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【特集】オンコリス Research Memo(5):テロメライシンは導出先の中外製薬が国内治験を進める(2)

オンコリス <日足> 「株探」多機能チャートより

■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向

c) 進行性または転移性固形がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法)
食道がんを中心とした進行性または転移性固形がんでステージ4の患者を対象に、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(開発:米メルク<MRK>、商品名:キイトルーダ)との併用療法による医師主導の第1相臨床試験が、2017年12月より国立がん研究センター東病院等で進められている。試験内容は、前半の9例が投与量を3群に分け(低容量、中容量、高容量)、治療期間6週間でテロメライシンを3回反復投与、ペムブロリズマブを複数回投与し、安全性や抗腫瘍効果、免疫応答等を評価するというもの(最大2年間の経過観察期間を設けて生存率についても評価)。また、後半の13例については、前半に行った試験のうち高容量群での3回反復投与を1クールとし、複数クール行う試験となる。

前半Phase1a臨床試験では9例に関する中間報告が、2019年3月に米国で開催された癌学会で発表されている。内容は、投与を制限するような重篤な副作用が発生せず、副次評価項目である有効性評価として、9例中3例で全身での部分奏効が確認された。ペムブロリズマブの単独療法では部分奏効率が13.1%という臨床試験結果が出ており、テロメライシンとの併用療法による腫瘍縮小効果が期待できる内容であった。

現在は後半のPhase1b臨床試験を実施中で、2020年10月までに13例中10例までの被験者登録が進んでいる。このうち9例は原発巣の食道がんから肝臓に転移したがんに投与したが、部分奏功は確認できなかった。これは、肝臓が食道よりも体積が大きいため、プロトコルで定められた薬の投与量(1~2cc/回)では少なすぎることが原因と考えられる。このため、10例目からは再び原発巣の食道がんへの投与に戻して試験を進めていく予定で、臨床試験の終了時期は2021年の見込みだ。今後の開発方針については、中外製薬が臨床試験のデータを見て判断することになるようだ。中外製薬でも免疫チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の開発を進めており、今回の医師主導臨床試験のデータ結果次第では、アテゾリズマブとの併用療法による臨床試験を進めていく可能性はある。ただ、第2相臨床試験に進んだとしても、有効性評価として2年後の生存率や再発率などを見る必要があるため、試験期間は数年程度と長期間になることが予想される。

d) 胃がん・胃食道接合部がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法)
ステージ4の胃がん・胃食道接合部がん患者を対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による医師主導の第2相臨床試験が、2019年5月より米国のコーネル大学などで進められている。ペムプロリズマブ投与中の患者に対して、テロメライシンを隔週で4回投与する。症例数は最大37例で観察期間は半年程度となり、安全性と有効性を評価する。施設数はコーネル大学ほか2施設で、臨床試験に要する期間は当初3年程度を見込んでいたが、新型コロナウイルスの影響で遅延しており、被験者登録数は6例と2020年2月時点から変わっていない。ただ、被験者のスクリーニングは再開しており、今後は徐々に被験者登録も進むものと期待される。なお、コーネル大学では10例を終えた段階で中間解析及び結果を発表する予定にしている。

コーネル大学の担当医師からは、「部分奏効率で標準治療を上回る結果であれば、企業治験に切り替えていく価値がある(ペムブロリズマブ単剤では約15%)」と言われている。仮に企業治験を進める場合は、中外製薬がオプション権を行使して米国のグループ会社であるジェネンテックが主導して開発を進めていくものと予想される。なお、今回の臨床試験ではペムブロリズマブを使用しているが、中外製薬では同じ免疫チェックポイント阻害剤のアテゾリズマブがあるため、企業治験で開発を進める場合はアテゾリズマブを使用するものと思われる。

e) 頭頸部がん(免疫チェックポイント阻害剤、放射線との併用療法)
同社は2020年8月にコーネル大学医学部らを中心とする研究グループと、頭頸部がん患者(手術不能で進行性または転移性の頭頸部がん)を対象とした医師主導の第2相臨床試験を実施する契約を締結し、2020年内に投与が開始できる見通しだ。試験内容は、免疫チェックポイント阻害剤及び放射線との併用療法による試験で、予定症例数は最大36例、安全性と有効性を評価する。コーネル大学では最初の12例で中間解析及び結果を発表する予定にしている。既存治療法(放射線+化学療法)より良好な結果が得られれば、中外製薬がオプション権を行使して企業治験に切り替えて開発を進めていく可能性があるとみている。

f) 肝細胞がん(単剤)
ステージ3/4の肝細胞がん患者を対象とした第1相臨床試験を2014年から韓国・台湾で進め、2020年7月に試験が完了している。評価可能な18例において安全性が確認されている。今後は中外製薬が検討中の開発方針次第となるが、併用療法による臨床試験を進めていく可能性がある。

更に今後、中外製薬において肝細胞がん患者を対象に安全性、忍容性及び有効性の評価を目的としたテロメライシンと抗PD-L1抗体アテゾリズマブ及び分子標的薬ベバシズマブを併用する第1相臨床試験が計画されている。

g) ハンルイとの契約解消
2020年6月に中国のライセンス供与先であったハンルイとの契約解消を発表した。ハンルイ側では臨床試験を開始する準備を進めていたものの、両社でテロメライシンの開発に関する戦略的な方針変更を行うことになり、協議の結果、契約を解消することにした。なお、テロメライシンの有効性、安全性、製造面での疑義は発生していない。このため、現在は中国・香港・マカオを対象市場とした新たなライセンス契約先を探索している状況にある。中外製薬のほか、中国の大手製薬企業などが候補となっており、早期の契約締結を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《ST》

 提供:フィスコ

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