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【市況】明日の株式相場戦略=立ち向かうAIとアフターコロナの半導体に着目

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(15日)の東京株式市場では総じて売り優勢の展開で反落となったが、日経平均の下げ幅は100円未満でこれまでのような上にも下にも過激に振れるハイボラ相場ではなかった。前日の日本時間の段階で米株価指数先物上昇を横目に先取りしていた分、米株高の効果も限定的だったわけだが、後場寄りは日銀のETF砲の思惑でいったんプラス圏に浮上するなど、日常的なセオリーが珍しく反映された地合いだった。

 新型コロナウイルス による深い傷跡は人間だけでなく経済にも刻み込まれている。注目されたIMFの世界経済見通しは2020年の成長率をマイナス3.0%に引き下げ、1930年代の世界大恐慌以来となる経済悪化が現実味を帯びてきた。過剰流動性をバネに株価はリバウンド局面に入ってはいるが、実勢経済の回復はそうたやすいものではない。きょう発表された3月の訪日外客数は93%減。今さら驚いても始まらないが、これも強烈なインパクトでまさに戦時モードにあることを痛感させられる。ただし、全体相場がどういう状況でもコロナ耐性のある銘柄には資金が集まり、局地的に強調相場を堪能することは可能だ。その時の資金の流れを注意深く観察しながら柔軟な思考と投資行動で対処したい。

 個別では人工知能(AI)関連に強い株が目立っている。ビッグデータ IoTの発展とともに21世紀産業革命の中軸を担うのがAIであることは論をまたない。自動運転をはじめ、ドローンバイオなど、AIは次世代インダストリーとの融合でこれまでにない付加価値やサービスを生む強力な技術基盤となりうるが、ここにきて新型コロナウイルス対策絡みで改めてマーケットの視線が向いている。

 象徴的だったのはALBERT<3906>だ。同社はAIを活用したビッグデータ解析で強みを持ち、データサイエンティストの育成に注力している。厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策本部クラスター対策班に対し、ビッグデータ分析やアルゴリズム開発のためのデータサイエンティスト派遣を行うことが材料視され、きょうザラ場中に2日連続となるストップ高を演じた。更に高性能コンピューターソフトを企業や研究機関に納入するAI関連株の新星、HPCシステムズ<6597>も戻りトレンドにある。同社はスーパーコンピューター「富岳」に計算ソフトウェアABINIT-MPを実装して新型コロナウイルス関連タンパク質に対する解析環境の構築支援に乗り出したことを前日に発表、今後の展開が注目されている。ここ最近は、AI関連のシンボルストックであるブレインパッド<3655>が一貫して株価水準を切り上げていることも見逃せない。

 そうしたなか、4月1日の当欄でも紹介したがAI医療関連の穴株として、FRONTEO<2158>の200円台半ばは依然として魅力的な水準と思われる。同じく株価が低位に位置する銘柄で、生体認証ソフトを手掛けるディー・ディー・エス<3782>もAI分野を深耕しており、新認証アルゴリズムが新たな需要開拓の突破口となるかに期待が寄せられている。同社はテレワーク環境のセキュリティでも存在感を示している。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大の只中にあって、アフターコロナ相場を論じるのは気が早いかもしれないが、中期的視点で収益環境に構造的な追い風が吹き、株価の見直しが相次ぎそうなのが半導体関連株だ。AI・ビッグデータ時代と切り離せないデータセンター増設に加え、次世代通信規格5Gの離陸、そしてその先に来るポスト5Gを控え半導体セクターは遅かれ早かれ燎原の火のごとく買い戻しが本格化していくことが予想される。

 中長期でフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)連動型の投資を考えるなら東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>ということになるのだろうが、それでは面白くない。先駆して値幅が期待できる中小型株として、例えば半導体製造装置向け精密部品の加工を手掛け、20年8月期中間期の好決算発表済であるマルマエ<6264>。信用倍率は0.5倍、日証金でも貸借倍率0.8倍と株式需給の良さも魅力となる。このほか、日本電子材料<6855>、野村マイクロ・サイエンス<6254>、AKIBAホールディングス<6840>、栄電子<7567>なども合わせてマークしておきたい。

 日程面では、あすは3月の首都圏・近畿圏マンション販売が発表される。海外では前日に続き米国の経済指標が相次ぎ、3月の米住宅着工件数・建設許可件数のほか、4月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数などが発表される。
(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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