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【特集】競争力決める重要課題、未来開く「DX人材育成」関連株をマークせよ <株探トップ特集>

深刻な人材不足が企業業績や経済成長に影響を及ぼすことが懸念されるなか、デジタル技術を活用するDXの推進が重要視されている。そこで課題となっているのが、スキルを持つDX人材の育成だ。

―先端技術普及の陰で深刻化する人材不足、国を挙げて取り組むべき課題に―
 
 企業を取り巻く環境が大きく変化するなか、国際的な競争力強化に必要とされているのがテクノロジーによって産業構造を変化させることを意味するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進だ。ただ、デジタル投資の内訳は依然として既存ビジネスの維持・運営が中心を占めており、DXを成長につなげている企業は全体からすると一部に過ぎず、社会全体にインパクトを与えるまでには至っていない。急速に普及が進む人工知能(AI)やロボティクスといった新しい技術に対応するためにも、ITを有効活用するためのスキルを持つDX人材の育成が国を挙げて取り組むべき課題となっている。

●米国に比べ見劣る日本

 みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]傘下のみずほリサーチ&テクノロジーズが4月に発表した調査レポートによると、国内の労働人口は先行き減少ペースが加速し、2030年時点の人手不足は約700万人規模に達すると推計されている。労働力が確保しにくくなるなかで、生産性を向上させるためにはデジタル技術を活用することが必要不可欠となるが、現状では多くの企業が「DX人材がいない、足りない」という課題に直面している。

 情報処理推進機構(IPA)が2月に公表した「DX白書2023」では、人材面でDX推進における課題が顕著にあらわれ、米国企業に比べて遅れている状況が明らかになっている。22年度時点でDXに取り組んでいる日本企業の割合は69.3%と21年度から13.5ポイント増加したが、全社戦略に基づいて取り組んでいる割合では米国の68.1%に対して日本は54.2%にとどまっている。DXを推進する人材の「量」の確保については「大幅に不足している」と回答した日本企業の割合は21年度比19.0ポイント増の49.6%に拡大した一方、米国は同17.6ポイント減の3.3%に縮小。DX人材の「質」の確保に関しても日米で同様の傾向がみられている。

 DXの推進には、システムの開発や運用を行うための知識、マネジメントなどの専門的知識を持つ 人材が必要となるが、そのようなスキルを備えたデジタル人材は人数が不足しており、外部からの調達も難しい。そのため社内での育成が重要となっており、スキルアップの機会を提供する企業のビジネスは更に拡大することが予想される。

●DX推進を担う銘柄群

 直近では伊藤忠テクノソリューションズ <4739> [東証P]のグループ会社で、ITシステムの保守・運用サービスと教育事業を手掛けるCTCテクノロジーが11日、企業のデジタル人材育成を目的としてDX基礎力診断サービスを開始したことを明らかにした。このサービスは、「IT入門」「AI・機械学習・ディープラーニング入門」「データサイエンス入門」「DX入門」「クラウド概要」の5つの分野に分かれており、デジタルリテラシー協議会が定義するビジネスパーソンに必要とされるデジタルリテラシー(知識、スキル)範囲「Di-Lite(ディーライト)」にも準拠しているという。

 アイデミー <5577> [東証G]は11日、マイクロソフト<MSFT>が提供する業務自動化を可能にする RPA(Robotic Process Automationの略で、マウス操作やキーボード入力などのパソコンで行っている事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術)ツール「Power Automate(パワー・オートメイト)」の基本操作から自動化フロー作成までを1日で学べる研修を10月19日に実施すると発表。また、1日にはニーズの高まるAI及びDX領域の学習環境の拡充を目的に、グロービス(東京都千代田区)との連携を開始したことも明らかにしている。

 インソース <6200> [東証P]は8日、グループ企業でDX教育事業を担うインソースデジタルアカデミーと、経済産業省が公表した「デジタルスキル標準」のうち、すべてのビジネスパーソンが身につけるべき基本的な知識・スキルと定義された「DXリテラシー標準」に準拠したサービス「DXリテラシーアセスメント」を新たに開発したと発表。チャットGPTなどの生成AIが急速に普及し、IT化の環境変化に対応するためには、自組織のDX実現に必要なDXリテラシーを各従業員がどれだけ備えているか、スキルの現状を可視化することが重要となるなか、同アセスメントでは「DXマインド・スタンス」「DXリテラシー」の2つの領域を評価する。

 ABEJA <5574> [東証G]は8月、PwCコンサルティング(東京都千代田区)と生成AIをはじめとした最新テクノロジーを活用した企業のDX推進支援に関する協業を開始したと発表。 生成AIなどの活用を前提とした戦略立案、ビジネスプロセスの構築、オペレーションの運用など、企業のDX推進における一連のプロセスをワンストップで提供するとしている。また、同月には大規模言語モデル(LLM)を実用的に活用し、社内におけるDXをリードする人材育成プログラム「ABEJA LLM Business Camp」の提供を開始することも発表した。

 6月に子会社がDX人材を育成する研修サービス「DXpass」を正式リリースしたと発表しているRPAホールディングス <6572> [東証P]にも注目したい。このサービスは、DX人材の発掘から育成までを導入しやすい価格で徹底サポートするもの。DX人材を内製することによって効率化を推進し、より付加価値の高い業務推進を可能とすることで、大きな経営効果の創出につなげる狙いがある。

●AIクロスなどにも注目

 このほかの関連銘柄としては、グループ会社が法人向け「初心者対象プロンプトエンジニアリング研修コース」を提供しているヒューマンホールディングス <2415> [東証S]、グループ会社が「DX人材育成サービス」を手掛けているTIS <3626> [東証P]、グループ会社が「生成AIと業務の変化/留意点(生成AI講義)」に関する研修を行っているチェンジホールディングス <3962> [東証P]、DX推進に必要な人材の資質・能力評価と現状にあわせた人材育成を支援するサービス「DxGROW」を展開するInstitution for a Global Society <4265> [東証G]、ドコモgacco(東京都港区)のeラーニング講座にノーコードAI分析サービス「Deep Predictor」が採用されているAI CROSS <4476> [東証G]、MAIA(東京都港区)との業務提携により中小・小規模企業×女性のデジタル人材育成プロジェクトを開始しているフォーバル <8275> [東証P]など。

 アイネス <9742> [東証P]は8月、大手企業を中心に650社以上のDXの推進と内製化を支援するSTANDARD(東京都中央区)と協業し、三井ダイレクト損害保険(東京都文京区)にDX人財育成支援サービスの提供を開始したことを明らかにしている。

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