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【特集】金は急反発、米利上げペースの減速観測が支援要因に<コモディティ特集>

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

 金の現物相場は、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利上げが決定されたことに加え、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「利上げ停止を議論するのは時期尚早」と述べたことが圧迫要因になった。

 しかし、その後、米国中間選挙で共和党が勝利すれば株高につながるとの期待からリスク選好に傾いたことや、米国10月消費者物価指数(CPI)を受けてFRBによる利上げペースが減速するとの見方が強まったことを受けて、金相場は急伸し、8月以来となる高値1774ドルを付けた。

 10月の米CPIは前年比7.7%上昇と前月の8.2%上昇から伸びが減速し、事前予想の8.0%上昇も下回った。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループのFedウォッチによると、12月13~14日のFOMCでは50ベーシスポイント(bp)利上げの確率が80.6%(前月29.4%)に上昇した。

また、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は来年3月の4.75~5.00%と、これまでの5.00~5.25%から低下した。ブレイナード米FRB副議長は「利上げペース減速が近く適切になる」と述べている。

 ドル指数は9月に付けた2002年5月以来の高値114.77から106台に急落した。当面はドルの手仕舞い売りが出やすく、金の支援要因になるとみられる。

 一方、ウォラー米FRB理事は、インフレ抑制に向けたFRBの取り組みを強調している。CMEのFedウォッチでは、来年9月まで高金利を維持することを織り込んでおり、ドル高が再開すると、金は戻りを売られる可能性が出てくる。

●JPX金は円急伸が圧迫要因

 JPX金先限は5月以降、7405~8160円のレンジ相場が続いている。現物相場の急伸を受けて8000円台を回復する場面も見られたが、FRBの利上げペース減速の見方を受けて円が買い戻されると、7842円まで急落した。円相場は10月に32年ぶりの円安水準となる151円台後半を付けたのち、政府・日銀の円買い介入を受けて急伸すると、予想を下回る米CPIも支援要因となって138円台半ばまで円高に振れた。

日銀の金融緩和継続は円安要因だが、シカゴ円で大口投機家の売り玉が積み上がっており、適度に解消されるまでは円高がJPX金の圧迫要因になるとみられる。

●米利上げ減速観測でSPDRゴールドに安値拾いの買い

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、11月7日に2019年9月以来となる905.49トン(9月末939.70トン)まで減少したのち、ドル安をきっかけに安値拾いの買いが入り、911.57トンまで増加した。ただ、戻り場面で一部減少しており、当面は米利上げペースの減速観測で投資資金が戻るかどうかを確認したい。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは11月8日時点で8万2338枚(前週6万4623枚)となった。11月のFOMCを控えて戻りを売られたが、買い戻す動きが出た。ただ、今回は10月の米CPI発表前の数字であり、今後発表される報告で取組内容を確認したい。

 ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の「ゴールド・ディマンド・トレンズ2022Q3」によると、世界的な利上げを受けて金ETFから投資資金が流出し、金価格が下落したことが指摘された。ただ、価格下落を受けて第3四半期の宝飾需要は前年同期比10%増の523トンとなった。また、中央銀行の購入が過去最高の399トンとなった。2022年1~9月の金需要は、前年比18%増の3387トンとパンデミック前の水準を回復しており、需要が堅調に推移するようならば下支えになるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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