市場ニュース

戻る
 

【特集】OPECプラスは大幅減産で合意、史上初の実験を前に増産余力を確保か <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●史上初の壮大な実験が始まる

 先週、石油輸出国機構(OPEC)プラスは11月の生産目標を日量200万バレル引き下げることで合意した。サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相はブルームバーグとのTVインタビューで、ロシア産原油の輸出価格制限計画が大幅減産合意の背景の一部であると語った。ウクライナと戦闘を続けるロシアの戦費を削ぐため、米国や欧州連合(EU)はロシアに石油輸出を継続させつつ、輸出価格を制限する措置を準備しているが、どのような結果となるのか不透明である。ロシアに供給を維持させつつ価格だけを抑制するという、都合の良い制裁が可能なのだろうか。史上初の壮大な実験が始まろうとしている。西側を中心とした消費国カルテルによる産油大国に対する挑戦である。

 西側の価格制限計画に対してロシアは強く反発しており、関与する国への供給停止を発表しているものの、この前例のない計画が奏功し、ロシア産の原油価格の強制的な値下げに成功した場合、その他の産油国の原油価格がどのような値動きとなるのか見通すことは難しい。ブレント原油ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)の価格が自由な取引によって形成されるとしても、ロシア産の原油価格に引っ張られることはないのだろうか。成功すれば、敵対する国の経済に打撃を与え、有無を言わさず手懐ける新たな武器を西側は得ることになる。ロシアは経済的なモルモットだ。

●価格制限は成功するか、身構える産油国

 OPECプラスの大幅な減産合意後、アブドルアジズ・エネルギー相が次の一手として増産を示唆したことからすれば、この措置が発動する12月5日を控えて主要産油国が身構えているのは確かである。先週の減産合意からすれば、価格制限による原油安を警戒しているように見える一方、サウジアラビアなどが減産合意によって増産余力を確保できるため、原油高にも備えているのかもしれない。史上初の試みであり、市場の反応が読めないイベントであることは間違いない。

 主要産油国は新たな対ロシア制裁が実行される12月5日(月)以降の石油価格を安定させようとしていると思われるが、次回のOPECプラスの閣僚会合は12月4日(日)である。価格制限措置が始まった後に会合を実施しないのは何故だろうか。普段は会合を行わない日曜日に閣僚会合が設定されていることから、産油国が予期できない変動に備えようとしているのは間違いなさそうだが、意図がはっきりとしない。この計画に参加する国がはっきりすれば、増産あるいは減産など対応が可能ということだろうか。

 ロシア産石油の価格制限の開始は、米中間選挙を経た後の年内最大のイベントである。サウジを中心とした産油国が身構えているように、混乱が待ち受けている可能性が高い。年末は荒れ相場か。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均