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【特集】「EC×コロナ」で省人化ニーズ加速、「物流テック関連株」が本格始動へ <株探トップ特集>

人手不足にEC市場拡大に伴うニーズの多様化が重なり、疲弊する物流業界。こうしなか、省人化をキーワードに関心を集めているのが物流テック関連株だ。

―宅配荷物の急増でのしかかる大きな負担、先端技術の活用が効率化のカギに―

 新型コロナウイルスの新規感染者が再び増加するなか、菅義偉首相は11月26日の会見で「今後3週間が極めて重要な時期だ」と訴えた。感染の収束が見通せないことから在宅でも商品を購入できる電子商取引(EC)の需要は更に拡大することが予想されるが、現場の作業員やトラックドライバーなど人的資源に大きく依存する 物流業は宅配荷物量の急増に対応するのが困難な状況となっている。生産性向上や省人化にはITなど先端技術を活用した「物流テック」の取り組みが欠かせず、関連企業にはビジネス機会が広がりそうだ。

●急増する宅配便取扱量

 EC市場の活性化に伴って、物流業界を取り巻く環境は劇的に変化している。経済産業省が7月に発表したECに関する市場調査によると、2019年の国内の消費者向けEC(BtoC-EC)市場規模は前の年に比べ7.65%増の19兆4000億円となったほか、企業間EC(BtoB-EC)は同2.5%増の353兆円に拡大。EC化率(すべての商取引金額に対するECの割合)はBtoC-ECで前の年に比べ0.54ポイント増の6.76%、BtoB-ECで同1.5ポイント増の31.7%となった。こうしたことを背景に、国土交通省が9月に公表した19年度の宅配便取扱実績は43億2349万個と前年度から1647万個増加しており、こうした傾向はコロナ禍での巣ごもり需要もあって一段と加速するとみられる。

●効率化に動く物流大手

 もともと物流業界は少子高齢化による人手不足で労働環境の悪化などが起きており、これにEC市場拡大に伴う小口・多頻度・時間や場所の指定などニーズの多様化が大きな負担としてのしかかっている。物流大手では効率化を急いでおり、日本郵政 <6178> 傘下の日本郵便は6月から人工知能(AI)による配達ルート自動作成などを活用した配達業務支援システムを試行導入したほか、ヤマトホールディングス <9064> は7月にデータ解析を手掛ける米パランティア・テクノロジーズとデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる取り組みを開始すると発表。SGホールディングス <9143> 傘下の佐川急便は早稲田大学などと荷物の識別能力を高めたロボットによる自動荷降ろしシステムを開発中だ。

●ダイフクは流通向けシステム好調

 生産性向上や省人化をキーワードとした物流テックの需要は根強く、マテリアルハンドリング(物流業務を効率化するために用いられる機器のこと)大手のダイフク <6383> は一般製造業・流通業向けシステムが好業績を牽引。11月6日に発表した21年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結営業利益は前年同期比13.8%増の196億6900万円と、従来予想の163億円から上振れ着地した。受注は新型コロナの感染拡大による商談の遅れなどで前年同期の実績には及ばなかったが、売上高は豊富な受注残高をベースに堅調推移。会社側が第3四半期に受注が大きく回復するとみていることもあり、株価は新値追いの展開となっている。

●在庫管理システムを提供するロジザード

 倉庫の在庫管理システムをクラウドで提供するロジザード <4391> [東証M]の足もと業績も好調。月額利用料の積み上げは順調に推移しており、11月13日に発表した21年6月期第1四半期(7-9月)の連結営業利益は前年同期比20.8%増の7100万円となった。株価は上値の重い展開となっているが、国内EC市場の成長を考えれば同社の活躍余地は大きいといえそう。テクニカル面では25日移動平均線と75日移動平均線とのゴールデンクロスが目前に迫っており、出直りが期待できる状況だ。

●厚い顧客基盤と開拓力が強みの関通

 物流支援サービスを手掛ける関通 <9326> [東証M]が10月14日に発表した21年2月期第2四半期累計(3-8月)の単独決算は、営業利益が前年同期比92.6%増の1億2900万円となった。倉庫管理システム「クラウドトーマス」を中心に、新規顧客の獲得が伸びたことなどが寄与。同社の強みである厚い顧客基盤や顧客開拓力などを生かした更なる成長が見込まれる。

●uprは先進的なサービスを展開

 箱型荷台(パレット)などをレンタル・販売するユーピーアール <7065> [東証2]は、アクティブRFIDタグを搭載した「スマートパレット」やアシストスーツなど先進的なサービスも展開している。21年8月期通期は設備投資や経費の増加を見込み連結営業利益予想は前期比22.0%減の8億8400万円としているが、一方で売上高は同6.5%増の135億5900万円を計画。人手不足など物流業界の構造的な問題からパレット需要は順調に拡大するとみており、株価動向から目が離せない。

●トランコム、ナ・デックスなどにも注目

 このほか、ECの商品管理を支援するHamee <3134> 、自社・協力会社の配車管理と繁閑期の求貨求車が簡単にできるプラットフォームを運営するラクスル <4384> 、需要予測型の自動発注システムのシノプス <4428> [東証M]、生活用品向け物流システム「LIFE-Vision」を提供する東計電算 <4746> 、物流事業者などに最適輸送計画支援サービスを行うウェザーニューズ <4825> 、各種搬送機械を扱う西部電機 <6144> [東証2]などにも注目。

 無人搬送車などを販売する三菱ロジスネクスト <7105> 、輸送企業と荷主企業をマッチングするサービスを提供するトランコム <9058> 、物流分野向け動態管理や運行・配車管理システムを手掛けるパスコ <9232> 、AIを活用して配車・運行計画から管理・分析までの業務を一気通貫でサポートするゼンリン <9474> なども関連銘柄として挙げられる。

 直近では、ナ・デックス <7435> [JQ]が日本電気通信システム(東京都港区)と共同で、資材の位置情報を高精度で把握・可視化する「マーカーロケーションシステム」を開発したと発表。このシステムは、ナ・デックスのスマートマテリアル管理システム(入出庫管理)とNEC通信システムが開発したマーカー位置測位ソフトウェアにより、入庫した資材を自動的に認識し、そのロケーションを自動的に関連付けることで、資材の種別ごとに保管スペースを確保する必要のないフリーロケーション化を実現する。

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