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【特集】中途半端な景気配慮は原油押し下げ要因に、中間選挙控えた短絡的な発想は市場を混乱に導く <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 月末から来月に向けて重要なイベントが控えている。今週は欧州中央銀行(ECB)理事会や7-9月期の主要国国内総生産(GDP)、来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)、再来週は米中間選挙と続く。米中間選挙の翌週にはG20首脳会議も予定されている。G20では各国首脳とロシアのプーチン大統領が会談するのか不明だが、少なくとも顔を合わせる見通しであり、ロシアとウクライナの戦闘が続くなかで見どころの多い会合となりそうだ。ただ、 原油相場の値動きを見通すために、G20にそこまで関心を寄せる必要はないか。注目すべきはFOMCと米中間選挙である。

●FRBは利上げペース減速を意識?

 来週のFOMCでは0.75%の利上げが確実視されているものの、米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると米連邦準備制度理事会(FRB)は米利上げペースの減速を意識しているようだ。過度な金融引き締めによる景気悪化が懸念されつつある。先週末、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁は引き締め過ぎによる景気低迷を回避するため、利上げペースを緩める時期に差し掛かっているとの認識を示した。これまでの積極的な米金融引き締めが転換点を迎え、景気を二の次としてきた金融政策の見通しが変わるなら、原油相場にとっては支援要因となるかもしれない。

 ただ、利上げペースの減速によってインフレ率の抑制が遅れ、物価高騰が長引くならば、金融引き締め以上に景気を悪化させる可能性がある。たちの悪いインフレが根付くよりも、積極的な利上げによって景気を圧迫し、インフレを抑制したほうが長期的な景気にとってはプラスであることから主要国の中銀は大幅な利上げを繰り返しているわけで、景気に対する中途半端な配慮は長期的な景気見通しを悪化させる。

●景気を余計に傷つける懸念も

 利上げの手綱を緩めることができるほど、インフレ見通しはFRBが望む方向に推移しつつあるのだろうか。利上げペースを多少減速させることで、目前に迫っている景気後退を回避できるのだろうか。景気を悪化させ、需要を減退させるために利上げを続けてきたFRBが金融政策を年末に向けて調整しなければならない理由は不明である。あるとすれば米中間選挙を控えた忖度である。バイデン米政権の意に反して、石油輸出国機構(OPEC)プラスは減産目標の大幅な引き下げで合意した。ガソリン価格のさらなる低下が期待できないならば、支持率回復のために株価を少しでも押し上げようとしているのではないか。

 FRBが米中間選挙を控えて利上げペースの減速を示唆するならば、株価を押し上げるなど原油を含めたリスク資産市場を一時的にでも鼓舞することになり、資産効果からインフレを余計に長引かせるおそれがある。インフレ率が長期間に渡って高水準で推移するならば、それだけ景気は傷つき、リセッションが長引くことを懸念しなければならない。

 米国にとって、トラス英政権の崩壊は他人事なのだろうか。短絡的な景気対策はインフレ懸念をさらに高める。英国債のようなクラッシュを危惧しないのだろうか。米金融当局の意味不明な行動はマーケットを混乱させ、原油相場を圧迫するだろう。米国債市場の急落など誰も想像もしたくない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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