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【特集】アフター“コロナ”と食料争奪戦の世界、急浮上「農業関連株」を追う <株探トップ特集>

台頭する食料安定供給への不安へどう立ち向かう。新型コロナウイルスの世界的感染拡大が呼び起こしかねない危機を追う。

―国連3機関警鐘で注目、自給率向上へカギ握る銘柄は―

  新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、食料の安定供給に対する不安が高まりつつある。大規模な移動制限による人手不足や物流の混乱に加え、一部の国が自国を優先するため食料の輸出制限に乗り出す動きをみせているからだ。既に国際連合食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)の国連3機関が警鐘を鳴らしており、食料を輸入に依存する国の懸念材料となっている。農林水産省によれば「食料品は十分な供給量・供給体制を確保しており、コメや小麦の備蓄についても十分な量を確保している」ことから当面の不安はないが、足腰の強い 農業の確立は急務で関連銘柄に注目したい。

●一部で食料輸出制限の動き

 FAO、WHO、WTOの各事務局長は3月31日、「食料品の入手可能性への懸念が輸出制限につながり、国際市場で食料品不足が起きかねない」とする共同声明を発表。「世界中の多くの人々の生計や食料安全保障が国際貿易に依存しており、各国の新型コロナウイルス封じ込めのための行動が、食料供給に影響を与えないよう、輸出制限などの措置を取らずに協調する必要がある」と述べ、新型コロナウイルスへの対応が意図しない食料の不足や飢餓を引き起こすことのないよう呼び掛けた。

 国連機関がこうした声明を発表した背景には、食料輸出制限の動きが出始めていることがある。4月3日付の日本経済新聞電子版は「旧ソ連の穀物輸出国が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、輸出の管理に動き出した」と報じた。記事によると、最大の小麦輸出国のロシアは4月から6月末までの穀物輸出に割当制を導入し、ウクライナは6月末までの小麦輸出量に上限を設けたという。

●求められる自給率の向上

 新型コロナウイルスの感染拡大が一段と深刻化すれば、輸出制限措置の動きが一層強まることが予想され、食料の多くを輸入に頼っている日本への影響が懸念される。将来にわたって食料の安定供給を確保するためには自給率の向上が不可欠で、3月31日に閣議決定された新たな食料・農業・農村基本計画では、2030年度の自給率目標としてカロリーベースで45%(18年度は37%)、生産額ベースで75%(同66%)が設定された。

 自給率の向上には農作物の品種改良や農業の効率化などが重要なカギを握るだけに、 種苗を販売するカネコ種苗 <1376> やサカタのタネ <1377> 、肥料大手の多木化学 <4025> やOATアグリオ <4979> 、各種農薬を提供している北興化学工業 <4992> やクミアイ化学工業 <4996> 、農機大手の井関農機 <6310> やクボタ <6326> に商機。農業コンサルティング事業などを手掛ける農業総合研究所 <3541> [東証M]のビジネスチャンスも広がりそうだ。

●見逃せないスマート農業関連

 また、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して超省力・高品質生産を実現する スマート農業の関連銘柄も見逃せない。農林水産省は20年度予算で「スマート農業総合推進対策事業」に15億円(昨年度当初予算は5億500万円)を計上しており、先端技術の現場への導入・実証や、地域での戦略づくり、科学的データに基づく土づくり、教育の推進、農業データ連携基盤(WAGRI)の活用促進のための環境整備などの取り組みを支援する。

 関連銘柄として挙げられるのが、農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」を展開するセラク <6199> だ。これは農業をデータ化することで、生産の可視化や省力化を実現し、更に付加価値の高い食農バリューチェーンを構築することで、収益性の高い農業につなげるもの。直近では農水省が公募を実施した「20年度スマート農業実証プロジェクト」に、長崎県南島原市と共同で行っている「みどりクラウド」を活用した事業が採択された。

 オプティム <3694> もスマート農業に注力する企業のひとつ。同社は世界初のピンポイント農薬散布テクノロジーをはじめ、AI(人工知能)IoT(モノのインターネット)ロボット技術を活用した農業の省力化と高収益化を実現しており、同社が取り組むスマート農業アライアンスは3月下旬時点で約1700の加盟数(団体)を誇る。

 やまびこ <6250> は、小型屋外作業機械と農業用管理機械、一般産業用機械が事業の3本柱。2月に公表した22年12月期を最終年度とする3ヵ年の新中期経営計画では、農業用管理機械の重点目標として省力化や効率化に寄与する製品の拡販に加え、自動化や無人化など進化する農業機械に対するサービス力向上を図りスマート農業への対応を促進することを掲げた。

 ネクスグループ <6634> [JQ]は、デジタル管理された化学的土壌マネジメントによって育てた安心・安全な健康野菜の販売と、栽培技術の生産者向け提供を行う農業ICT事業「NCXX FARM(ネクスファーム)」を展開。このほか、農業事業の経営相談や事業設計・計画のサポートなどの総合コンサルティングも手掛けている。

●キーウェア、トプコンなどにも注目

 これ以外では、栽培計画などをクラウド上で管理する「農場物語」を手掛けるイーサポートリンク <2493> [JQ]、技能の可視化・継承などを支援する農業ICTソリューション「OGAL(オーガル)」を展開するキーウェアソリューションズ <3799> [東証2]、「i-農業」を目指してさまざまな取り組みを行っている大和コンピューター <3816> [JQ]、GNSS(全世界測位システム)技術を駆使した精密農業機器を扱うトプコン <7732> 、ハウス環境を“見える化”する「ハウスモニタリングサービス」を提供するネポン <7985> [東証2]などにも注目したい。

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