【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 二番天井の位置を探る
株式評論家 植木靖男
「二番天井の位置を探る」
●脆弱さを突かれた東京市場
東京市場は、投資家をして震撼せしめるに十分な暴落相場となった。この下げの要因について市場関係者の多くは、米国のインフレ懸念を指摘している。はたしてそうか?
通常は海外、なかでも米国の株価変動に東京市場は追随することが多い。しかし、今回は微妙に違う。むしろ、東京市場が先に暴落したのではないか。だとすると、米国のインフレ懸念が材料であるとは言い難い。わが国は目下、デフレで苦しんでいるのだ。インフレ懸念で株価が下がったのではない。不合理だ。
相場は常に売り方と買い方のせめぎ合いである。投資マネーが溢れている今日、マネーに国境はなく、よって投資家は常時、売ってよいところ、買ってよいところがどこか、鵜の目鷹の目で探している。
売り方にとって、いまどこが売りやすいかを考えたとき、米国株はその環境からして売りづらい。そこで狙いを定めたのが東京市場。わが国のワクチン接種率は先進国中で最低だ。いまや接種率と経済とは見事なまでの相関性がある。つまり、東京市場は脆弱なのだ。
折しも日経平均株価は、肝とされる2万9300~2万9500円処を明確に上抜くことができず苦闘していた。売り方にはチャンスとみえただろう。はたして東京市場はあっけなく崩壊した。売り方の完勝である。このことは先物市場をみれば歴然である。
●グロース株から景気敏感株へ主役交代
では、今後はどう動くとみればよいのか。中長期でみれば、ワクチン接種は周回遅れながら日本人特有の粘り強さから急速に進むとみる。よって、株価はいずれ経済の回復を伴って上昇基調に戻ると期待される。年前半と後半の境目が転機となりそうだ。
短期的にはどうか。暴落で動転したが、今週末早くも急反発した。これは過去の暴落局面と比較すると、かなり下値抵抗力が強いことがわかる。もちろん、週明けの株価の位置にもよるが、案外早い時期に二番天井を目指すことになろう。週前半に崩れても週央には下値をつけるとみている。二番天井はおそらく2万9300円処が精一杯か。ここを上抜けると、2月高値を意識するような想定外の展開となろう。
逆に、来週中に下げ止まらずジリ貧となれば、下値は相当深いとの覚悟が必要だ。だが、その確率は低い、とみている。
さて、今後の物色はどう変化するとみればよいのか。仮に昨年3月からの上昇相場がいったん終焉するとみれば、これまでの主役は当然のことながら降板せざるを得ない。すなわち、グロース株、成長株の休憩入りである。代わって、景気敏感株の出番である。すでに鉄鋼、海運などそのはしりをみせているが、当面、二番天井を目指すときの主役は景気敏感株であろう。
国際商品先物の値動きを示すCRB指数は今年4月以降、青天を衝くような上げっぷりである。もっとも当分は、景気敏感株が主役といってもグロース株ファンは数多い。7対3ぐらいの案配か。二番天井後はグロース株中心に最後の投げが出るとみられる。
このような視点から銘柄をみてみよう。まずは景気敏感株の中から大紀アルミニウム工業所 <5702> だ。アルミ2次合金の引き合いが強いという。自動車生産の持ち直しが業績を押し上げよう。次に、オリックス <8591> に注目したい。日本経済の回復を買うつもりで面白い存在といえよう。最後に、SUMCO <3436> 。半導体関連で割安感がある。いまの水準なら安心買いである。短期でも中長期でも狙い目だ。
2021年5月14日 記
株探ニュース