1日、新たなゲーミングプロジェクト「HLZNTL(ホリゾンタル)」を始動すると発表した。ゲーム分野を中心として、自社主催の大会などさまざまな企画・コンテンツを創出、展開していくという。

 日本テレビホールディングス <9404> [東証P]は5日、子会社の日本テレビ放送網を通じてeスポーツイベント制作会社JCG(東京都江東区)を子会社化すると明らかにした。日テレHD傘下の動画配信サービス「Hulu」やグループ各社と連携し、eスポーツへの取り組みを加速させていく構えだ。

 関連銘柄としてはこのほか、ゲーミング機器(ゲーム専用機器)を取り扱うエレコム <6750> [東証P]やMCJ <6670> [東証S]、eスポーツ専門校を運営するヒューマンホールディングス <2415> [東証S]、eスポーツチーム「BEENOSTORM(ビーノストーム)」を手掛けるBEENOS <3328> [東証P]がある。今年5月にeスポーツ新会社「I-FREEK GAMES」を設立したアイフリークモバイル <3845> [東証S]、eスポーツ大会プラットフォーム「Adictor(アディクター)」を運営するログリー <6579> [東証G]などにも目を向けておきたい。

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