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【特集】金相場の軟調は続くか? 米大幅利上げ観測に加え、英財政問題が不透明感強める <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利上げが決定されたことや英国の財政不安を受けて一段安となり、2020年4月以来の安値1615ドルをつけた。ただ、英中銀が国債買い入れ措置を発表すると、ポンド主導でドル高が一服し、金に買い戻しが入った。

 その後は英政府の所得税率引き下げ計画の撤回や米ISM製造業総合指数(NMI)の低下も支援要因となって1729ドルまで戻したが、米金融当局者のタカ派発言を受けて戻りを売られた。予想以上の米インフレ指標や米ミシガン大消費者信頼感指数でインフレ期待が上昇したことも圧迫要因となり、1640ドル台まで下落した。

 9月の米消費者物価指数(CPI)は前年比8.2%上昇と前月の8.3%上昇から伸びが鈍化したが、事前予想の8.1%上昇を上回った。また、10月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値で1年先のインフレ期待は5.1%と9月の4.7%から上昇、5年先のインフレ期待は2.9%と9月の2.7%から上昇した。米金融当局者のタカ派発言も目立ち、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利は4.5%まで引き上げられるとみられている。CMEのフェドウォッチによると、11月の米FOMCでは75ベーシスポイント(bp)利上げの確率が98.4%となっており、ドル高が続くと、金は軟調に推移するとみられる。

●英国の金融政策を注視

 英国の財政不安によるポンドの乱高下は金にとっても波乱要因となる。トラス英政権が大規模な経済対策を策定したが、財政不安から英ポンドや英国債が急落した。英中銀は国債買い入れ措置を発表、更にクワーテング英財務相が所得税率引き下げ計画を撤回した。しかし、大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)やフィッチ・レーティングスが英国の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更し、先行き不安が残った。

 トラス英首相はクワーテング財務相の解任と法人税減税の撤回を発表した。財務相の後任となったハント元外相は、トラス政権の大型減税策をほぼ撤回した。新財務相は31日に中期財政計画を発表する予定であり、市場の信頼を得られるかどうかが当面の焦点である。

 一方、英中銀は国債売却を延期する可能性が高いと伝えられており、金融政策の行方も確認したい。英経済は高インフレを受けて景気後退入りするとみられており、不安定な状況に変わりはない。

●JPX金は円安で高値圏を維持

 JPX金先限は5月以降、7405~8160円のレンジ相場が続いている。現物相場の戻りを売られたが、円相場が32年ぶりとなる1ドル=149円台の円安に振れたことが下支えになった。9月に政府・日銀の為替介入が実施されたが、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しと日銀の金融緩和維持を受けて円安が進行している。鈴木財務相が過度な為替変動は容認できないとの発言を繰り返しているが、米FRBの利上げが一巡するまで円安が続くとみられ150円の節目も通過点になりそうだ。

●SPDRゴールド残高の減少が続く

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、9月後半からの反発場面で安値拾いの買いが入ったが、FRBの大幅利上げ見通しを受けて引き続き減少し、17日に939.10トン(8月末973.37トン)となった。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは10月11日時点で9万4420枚(前週8万8385枚)となり、9月27日の5万2081枚を当面の底として買い越し幅が拡大した。ただ、11月のFOMCで大幅利上げが見込まれており、売り圧力が強まるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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