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【特集】世界株安の背景を探る、債務上限問題やインフレ懸念が日本株急落を誘発 <株探トップ特集>

10月相場は波乱の幕開けとなった。米国と中国を巡り、警戒要因は少なくない。市場関係者からは米債務上限問題に絡む10月18日頃が相場の転機になるとの見方も出ている。

―今月18日以降のXデーを巡る動向が転機か、中国恒大問題への懸念も続く―

 日経平均株価の下落が止まらない。この日で7日続落となり9月高値からの下げ幅は3000円近くに達した。この急落の大きな背景となったのが、米国や中国を中心とする海外要因だ。1929年の大暴落や87年のブラックマンデーを挙げるまでもなく、「10月は波乱の月」だ。足もとの世界株安の主因となった米国を中心とする急落の要因は何か。また、何が相場反騰のキッカケとなるのか。

●海外勢の売りで日経平均株価は2万8000円割れ

 5日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比622円安の2万7822円と7日連続安に売られた。一時、下げ幅は900円を超す急落となり、約1ヵ月ぶりに2万8000円を割り込んだ。9月14日の年初来高値からの下落幅は2800円強、約9%の下落となった。足もとの日経平均急落は、海外投資家の先物を通じた売りが主因とみられている。海外投資家は8月下旬から9月中旬まで、現物と先物を通じて日本株を2兆円強買い越したが、この直近の下げを通じて「1兆円強を売ったのではないか」(市場関係者)との見方も出ている。

●サプライチェーンの混乱も物価上昇をもたらす

 今回の日本株急落を誘発したのは、米国と中国を中心とする複合要因が指摘されている。具体的には、米国債のデフォルト(債務不履行)を招きかねない米国の「債務上限問題」と急浮上する「米インフレ懸念」、それに中国不動産大手である「恒大集団の債務危機」が挙げられている。

 債務上限問題は、9月28日に米上院でイエレン財務長官が「議会が連邦政府の債務上限を凍結するか、引き上げなければ、連邦政府の資金が10月18日以降にも枯渇し米国がデフォルトに陥る恐れがある」と指摘したことで一気に緊張感が高まった。野党・共和党の反対や民主党の内紛もあり、同問題の先行きは見通しにくい状況となっている。

 また、米国でのインフレ懸念も急速に高まっている。8月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.3%上昇と米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を上回ったほか、8月の個人消費支出(PCE)デフレーターは前年同月比4.3%上昇と91年以来、30年ぶりの水準に上昇した。加えて人手不足や、輸送コストの高騰などサプライチェーン(供給網)の混乱が物価上昇要因となっている。

 更に、約33兆円とも言われる巨額負債を抱え資金繰り不安に揺れる中国恒大は、「重大な取引に関する内部情報」の公表待ちで香港取引所が4日に売買を停止した。この中国恒大の社債がデフォルトに陥り、世界の金融市場が混乱に陥ることが警戒されている。

●FRBのテーパリング開始に向けた動きが波乱の主要因

 これらの要因が絡み合い株式市場の波乱を呼んだ格好だ。そんななか、いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は「最も大きな要因は、FRBがテーパリング(量的緩和縮小)に踏み出すなど米金融政策が転換点を迎えていることだと思う」と指摘する。

 FRBは、11月にもテーパリングを決定し、2022年半ばにもテーパリングを終了させる方針とみられている。米国をはじめとする世界の株式市場は新型コロナウイルス感染拡大を機に採用された超金融緩和策を背景に、株価は急激な上昇を演じてきただけに「金融政策の転換による今回の調整は、当然の一服。基本的な金融緩和策は今後も続くだけに、相場の上昇基調が崩れたわけではない」と秋野氏はみている。

●今月中旬の米四半期決算が堅調なら株価反騰へ

 米国の債務上限問題に関して、最終的には米民主党と共和党は折り合いをつけ、デフォルトは回避されるとみる声が多い。インフレ懸念も徐々に相場に織り込むとみられる。また、中国恒大の問題に関しては「最終的にはデフォルトとなるだろうが、それが金融危機にまで至ることはないだろう。バブル崩壊後の日本のように、中国の不動産価格が暴落することもないと思う」と秋野氏は言う。また、SBI証券の鈴木英之投資情報部長は、インフレ懸念に関して「新型コロナウイルス感染拡大からの回復局面に当たり、どうしてもインフレ率は高まりやすくなる。ただ、このインフレ率上昇は持続しないとの見方がある」と指摘する。

 今後の焦点は、まずは今週末8日の米9月雇用統計であり、続いて18日以降の債務上限問題のXデーが注目される。とりわけ、前出の秋野氏は「債務上限問題が重要局面を迎える18日頃が相場のポイントになるのではないか」とみている。更に13日にJPモルガン<JPM>、14日にバンカメ<BAC>、19日にネットフリックス<NFLX>と米国の四半期決算が始まる。この10月中旬を転機に米国企業決算が順調な増益基調を描けば、米国株の反発とともに日本株も反転基調を強めることが期待できそうだ。

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