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【特集】最高値更新が続く「国内金」、米利上げ停止期待が押し上げる <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
  国内金は4月、欧米の金融不安に加え、インフレ鈍化による米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止期待を受けて上値を試し、現物(店頭小売価格、税込)が9609円、先物(JPX金先限)が8697円と、ともに最高値を更新した。

 米銀2行の破綻に加え、スイスの金融大手クレディスイスの信用不安を受けて金融不安が広がった。ただ、UBSがクレディスイスを買収し、ニューヨークのシグネチャー銀行や米シリコンバレー銀行(SVB)の買収も発表されると、金融不安が一服した。また、米大手銀行のJPモルガン・チェース、シティグループ、ウェルズ・ファーゴの第1四半期決算では、事前予想を上回って利息収入が増加した。前日に発表されたバンク・オブ・アメリカ(BofA)の決算が好調となったが、ゴールドマン・サックスは19%減益となった。今夜はモルガン・スタンレーの決算が発表される。

 一方、米経済指標では、3月の雇用統計で非農業部門雇用者数が堅調な増加ペースを維持したが、消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)でインフレの伸びが予想以上に鈍化した。これ受けて米FRBの利上げ停止期待が高まった。ただ、CPIは前年比5.0%上昇、PPIは同2.7%上昇となり、米FRBが目標とする2%を大幅に上回っている。米金融当局者のタカ派発言が目立ち、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%ポイントの利上げが決定されるとの見方が強い。CMEのフェドウォッチでは、6月以降の利上げは停止され、年後半にかけて利下げに転じることが織り込まれた。ただ、石油輸出国機構(OPEC)プラスが5月からの減産を発表し、原油が一段高となっており、インフレが高止まりするようなら高金利が年内、維持される可能性もある。

 日銀の金融緩和維持の見方で円安に振れたことも国内金の支援要因である。日銀の植田和男新総裁は、就任会見でイールドカーブコントロール(YCC)政策とマイナス金利政策について、いずれも継続が適当との見解を示した。ただ、国際通貨基金(IMF)は賃金上昇を指摘し、「年内に長期金利目標を微調整する余地があるかもしれない」と述べている。5月の米FOMCをきっかけに円を買い戻す動きが出るかどうかも焦点である。

●現物相場も史上最高値を意識

 金の現物相場は昨年3月以来の高値2047ドルをつけており、同月高値2067ドルを突破すれば史上最高値2072ドルを試すとみられている。3月の中国の金準備が18トン増加し、2068トンとなったことも支援要因である。今年の各国の中央銀行の金購入は125トンとなり、金価格を押し上げる要因になっている。

 ただ、上海金のプレミアムは3月8日の41ドル(現物相場1812ドル)から4月6日には4ドル(同2013ドル)に急落し、実需筋の高値での買い意欲は後退しており、高値での買いが続くかどうかを確認したい。

 一方、台湾の蔡英文総統の訪米に対する報復で、中国軍は台湾周辺で軍事演習を実施した。主要7ヵ国(G7)外相は、台湾の現状を変更しようとする威圧に対抗する方針を示しており、今後の中国と西側諸国の対立の行方も注視しなければならない。

●金ETFの逃避買いは一服

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、4月12日に934.08トン(2月末915.30トン)まで増加したのち、利食い売りなどが出て18日は924.26トンに減少した。2000ドル台を維持できなければ、手じまい売り主導で調整局面を迎える可能性が出てくる。また、金利上昇を受けて米国の景気減速懸念が高まるようなら換金売りも警戒される。米株式市場で楽観的な見方が出ているが、米FRBが高金利維持を示すようなら株安に振れる可能性もある。5月3日の米FOMCが当面の焦点である。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは4月4日時点で19万5216枚まで拡大し、昨年5月3日以来の高水準となった。11日時点は堅調な米雇用統計を受けて利食い売りが出たことから19万2745枚に縮小した。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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