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【特集】「2025年問題」で注目度高まる、「在宅医療」は中長期有望テーマに <株探トップ特集>

年明けを迎えたことで、「2025年問題」への関心が高まりつつある。高齢者の増加により在宅医療の重要性が増しており、関連銘柄のビジネスチャンス拡大が続きそうだ。

―通院ができない高齢者増加でニーズ高まる、地方創生でオンライン診療にも注目―

 年明けを迎えたことで、「2025年問題」への関心が高まりつつある。「2025年問題」とは、団塊世代が後期高齢者となり、医療・介護需要が一段と増加することをいう。一方で少子化の影響から労働人口が減少し、医療現場の人手不足が予想されており、これらの要因が重なることで、医療費の増加や医療の質の低下が懸念されている。

 後期高齢者の増加は、医療や介護を必要とする人の増加につながるが、一方で病気による障害や体力の低下、認知症などにより通院できない人の増加も予想される。今後在宅医療を受ける人は増加するとみられ、 在宅医療は息の長いテーマとして注目されそうだ。

●国民の約3分の1が65歳以上の高齢者

 内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、25年の高齢者人口は、65~74歳の前期高齢者が1498万人、75歳以上の後期高齢者が2154万人になるとされ、実に国民の約3人に1人に当たる29.6%が65歳以上になると予測されている。この65歳以上の人口の割合(高齢化率)はその後も年々上昇を続け、30年に30.8%、40年に34.8%になると予測。65歳以上の人口がピークを迎える45年には36.3%になるとみられている。

 高齢者の増加に伴い、同じく増加が予想されるのが医療や介護を必要とする人の数だ。介護を要する人の割合である要介護認定率は年齢が上がるにつれ上昇し、特に85歳以上で上昇する。前述の「高齢社会白書」によると25年以降、後期高齢者の増加は緩やかとなるが、85歳以上の人口は引き続き増加が見込まれており、医療と介護の複合ニーズを持つ者が一層増えるとみられている。

●85歳以上の訪問診療需要は40年に62%増へ

 通常の医療では病気になれば医療機関を受診し、検査や治療を受け、必要ならば通院や入院で診療を受けるが、高齢者ではそれがままならないケースが増える。身体機能の低下や重度の障害、認知症などで通院が困難な場合や、入院による体力の低下などで通院がかなわないといったことが考えられ、こうした人たちのためにも在宅医療が求められている。

 在宅医療とは、医師や看護師などが患者の自宅を訪問して診療を行うこと。厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」の資料によると、1日当たりの訪問診療患者数は20年の8万200人から40年には10万9400人に拡大すると推計され、特に75歳以上の訪問診療の需要は43%増、うち85歳以上の訪問診療の需要は62%増と見込まれている。需要の急増を控え、在宅医療の体制整備は喫緊の課題といえるだろう。

●オンライン診療の円滑化は地方創生の一環

 一方で生産年齢人口の減少に伴い、医療従事者の確保がますます困難となるなか、在宅医療の一つとしてオンライン診療 の整備も進められている。内閣府の規制改革推進会議が昨年12月にまとめた規制改革推進に関する中間答申でも、オンライン診療の円滑化を「 地方創生」の一つに挙げており、医事法制におけるオンライン診療の位置づけと運用基準の明確化などの検討を年度内に始めるとしている。

 いうまでもなく「地方創生」は石破茂政権の最重要課題であり、オンライン診療はその一環として体制整備が進められることになる。在宅医療やオンライン診療に関連する企業のビジネスチャンスは今後も拡大が期待できそうだ。

●在宅医療の関連銘柄

 JSH <150A> [東証G]は、特に入院医療費の割合の高い精神科に着目し、精神科の医師や医療機関向けに訪問診療の導入支援を行うとともに、東京、埼玉、大阪、宮崎、大分、佐賀、北海道を中心に訪問診療実施医療機関と連携して、看護師、作業療法士による精神科訪問看護を提供している。25年3月期は単独営業利益2億5800万円(前期比24.2%増)を予想。上期営業利益は8000万円だったことから進捗率の低さが懸念されたが、障害者雇用支援事業が下期偏重になるため通期予想は据え置いているという。

 ファインデックス <3649> [東証P]は医療システムを中心に医療機器、行政組織のDXを推進するソリューションなどを開発・提供している。17年からは日本訪問看護財団及び愛媛県訪問看護協議会と開発した「在宅アセスメントシステム」をクラウドサービスで提供開始。ITを利用した定期的なアセスメントや客観的な評価を根拠として訪問看護計画の立案、実施(介入)と評価により、業務の効率化と質の向上を支援している。24年12月期連結業績予想では営業利益15億7400万円(前の期比5.2%増)を見込む。

 eWeLL <5038> [東証G]は、訪問看護ステーション向けクラウド型電子カルテ「iBow」を中心に訪問看護に特化したクラウドサービスを展開するほか、BPOサービスや医療データビジネスなどにより在宅医療のDXを推進している。昨年4月に生成AIを活用して訪問看護計画書を自動作成する「AI訪問看護計画」を、また10月に同じく生成AIの活用により訪問看護報告書を自動作成する「AI訪問看護報告」をリリースしたことで「iBow」の認知度が向上し、24年12月期第3四半期累計単独営業利益は8億2300万円(前年同期比16.2%増)と2ケタ増益で着地。通期予想は同11億1100万円(前の期比22.3%増)としている。

 日本ホスピスホールディングス <7061> [東証G]は、「在宅ホスピスの研究と普及」をミッションに掲げており、訪問看護・在宅介護・ホスピス住宅などの事業を展開している。24年12月期第3四半期累計連結決算は、管理体制の変更に伴う人員増などが響き営業利益9億4400万円(前年同期比11.8%減)となったが、通期では同16億5000万円(前の期比28.5%増)を見込む。

 シーユーシー <9158> [東証G]は、全国で指定訪問看護ステーションを展開し、がん末期や難病の人のケアに特化した在宅ホスピスや訪問看護サービスを手掛けている。うち居宅訪問看護事業は利用者の増加により売上高を伸ばしている。25年3月期上期連結決算は営業利益が30億4700万円(前年同期比71.3%増)と大幅増益となった。通期でも同40億円(前期比7.0%増)と増益を見込む。

 このほか、オンライン診療・服薬指導プラットフォーム「SOKUYAKU」を展開するジェイフロンティア <2934> [東証G]、オンライン診療プラットフォーム「オンラインドクターバンク」を展開するメディカル・データ・ビジョン <3902> [東証P]、オンライン診療システム「CLINICS オンライン診療」を展開するメドレー <4480> [東証P]、オンライン診療サービス「ポケットドクター」を展開するオプティム <3694> [東証P]とMRT <6034> [東証G]などにも注目したい。

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