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【市況】【植木靖男の相場展望】 ─いよいよインフレ相場が本格到来か

株式評論家 植木靖男

「いよいよインフレ相場が本格到来か」

●年内の押し目は中長期的に“最後の買い場”となるか

 日経平均株価は9月に入って6日まで8連騰をみせ、3万3000円大台に乗せてなお上値をうかがうという堅調ぶりだ(9月6日執筆時点)。

 ただ、本年3月から6月までの上昇では日々、窓を空けて上昇することが多く、まさに王道を駆け上がるといった上昇相場だった。8月18日からの今回の上昇は一転しておそるおそる警戒しながら上昇するといった違いがみられる。

 これをどう解釈するか。今回の上昇は「まさか、これほど上昇するとは?」といった投資家心理が見え隠れする。たとえば、9月1日申し込み時点の信用買い残高(2市場)は2週ぶりの減少である。個人投資家が戻り待ちの姿勢をとっている証だ。

 さて、こうしたなかで今後の株価を強いとみるか、あるいは弱いとみるか。市場の見方は真っ二つに分かれている。強気派はここで崩れる不安は乏しく、かえってジリジリと上昇するとみる。折しも9月8日はメジャーSQ(先物・オプション特別清算指数算出日)にあたる。手仕舞われたポジションの資金が再投資される期待もある。

 一方、弱気派からみれば、これから6月19日の高値3万3772円をはじめとする「三山」の7月3日、8月1日の高値で買い付いた向きの戻り待ちの売りが控えている、と身構える。

 どちらの見方にも一理がある。では、今後の材料から見るとどうか。

 これまでは市場が期待した通り、インフレ鈍化から米長期金利が低下し、これにより利上げ観測が後退するなかを株価は上昇してきた。しかし、WTI原油がここへきてサウジアラビアの減産延長やロシアの輸出減少から上昇し底入れ感を強めている。当然、インフレ再燃が懸念されるところだ。

 となると、米国の金融引き締め長期化が意識され、米国株は下落する。だが、一方で日米金利差拡大により為替市場では円安が強まる。今度はこれまでと違って再び円安が日本株に好影響を及ぼす図式となる。

 米国株の下落はダウントレンドに日本株も巻き込むが、日本株は円安を支えに米国株ほど下げない、とみたい。

 いずれにしても、36年に一度のインフレ相場が始まっているとみれば、年内の日本株の押し目は中長期的に最後の買い場となろう。

●インフレ相場で格段の強さ発揮する「01銘柄」に注目

 ところで、物色動向はどうか。いま米国ではテック株が買われてナスダック指数が頑張ってはいるが、強い上昇力は感じられない。

 一方、今後、日本経済が賃金上昇、生産性向上を伴う形で内需主導型経済を目指すとすれば、東京市場で物色は徐々に内需株に傾倒していくことになる。すでにTOPIXがそうだし、業種でみてもサービス、不動産、銀行、陸海運、重工業などが浮上している。一言で言えば、インフレ恩恵銘柄だ。

 となると、中長期的には鉄鋼、海運は外せないし、最近ではコード番号“01”銘柄が注目されている。鉄鋼では日本製鉄 <5401> [東証P]、海運では日本郵船 <9101> [東証P]、さらに不動産では三井不動産 <8801> [東証P]などである。知名度が高く、流動性があり、かつ業績に安心感があるからだ。

 01銘柄は、インフレ相場では格段の強さをみせる。コマツ <6301> [東証P]、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、日産自動車 <7201> [東証P]、富士フイルムホールディングス <4901> [東証P]、東武鉄道 <9001> [東証P]、大成建設 <1801> [東証P]などがおもしろくなろう。

2023年9月6日 記

株探ニュース

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