【特集】「AI関連」新たなる地平、大相場の可能性秘める銘柄をロックオン <株探トップ特集>
新型コロナウイルスに対する懸念で右往左往する株式市場だが、個別では既にアフターコロナを見据えた銘柄物色が始まっている。その有力候補にAI関連株が急浮上している。
―ビッグデータ、IoT時代と融合、アフターコロナで再び動き出す最強テーマに乗れ―
ここにきて、東京株式市場では人工知能(AI)関連銘柄への投資マネー流入が顕著となっている。 ビッグデータの普及がAIを大きく進歩させる原動力となったが、これに加え、あらゆるものをオンライン化しリアルとバーチャル空間をつなげる IoT時代の到来がAIの活躍の場を大きく広げている。次世代成長分野である自動運転車、ドローン、フィンテック分野などはいうに及ばず、バイオ、医療、流通、農業、教育など、AIはあらゆる産業において付加価値の高いサービス創出の礎(いしずえ)となることは論をまたない。
●米中摩擦はAI覇権を巡る戦い
世界的にスタートアップ企業やベンチャー企業への投資が盛んだ。最近は 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一時的にこうした“未来を買う”動きは鳴りを潜めているが、遅かれ早かれインキュベーションビジネスの市場に喧騒は戻ってくる。目玉となるのはやはりAI分野だ。IT企業に限らず、業界の垣根を超えて世界中の大資本がAI分野での主導権争いに精力を注いでいる。ロシアのプーチン大統領がいみじくも述べた「AIを制する者が世界を牛耳る」という言葉は、これからの四半世紀、いわゆる2045年といわれるシンギュラリティに向けた世界の覇権争いの本質を言い当てている。
近年は国際間で米中貿易戦争が苛烈化しているが、この底流ではAI世界最強国の座を死守したい米国と、そこに猛烈なキャッチアップを図り抜き去りたい中国との思惑がぶつかり合っている。中国では、昨年時点でAI関連企業が2500社を超える数にのぼると観測されている。これを米国が脅威に感じないはずがない。米中摩擦の根底にあるのは貿易収支の問題ではなく、AI覇権争いといっても過言ではないのだ。
●新型コロナでAI周辺企業にスポットライト
こうした背景を株式市場も放っておくことはない。ここにきて新型コロナウイルスの感染拡大に伴い世界経済に激震が走るなか、このウイルスに人類が打ち勝つためのソリューションを担う有力ツールとしてAIが注目されている。東京市場にもそのテーマ物色の波が寄せている。
2018年に株価を10倍化させ脚光を浴びたAIテンバガー銘柄であるALBERT <3906> [東証M]は、ビッグデータ解析で強みを持ち、人材の払底が問題視されているデータサイエンティストの育成に注力している。14日に厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策本部クラスター対策班に対して、同社がビッグデータ分析やアルゴリズム開発のためのデータサイエンティスト派遣を行うことが伝わり、2日連続のストップ高(ザラ場含む)を演じる人気となった。
更に科学技術計算用の高性能コンピューターソフトを企業などに提供するAI関連のニューフェース、HPCシステムズ <6597> [東証M]もここ戻り足を強めている。同社はスーパーコンピューター「富岳」に計算ソフトウェアABINIT-MPを実装して新型コロナウイルス関連タンパク質に対する解析支援に乗り出したことを14日引け後に発表しており、15日は一時160円高の2132円まで買われる場面があった。
また、IoTインテグレーション事業を展開しAI分野も深耕するエコモット <3987> [東証M]も急速人気化、17日は連日のストップ高に買われた。同社は新型コロナウイルス感染症拡大抑止に向け、AI顔認識とサーモグラフィーで最大16人を同時に検温可能なスクリーニングソリューション「サーモロイド Pro」を提供開始、既に新千歳空港の国内線到着口で行われる体温スクリーニングとして採用されている。
●アフターコロナで浮上する銘柄に照準
人類に脅威を与えている新型コロナウイルスが皮肉な形でAI周辺企業にスポットライトを当てることになったが、もちろんアフターコロナ、つまりコロナ終息後にクローズアップされる勝ち組業態としてもAI分野で商機を捉える企業の株価は注目されていくことになる。コロナショックで忘れられがちだが、今春から国内でも次世代通信規格「5G」の商用サービスがスタートしており、今後IoT社会の進展が一段とスピードを上げていくなか、 自動運転や遠隔医療などをはじめAIが本領を発揮する領域も加速的に広がっていく。上記銘柄以外にも同関連で注目される銘柄は多い。
AI関連のシンボルストックであるブレインパッド <3655> をはじめ、FRONTEO <2158> [東証M]、PKSHA Technology <3993> [東証M]、日本サード・パーティ <2488> [JQ]、サイオス <3744> [東証2]、sMedio <3913> [東証M]、イー・ガーディアン <6050> 、メンバーズ <2130> 、ロゼッタ <6182> [東証M]など有力株がひしめいている。このほか、中期スタンスで株価水準訂正が期待される銘柄を以下に挙げてみた。
◎システム情報 <3677>
金融・通信向けを中心に業務ソフト開発を行う独立系システムインテグレーターだが、AIを活用したコグニティブサービスやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、クラウドビジネス、サイバーセキュリティーなどの新規分野開拓も進めている。直近ではテレワーク推進に向けた「Telekumo(テレクモ)」の提供を開始し新たな需要獲得に積極的な姿勢をみせている。20年9月期営業利益は前期比8.6%増の14億8000万円を計画するが官庁向け大型案件の確保で増額修正含みだ。
◎ダブルスタンダード <3925>
独自技術によりビッグデータ解析などを主力に手掛け、SBIグループとの連携に期待が大きい。同社のAI搭載型OCR(光学式文字読取システム)を活用するSBIグループが同社株の保有株比率を高め資本提携を強化する動きをみせていることはポイント。また、AI身分証システム「D-trust」は独自のAI技術を活用した画像情報活用ソリューションで受注が相次いでいる。株価は3月末につけた戻り高値4180円クリアまであと一歩のところまで来ている。
◎アドバンスト・メディア <3773> [東証M]
音声認識技術の先駆だが、AIを付加することで価値を増幅させたBSR(超音声認識)ビジネスで成長ビジョンを描いている。業績もコールセンター向けなどで受注獲得が進んでおり、19年4-12月期は営業利益段階で前年同期比6割増を達成するなど好調を極める。株価は底練りから浮上に転じ、5日移動平均線をサポートラインとするきれいな上昇波動を描いている。約2ヵ月前の2月中旬には1244円の年初来高値を形成しており、時価はそこから300円強下押した水準にある。
◎フューチャー <4722>
ITコンサルティングサービスを展開、AI技術やクラウド活用にも精通している。同社の有するAIとコンサルティングの専門知識を融合した、最先端AI活用コンサルティングサービス「Future AI」は、戦略から技術実装までワンストップで対応し時流を捉えている。また、ワクチン用抗原探索AIや認知機能測定AIなどAI医療分野における展開にも期待が大きい。株式需給面では信用買い残が枯れ切った状態で上値の軽さが意識されやすい。
◎RPAホールディングス <6572>
AIがホワイトカラー業務の代行を行うRPAの普及が進むなか、データ入力などの事務作業を代行する「BizRobo!」を提供、旺盛な企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)需要の取り込みを進めている。新事業立ち上げコストで足もとの業績は低調ながら上場来の大底圏にあり逆張りで対処。株価は25日移動平均線が上値抵抗ラインとなっているものの600円近辺は拾い場となっている可能性がある。
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