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【特集】新型コロナウイルス感染拡大で、やっぱり民間の医療保険は必要?

清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方」-第2回

清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
清水香1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災復興学会会員。

 世界中で多くの人の命を奪い続けている新型コロナウイルス。その脅威はコメディアンの志村けんさんが死亡された際に、改めて多くの人に伝わりました。

 志村さんが亡くなったのは緊急入院からわずか10日。軽症が8割程度と言われていますが、志村さんのように発症から1週間程度で突然、呼吸ができなくなる重症化が、高齢者に限らず若い世代でも起きています。
株探_民間の医療保険は必要か

 人工心肺装置の装着が必要になる重症患者の場合、回復に月単位の期間が必要になることも。エクモと呼ばれる重篤患者に使う体外式膜型人工肺を装着すると、中国や米国などでは超高額の医療費がかかるという情報も広がり、症状はもとよりお金のことが気がかりな人は多いかもしれません。

新型コロナに関する医療費は公費で負担

 ですが日本では、新型コロナウイルス感染症に関する医療費については心配無用です。というのも、今年1月28日に、指定感染症として定める政令が施行されたからです。

 1998年に制定されたいわゆる「感染症法」によって指定感染症に指定されると、検査を含め、必要な医療費が公費で負担されるため、医療費は原則かかりません。これは検査の結果が陰性であったとしても原則、検査費用は公費扱いとなります。

 ただし、住んでいる地域によっては一部負担が生じる場合もあります。たとえば東京都では、住民税の一部である「市町村民税所得割額」が56万7000円を超えると、月2万円の負担が生じます。ただし、それが上限額となりますから、通常の保険診療よりも負担は大幅に少なくなります。保健所を通じて相談し、必要な手続きを踏む必要はありますが、その限りにおいて、お金の心配は要りません。

■住民税の仕組み
【タイトル】

 公費負担医療にはいろいろなものがあり、感染症に関するものでは「ペスト」や「エボラ出血熱」など深刻な感染症のほか、「結核」「ジフテリア」なども対象です。そのほか、被爆者に実施される全額国庫負担の「原爆認定医療」、また一定の難病患者の医療費自己負担が所得に応じて軽減される「難病医療費助成制度」、精神障害者の通院医療が1割負担となる「精神通院医療」なども公費負担医療の一例です。

そもそも医療費があまりかからない国、日本

 公費負担の医療に限らず、日本はそもそも患者の医療費負担が少ない国であることをご存じでしょうか。

 日本には「国民皆保険制度」があり、誰でも何らかの公的医療保険に加入しています。交付された保険証を携え診療を受ければ、医療費は全国一律の公定価格、負担は現役世代なら医療費全額の3割です。さらに高額療養費制度という、1カ月(暦月)あたりの医療費負担の上限も設けられています。この制度では、所得に応じて分けられた5つの区分ごとに負担上限額が定められ、月当たりの負担額は所定額以上にはなりません。

 たとえば1カ月当たりの総額の医療費が100万円かかった場合、年収350万円の人が1カ月に負担する医療費の上限は5万7600円、同600万円では8万7430円、同800万円で17万1820円になります。

 それを超える額を窓口負担したときは、2年以内に還付手続きをすれば戻ります。虫垂炎だろうとほかの疾病であろうと、保険診療を受ける限り、それ以上の負担は生じません。

■総医療費100万円・自己負担3割・30万円の人の最終自己負担額
株探_最終自己負担額
注:69歳以下。給付額は還付手続きで受け取れる金額

 70歳になると高額療養費の仕組みが少し変わり、医療費負担はさらに軽減されます。70歳以上の高額療養費の所得区分は6つになります。先に述べた69歳以下の現役世代は5区分でしたので、70歳以上では1区分が増えたことになります。

 70歳以上で、所得区分が年収156万~約370万円の世帯では、外来は個人ごとに1カ月当たり1万8000円が上限額になります。また世帯ごとでは1カ月当たり5万7600円が上限額となります。

 これらの詳しい内容は、本記事の最後に記した厚生労働省ウエブサイトにある「高額療養費制度を利用される皆様へ」を参照してください。

米ニューヨークでは、胃腸炎の外来初診料が約3万2000円に

 海外に目を転じてみますと、たとえば米国はOECD(経済協力開発機構)加盟国で医療費が最も高いことはよく知られています。虫垂炎でニューヨーク州の私立病院に1~3日入院したときの医療費は約320万円、胃腸炎の外来初診料だけで約3万2000円となり、過大な医療費負担は自己破産の主因になるほどです。

 公的医療保険制度は65歳以上の高齢者や障害者などが加入する「メディケア」と低所得者が加入できる「メディケイド」のみで、これらの保険に加入していても少なくない自己負担が発生します。

 公的医療保険に加入しない人向けには民間の医療保険がありますが、医療費の高騰から保険料も高くなり、無保険の人がかつて人口の15%超も占めていました。そこで民間医療保険の加入が2014年に義務化され(「オバマケア」)、無保険者は8.8%と減少したもの、医療格差は依然として横たわっています(本記事の最後に参照資料記載)。

 日本の国民皆保険制度は、全国どこでも同じ負担で安全な医療を受けられるのが特徴です。保険証を用いて診療を受ける限り、実際の医療費の自己負担が最大どれくらいになるかは、あらかじめ見えます。かつ医療費負担の家計へのインパクトは限定的ですから、ある程度の現金があれば対応は可能でしょう。

 こうした国民皆保険制度がある一方で、生命保険会社などが提供する民間医療保険の加入率が9割という現状もあります。

 保険とは本来、家計で対応できない経済的ダメージを回避するため、必要なお金を確保するリスクマネジメント策のひとつで、コストも必要です。米国と違い、公的医療保険で医療費の大部分が給付され、手元のお金で対応可能だとすれば、コストを負担してまで備えることに合理性はありません。



 

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