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【市況】S&P500 月例レポート ― 景気過熱と金利高止まりの長期化を警戒 (2) ―


●主なポイント

 ○金利が長期的に高止まりする可能性や消費者の支出能力に対する懸念の高まりを受け、市場は8月に反落しました。S&P500指数構成企業の2023年第2四半期の利益は予想を大幅に上回り、当初はわずかな減益が予想され、非公式予想では2%の増益が見込まれていましたが、最終的に4.5%の増益となる見通しです。売上高は過去最高を記録した2022年第4四半期をわずかに上回る見通しです。FRBは2%のインフレ目標に固執し、データ次第との見方を強調しました。小売業界では「商品損失」、すなわち万引きや組織的犯罪による盗難問題が深刻化しています。しかし、高値水準にあった指数への実際の影響は広範囲でしたが、特に7月までの年初来上昇率を考えると限定的です。

 ○2023年第2四半期の企業利益は予想を大幅に上回りました。当初は前期比でわずかな減益が予想され、非公式予想では2%の増益が見込まれていましたが、最終的に4.5%の増益となる見通しで、業績リセッションの話題はもはや、ほとんど聞かれなくなりました。現時点で496銘柄(時価総額で98%に相当)が決算発表を終え、そのうち75.8%に当たる376銘柄で営業利益が予想を上回りました(過去平均は3分の2)。第2四半期の売上高も予想を上回り、前期比2.4%増、前年同期比7.1%増となる見通しです。第1四半期は過去最高を記録した2022年第4四半期から2.2%減少していましたが、第2四半期は合計3兆8600億ドルが見込まれており、わずかですが過去最高を更新する見通しです。売上高を発表する全493銘柄が発表を終え、このうち314銘柄(63.7%)で売上高が予想を上回りました。利益率も高水準を維持しており、2023年第1四半期の11.64%から上昇して11.88%となる見通しです(1993年以降の平均は8.34%)。

 ○8月の主なデータ

  ⇒市場の月間ベースでの連続上昇は5ヵ月で止まり(累計で15.59%上昇)、8月は23営業日のうち14日で下落しました。11セクターのうち10セクターが下落し、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は、7月の362銘柄に対し、8月は153銘柄でした。8月の出来高は前月比1%増、前年同月比では16%増加しました。

  ⇒8月は11セクターのうち10セクターが下落しました。6月と7月は11セクターすべてが上昇、5月は3セクターが上昇しました。8月の上昇率が最も高かったのは前月に続いてエネルギーで、7月の7.28%上昇に対し、8月は1.27%上昇して、月間で上昇した唯一のセクターとなりました。同セクターは年初来では0.77%上昇、2021年末比では60.26%上昇しています。パフォーマンスが最低となったのは公益事業で、8月は6.72%下落、年初来では11.37%下落、2021年末比では12.64%下落しています。

  ⇒月末時点で、69銘柄(7月は87銘柄)が52週高値から2%以内にあり、26銘柄(同32銘柄)が52週高値を付けています。

 ○S&P 500指数は8月に1.77%下落して4507.66で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス1.59%)。7月は4588.96で終え、3.11%の上昇 (同プラス3.21%)、6月は4450.38で終え、6.47%の上昇(同プラス6.61%)でした。過去3ヵ月間では7.84%の上昇(同プラス8.28%)、年初来では17.40%の上昇(同プラス18.73%)、過去1年間では13.97%の上昇(同プラス15.94%)でした。

  ⇒バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の米大統領選挙以降では33.79%の上昇(同プラス39.92%)でしたが、2021年1月20日の就任以降では17.03%の上昇(同プラス21.94%)でした。

  ⇒重要な相場の節目を起点とした騰落率:シリコンバレー銀行破綻前の2023年3月8日からは12.92%の上昇(同プラス13.83%で、金融セクターは1.58%下落)、2022年1月3日の終値での最高値からは6.02%の下落(同マイナス3.39%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは33.12%の上昇(同プラス41.00%)でした。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは7月末の3.96%から4.11%に上昇して月末を迎えました(2022年末は3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は 2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは7月末の4.02%から4.21%に上昇して取引を終えました(同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは7月末の1ポンド=1.2837ドルから1.2672ドルに下落し(同1.2099ドル、同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは7月末の1ユーロ=1.0995ドルから1.0842ドルに下落しました(同1.0703ドル、同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は7月末の1ドル=142.25円から145.51円に下落し(同132.21円、同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は7月末の1ドル=7.1433元から7.2583元に下落しました(同6.9683元、同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○8月末の原油価格は2.1%上昇し、7月末の1バレル=81.85ドルから同83.57ドルとなりました(2022年末は同79.35ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は8月に1.6%上昇しました(8月末は1ガロン=3.931ドル、7月末は同3.869ドル、2022年末は同3.203ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は72.6%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は68.7%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。

  ⇒2023年7月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、50%が原油(6月は47%、5月は49%、4月は51%、3月は50%、2月は53%、1月は55%)、14%が連邦税および州税(同14%、同14%、同14%、同15%、同15%、同15%)、11%が販売・マーケティング費(同14%、同15%、同12%、同11%、同13%、同10%)、そして25%が精製コストおよび利益(同24%、同21%、同23%、同24%、同20%、同20%)となっています。

 ○金価格は7月末の1トロイオンス=2003.80ドルから下落し1966.50ドルで8月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は7月末の13.63から13.57に下落して8月を終えました。月中の最高は18.88、最低は13.44でした(2022年末は21.67、2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12)。

  ⇒同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

※「景気過熱と金利高止まりの長期化を警戒 (3)」へ続く

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