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【特集】石油高騰でも米国の需要は減退せず? 反動高を示唆する週次と月次統計の隔たり <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●EIA月報は石油需要の堅調を示す

 米エネルギー情報局(EIA)の発表によると、8月の米石油製品需要は日量2060万1000バレルとなり、4ヵ月連続で節目の同2000万バレルを上回った。今年は今のところ1月と4月だけが日量2000万バレルの節目を下回ったが、その他の月の需要は概ね堅調だったといえる。

 6~7月にかけてのガソリン小売価格の歴史的な高騰を背景に、EIA週報では需要が減退したように見えたが、月次の報告によると今年の需要のピークは6月であり、石油製品価格が高騰するに従って需要が拡大した格好となっている。ちなみに、今年6月の石油製品需要は日量2077万2000バレルと、コロナショック前の2019年6月の同2065万4000バレルを上回っている。今年7月は日量2034万5000バレルまで減少したものの、月次の数字を見る限り、価格高騰による需要の減退は限定的である。

 夏場にかけて米ガソリン小売価格が高騰していた時期において、必要最小限の給油しかしない人々が増えたことから、ガス欠で停車する車が相次いでいると伝えられた。本当かどうか確認するすべはないが、自家用車の代わりに馬を移動手段として利用する人が出てきたという報道もあった。生活スタイルの変化はたしかにあったのかもしれない。ただ、EIAの月報が示すのは、価格高騰しても旺盛に石油製品を購入する家計や企業の姿である。米国の石油需要は依然として世界全体の5分の1を占めている。エネルギー高で生活が苦しくなった人々が存在するにしても、月報で化石燃料離れは認識できなかった。

●週報はいわば速報値、調整安の反動で戻り相場が続く

 上述したようにEIAの週報では石油製品需要の低迷が明らかである。週報に基づくと、今年の需要のピークは1~2月となっており、その後の需要は伸び悩んでいる。夏場のドライブシーズンにおける需要拡大は、週報では存在しない。石油価格の高騰で需要は減退している。ガソリン小売価格が最も高騰した6月中、EIA週報で石油製品需要の4週間移動平均は日量1977万1000バレルから同1995万7000バレルで推移し、節目の同2000万バレルを上回っていない。

 EIAの週報と月報で石油製品需要の推移が食い違っているが、週次の数値に実感がともなっているとしても、週報はいわば速報値である。公表されるまで約2ヵ月のタイムラグがある月次の結果がおそらく正確だ。

 価格高騰による需要の減退を週報が示していたため、6月以降のブレント原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は調整安となったが、実際の需要が堅調だったのならば、下げは調整されるのではないか。6月から9月にかけてのWTI先物の調整幅は40ドル超であり、足元では過剰な下げの反動がすでに表れている可能性が高い。中国のゼロコロナ政策の脱却期待と相まって、原油相場の戻りが続くだろう。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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