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【特集】実現するか?前例なき原油の大規模協調減産 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●失われた需要、半値以下に沈んだ原油価格

 前例のない規模の協調減産がおそらく実現に向かっている。トランプ米大統領は最大で日量1,500万バレルの減産規模になると述べた。米国も含めて一度限りの協調が行われると期待されている。この規模の減産となると、産油大国であるサウジアラビアやロシアが中心となっても負担的におそらく不可能である。

 先月にかけて 原油価格が大暴落した主因は、中国発の新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で蔓延し、石油需要が急激に落ち込んだことである。経済から本来の需要は失われており、石油消費量は日量3,000万バレル減少するとの見通しもある。コロナショック前の石油需要は日量1億バレル程度であり、ごく短期間での需要の吹き飛び方は尋常ではない。

 先月、石油輸出国機構(OPEC)加盟国を中心としたOPECプラスの会合で追加減産が協議されたが、舵取り役であるサウジとロシアの主張が折り合わず、協議は決裂した。サウジが減産目標の拡大を主張した一方、ロシアは追加減産を拒否し、原油安に拍車がかかった。協議が物別れに終わった直後、サウジ国営石油会社のサウジアラムコは顧客に大幅値引きを通知したほか、日量1,200万バレルの生産能力をフル稼働させたうえで国内向けの原油も輸出に回すことを表明し、サウジとロシアのシェア争いが始まった。石油戦争、あるいは価格戦争の勃発である。

 石油需要が一瞬で失われ、供給見通しも鮮明に悪化したことで指標原油であるブレント原油やウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)は2002年以来の安値圏まで大暴落した。米住宅バブルに端を発した世界金融危機を思い起こさせる、全てを消し去るような下げだった。原油価格が従来の半値以下に沈んだことで、OPEC加盟国のエクアドルは国債の利払い延期を要請したほか、米国ではホワイティング・ペトロリアムが破産法の適用を申請した。原油相場の低迷が続けば、多くの産油国の財政がひっ迫し、民間石油会社の破綻は否応なく増加する見通しである。

●備蓄施設の枯渇で「原油」は「水」に

 先週、サウジの要請によってOPECプラスの緊急会合が今週6日に行われると伝わったものの、すぐに9日へ延期となった。誰が原油価格を暴落させたのか、サウジとロシアの批判の応酬は完全には止まっておらず、各国に割り当てられる生産枠など調整が順調に進んでいないようだ。露RIAノボースチは、サウジとロシアの意見は集約されておらず、全ては9日のオンライン会合で決まると報じた。

 今週の会合には米国、英国、カナダ、ノルウェーなどが招待されている。OPECプラス以外の産油国にとって、サウジとロシアが主軸であるOPECプラスが再始動することが協力の大前提だが、サウジやロシアは米国の生産量削減を協調減産の条件として提示している。過去に例のない協調減産の実現に向けて、米国の参加と同様に、ロシアとサウジの関係改善がカギである。

 トランプ米大統領が反目するサウジとロシアを仲介したにも関わらず、OPECプラスが従来のように団結することができなければ、米国は協力を拒み、公言しているようにサウジやロシアの原油に高い関税を課すだけである。米テキサス州でシェールオイル開発を監督する鉄道委員会は一度限りの協力とし、長期的な合意はないとの認識を示しているが、米国には協調減産を拒否する口実として反トラスト法がある。

 ロシアとサウジがうまく折り合えないようだと生産枠などに関する調整は遅れ、オンライン会合がまた先送りされる可能性が浮上する。ただ、米国の介入によって石油市場が安定する機会を得たにも関わらず、無駄にするは愚の骨頂でしかない。全ての産油国は緊急会合の開催を支持している。

 世界中の備蓄施設が満たされるまであまり時間はない。備蓄能力を使い切ると、石油企業はこれまでにない大安売りによって在庫を処分するしかなくなる。水のように原油価格が安くなれば大混乱の第2幕が開く。米国のシェールオイル産業は淘汰によって生まれ変わるだろうが、大半の産油国に存在する国営石油企業はおそらく違う。あらゆる産油国にとって道は一つしかないのではないか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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