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【特集】増益予想に大転換! 株高期待の「上方修正予備軍」6銘柄リストアップ <株探トップ特集>

上期決算発表と同時に通期計画を上方修正する企業が相次いだが、いまだ慎重姿勢を崩していない企業は多い。今回は上方修正有力株のうち、減益予想から増益への変貌が期待できる6銘柄をリストアップした。

―今期業績がプラス成長へ転じることが期待される上方修正有力候補をピックアップ―

 今月中旬までに一巡した21年3月期上期(4-9月)の決算発表では、下期の業績回復を見込んで通期予想を上方修正する企業が相次いだ。一方、新型コロナウイルス感染拡大への警戒感から慎重姿勢を崩していない企業も多くみられる。「株探」集計では、上期時点で経常利益の通期計画に対する進捗率が50%を上回った企業の数は821社と全体の半数を超えた(通期未定と赤字見通しの企業は除く)。ここ最近のデータと比較すると高い水準で、業績上振れ余地は大きいといえそうだ。そこで今回はコロナ禍でも足もとの業績が拡大基調で、通期計画に対する進捗率が高く、上方修正が有力視される銘柄を探った。

●今期の経常利益は3割減益見通し

 21年3月期の通期業績見通しを開示した企業は、全体のおよそ9割と例年並みになった。4-6月期決算発表が終了した8月末時点では、新型コロナウイルスの影響が見通せないとして3割超の企業が通期の業績予想を未定としていた。上期決算発表シーズンを経て、ほぼ出そろった通期業績予想を集計したところ、全体の経常利益は27%減益に落ち込む見通しとなった。鉄道・バスや空運の大半が赤字に陥るほか、時価総額の大きい自動車メーカーで大幅減益予想が多いことなどが響く。製造業を中心に下期回復シナリオを描く企業は多いが、上期までの業績低迷を補うことはできない。

●一転増益への上方修正はサプライズ度が高い

 こうしたなか、今回は21年3月期通期計画の上方修正が期待できる企業のなかでも、減益予想から一転して増益となりそうな企業に照準を合わせた。減益予想から増益予想への上方修正はサプライズ度が大きく、マーケットから高い評価を得るケースがしばしばみられる。上期決算発表の集中期間となった10月から11月にかけても、“一転増益”へ上方修正した企業の株価は大きく値上がりするものが目立った。

 以下では、時価総額が1000億円未満の中小型株を対象に、(1)20年4-9月期の経常利益が前年同期比で10%以上の増益、(2)4-9月期経常利益の通期計画に対する進捗率が65%を超え、かつ同進捗率が過去5年平均を5ポイント超上回る、(3)21年3月期の経常利益予想が減益を見込む、といった条件を満たした6銘柄を紹介していく。

●ULSグループは6年連続で2月に上方修正

 最初に取り上げるのは、戦略的ITに特化したコンサルティングサービスを展開するULSグループ <3798> [JQ]。同社は前期まで6年連続で第3四半期の決算発表時に通期業績見通しと配当予想を増額修正しており、上方修正の常連ともいえる存在だ。11月6日に発表した21年3月期上期(4-9月)の経常利益は前年同期比13.8%増の7億1700万円に伸び、同期間の過去最高益を達成した。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業の拡大を背景にIT投資ニーズが復調するなか、建設、金融、サービス業を中心とする既存顧客からの引き合いが強かった。通期計画の10億円に対する進捗率は7割を超え、前期実績の13億3400万円も射程に捉える。直近は3年連続で減益予想から一転して増益見通しに上方修正した経緯があり、今期も期待したいところだ。

●平田機工は上期実績が通期計画超過、EV関連としても脚光

 生産設備メーカーである平田機工 <6258> の上期決算は、半導体関連事業の収益が拡大し、売上高328億円(前年同期比15.4%増)、経常利益28億4100万円(同2.3倍)と大きな伸びを記録した。5G(第5世代移動通信システム)の本格化やデータセンター需要の高まりを受けて、シリコンウエハー搬送装置などの販売が増勢だったほか、有機EL関連も需要が回復した。また、原価低減や販管費の減少で採算が改善したことも利益を押し上げた。足もとでは電気自動車(EV)関連生産設備の受注が回復基調にあり、通期の経常利益見通しを26億円に上方修正したが、修正予想は上期実績を下回っており、一段の上振れが期待できそうだ。世界的に広がる環境政策を背景に物色人気が旺盛なEV関連のテーマ性にも乗り、株価は約2年ぶりの高値圏を快走する展開が続く。

●山一電機の下期急減速予想は保守的

 半導体検査用ソケット大手の山一電機 <6941> は6日に決算を発表。上期業績は米中貿易摩擦やコロナ禍の影響で通信・自動車向けコネクターは不調だったものの、スマートフォンのCPU向けテスト用ソケットの販売拡大で吸収し、経常利益20億4300万円(前年同期比23.7%増)と大幅増益を達成した。同時に、これまで未定としていた21年3月期通期の同利益は28億5000万円(前期比7.5%減)になる見通しを示した。上期実績の対通期進捗率は7割を超えており、計画は保守的な数字とみられる。また、毎年第3四半期決算を発表する2月初めは、過去5年のうち4回上方修正を発表した経緯があり、今期も増額修正に期待したいところだ。株価は直近で1300円台のもみ合いから上放れる動きをみせており、先高期待は強い。

●東洋合成はEUV用感光材料の好調で成長回帰へ

 東洋合成工業 <4970> [JQ]は半導体やディスプレーの製造に欠かせないフォトレジスト用感光性材料で世界トップクラスのシェアを誇る。前期まで感光性材料が牽引する形で高成長軌道にあったが、21年3月期はコロナ禍の影響を踏まえて成長一服の計画を立てる。足もとでは上期業績が経常利益ベースで20%増益の好調ぶりを示したが、10月に完成した感光材新工場に絡む固定費増加を見込み、通期計画(18億7000万円)は据え置いた。ただ、次世代露光技術EUV(極端紫外線)用を中心とする高付加価値製品への需要は強く、上振れする可能性は十分にありそうだ。株価は決算発表後に利益確定売りが広がったものの、その後は上昇トレンドに復帰しており、11月6日につけた上場来高値も視野に入る。

●宮地エンジは上方修正を繰り返す傾向強い

 橋梁建設を主力とする宮地エンジニアリンググループ <3431> は期初予想を保守的に見積もる傾向が強く、前期まで4年連続で期中に経常利益予想を上方修正した履歴がある。上期業績は手持ち工事が順調に進捗するなか、生産の効率化や工事採算向上への取り組みが奏功し、経常利益は前年同期比32.7%増の32億9500万円に膨らんだ。10月30日に通期の経常利益見通しを引き上げたが、上期実績の修正した通期予想に対する進捗率は65.9%と高く、上振れ余地がありそうだ。また、第2四半期に大型工事案件を獲得したことで、上期の受注残高は前年の同時期と比べ2割以上も高い水準にあり、今後の収益成長にも期待がもてる。株価は年初来高値圏にあるが、指標面では予想PER4.9倍、PBR0.5倍と割安感が極めて強く、水準訂正余地は大きいとみられる。

●ケアサプライは高齢化進展でニーズ拡大に期待

 日本ケアサプライ <2393> [東証2]は三菱商事グループの福祉用具レンタル大手。介護保険制度の対象となる電動ベッドや車いす、入浴補助用具などを地域の福祉用具貸与事業者にレンタル・販売するビジネスを展開している。上期業績は、売上高101億700万円(前年同期比8.0%増)、経常利益14億6200万円(同29.5%増)といずれも上期の過去最高を更新した。福祉用具レンタル・販売の拡大が継続したことに加え、コロナ禍による営業活動の制限で経費支出が減少したことも増益につながった。上期経常利益の通期計画(21億円)に対する進捗率は7割に到達しており、業績上振れが見込まれる。また、安定配当を続けているうえ、配当利回りは2%台後半と高水準であることも注目ポイントだ。高齢化社会の進展で介護業界の市場規模が拡大するなか、中長期の成長期待も強い。

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