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【特集】桂畑誠治氏【波に乗れない日本株、為替相場横目に次の展開は】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―9月相場は強弱拮抗、下期相場にポジティブ材料はあるか―

 週明け11日の東京株式市場は、朝方は買い先行で始まったが、その後は不安定な値動きで下値を探る展開に変わった。前週末の米国株市場ではNYダウが続伸するなど強気優勢の地合いながら上値の重さも意識された。米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが長期化することへの警戒感が買いを手控えさせているが、日本国内でも物価上昇を背景に日銀の金融政策変更の思惑がマーケットで高まってきた。ここから日経平均株価はどういったトレンドを描くのか。また、為替相場への影響はどうか。株式市場と為替相場の動向について、それぞれの業界で活躍する市場関係者2人に話を聞いた。

●「弱含みで3万1000円台前半も視界」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 東京市場は足もと冴えない動きで前週後半から3営業日続落となったが、その背景には国内の長期金利上昇に伴う買い手控えムードが重荷となっている。国内10年債利回りが0.70%まで上昇し、グロース株には向かい風が強まった。読売新聞が報じたところによると、植田和男日銀総裁へのインタビューで、年末までに物価上昇の十分な情報やデータなどの条件が揃う可能性がゼロではないと植田氏が言及、更に長期金利の変動幅についても触れ、特定の水準で抑えることはしないという主旨の発言をしたことが、債券市場や株式市場、為替市場などに影響を及ぼした。

 当面の日経平均は弱含みで推移することが予想されるが、向こう1ヵ月のレンジとしては上値が3万3500円程度、下値はやや深く3万1200円前後を想定している。銀行など金融セクターは金利上昇を背景とした運用環境の改善から株価に浮揚力が働く一方、半導体などを含めハイテクセクターには厳しい地合いとなりそうだ。

 また、ハイテク株は中国政府による政府機関職員に対するiPhoneの業務での使用禁止の動きが重荷となっており、今後iPhoneの利用をやめる動きが一般ユーザー層にも広がるようだとネガティブ材料として注意が必要となる。ただし、半導体関連は中期的に見れば生成AI関連の需要が下支えすることが想定され、ここからの押し目は少し長い目でみれば買い場探しの局面となることも念頭に置いておきたい。

 今週は米国では8月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えている。総合指数は前年比で伸び率が加速する一方、コア指数のほうは減速するとみられる。CPIがコンセンサス通りであれば、米国株にはプラスに働く可能性が高そうだ。もっとも、19~20日の日程で行われるFOMCで追加利上げが見送られても、同時に公表される新しい経済・金利見通しで追加利上げが維持される可能性があり、これが上値を重くする要因となり得るため、声明やパウエルFRB議長の記者会見の内容などをしっかりと吟味する必要がある。


(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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