【市況】【植木靖男の相場展望】 ─ 戻り相場の終着地点を試算する
株式評論家 植木靖男
「戻り相場の終着地点を試算する」
●コロナ終息後に待つ景色
“泰平の眠りを覚ます上喜撰(じょうきせん) たった四はいで夜も寝られず”――いうまでもなく幕末のペリー来航で江戸中が大騒ぎになった時の有名な句である。
では、現代はどうか。“泰平の眠りを覚ますコロナウイルス 見えない忍者に夜も寝られず”といったところだろうか。
大恐慌以来と言われる今回のコロナ問題、終息後にどのような景色が待っているのであろうか。先般、慶応大学の小林教授がわかりやすく分析したリポートがある。
経済・金融市場を見通すに大事な部分を紹介してみたい。(1)世界のグローバリズムにブレーキがかかる。結果として個人の自由が制約され、格差是正が進む。(2)政府は個人の所得情報をリアルに把握するようになる、(3)産業構造で飲食業、観光業が縮小し、オンラインビジネスが続々と誕生する、(4)これまでの“低金利”、“低インフレ”が終わり、世界中で財政インフレの実験が始まる――などだ。将来の株式市場を巡るさまざまな環境を示唆していて興味深い。
さて、コロナパンデミックは中国にならって欧米など世界各国で順次終息をみせ、第一波は落ち着くことになる。
となれば、景気の大底は第2、第3四半期とみられる。株価はこの間に二番底を入れることになろう。
●リバウンドの主役は成長株へバトンタッチか
目先的にはどうか。3月19日安値1万6552円(終値ベース)からの上昇は、3月末の決算という事情もあって一時冷やっとする場面もあったが、つつがなく通過。いよいよ2万円奪取という段階に入ってきた。
では、どこまで上昇するのか。日柄の限界を過去の例から月末までとすると、残り立ち合い日数は8日間だ。
安値から今日まで1日当たりの上昇はおよそ160円。このままいけば月末には2万1000円処になる。これは最大値とみておきたい。大ざっぱにいえば、2万円から2万1000円の間ということになるが、はたしてどうか。
今後の物色はどうみればよいか。通常、大暴落の後は、最初にゴムまり理論から深く大きく押した銘柄群から反発する。海運、非鉄、金融、鉄鋼などだ。まさに定石通り。こうした銘柄がそこそこ自律反発する。
ところが、その後は全般市況が落ち着きを取り戻すと、成長株にバトンタッチされる。今回でいえば、米国でナスダック、つまりハイテク株がここへきて急速にクローズアップされ、アップルやアマゾンなどが史上最高値に踊り出てきた。
明らかに物色に変化の兆しが見えてきたのだ。東京市場でもこの週末には、 日経平均は戻り高値を一気に更新してきたが、値上がりと値下がり数はあまり大きくない。日経平均寄与度をみると、超値がさ株が株価を押し上げている。成長株が復活の兆しをみせている。
こうした観点から、まずソニー <6758> を取り上げたい。コロナ対策の一環で医療機器生産に協力するという。株価に“やる気”が出てきた。
次にオリンパス <7733> だ。主力の内視鏡は中国での成長が目覚ましい。呼吸器事業の処置具が売り上げを伸ばす。
資生堂 <4911> にも注目したい。インバウンド減速の悪材料を織り込んだ。欧米での収益増もあり、高級ブランドの輝きを取り戻しつつあるようだ。
2020年4月17日 記
株探ニュース