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【特集】乱高下が続く金、市場安定はパンデミックの終息待ちか <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 金の現物相場は3月に入り、2012年12月以来の高値1702.36ドルをつけた。その後は株価急落による換金売りが出て急落し、昨年11月以来の安値1452.27ドルをつけたが、米連邦準備理事会(FRB)が緊急利下げと量的緩和(QE)再開を発表すると下げ止まった。

 米FRBは2008年の金融危機時に導入したコマーシャルペーパー・ファンディング・ファシリティー(CPFF)の再導入、マーケット・ミューチュアル・ファンド(MMF)から購入した資産を担保として差し出す銀行に最大1年間の貸し出しを行うこと、各国中銀との通貨スワップ協定による流動性供給の強化を相次いで発表した。更に無制限の量的緩和が発表されたことで金は急反発し、2週間ぶりの高値1643.10ドルをつけたが、新型コロナウイルスの感染拡大で先行き懸念が強まると、再び1600ドルの節目を割り込んだ。

 新型コロナウイルスの感染が世界各国で拡大し、世界保健機関(WHO)はパンデミック(世界的な大流行)に相当するとした。各国が人の移動制限や生活必需品以外の店舗の閉鎖を発表し、失業増加に対する懸念が高まった。各国中銀は金融緩和を決定、欧州中央銀行(ECB)は7500億ユーロの緊急買い入れプログラムを発表した。

 米国では、ムニューシン米財務長官が失業率は20%まで悪化する可能性があると警告し、米議会が2兆ドルの経済対策法案を可決、トランプ米大統領はすぐに署名した。また、G20首脳も世界経済に5兆ドルを供給すると発表し、大量の資金が投入されている。

 金は米FRBの無制限の量的緩和をきっかけに換金売りから逃避買いに転じたが、株安に振れると金にも手じまい売りが出やすい。リーマンショックは米国のサブプライムローンの崩壊で住宅市場や金融市場の混乱がきっかけとなったが、今回は移動制限による消費急減やサプライチェーン(供給網)寸断で経済活動が停滞している。各国中銀の量的緩和や経済対策は企業に資金を投入し、雇用を確保するにとどまる。根本的な解決は新型コロナウイルスが終息し、経済活動が再開されるのを待つことになる。今週は3月の米雇用統計の発表があり、労働市場がどれくらい悪化するのかを確認したい。

●中国の製造業PMIが急回復もGDPなどを確認

 3月の中国の製造業購買担当者景況指数(PMI)は52.0となり、過去最低となった前月35.7から急回復した。事前予想は44.8。非製造業PMIも52.3(前月29.6)から急回復した。事前予想は42.0。製造業PMIは新型コロナウイルス対策による移動制限で都市が閉鎖され急落したが、2月下旬に移動制限が緩和され、企業活動が徐々に再開されたことで回復した。感染源となった湖北省の武漢市の封鎖も4月8日に解除される予定であり、中国の新型コロナウイルスは沈静化しつつある。

 1~2月の中国の小売売上高は前年同期比20.5%減、鉱工業生産は同13.5%減と大幅に悪化しており、17日に発表される第1四半期の国内総生産(GDP)で約2ヵ月間の都市封鎖の影響を確認したい。米コンサルタント会社の調査によると、10%縮小する見通しである。また、海外では感染拡大が続いていることから第2四半期も低調になるとみられている。

 新型コロナウイルスの感染者は31日時点、世界で80万人、死者は3万8700人となっている。米国で感染者が急増し、感染者は16万3539人、死者は2860人と中国やイタリアを抜いて世界最多となった。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、米国での死者は20万人になる恐れがあると警告した。トランプ米大統領は29日、致死率が2週間以内にピークに達する可能性があると述べ、行動自粛要請を4月30日まで延長した。イタリアではロックダウン(都市封鎖)を5月3日まで延長すると発表した。

●金ETFに投資資金が戻る

 金の内部要因では、米FRBの無制限の量的緩和をきっかけにETF(上場投信)に投資資金が戻った。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は1700ドル台をつけた3月9日の963.79トンから換金売りで20日に908.19トンまで減少後、米FRBの無制限量的緩和で投資資金が戻り、31日に967.00トンと9日を上回った。各国中銀の量的緩和再開で投資資金の流入が続くのかどうかを確認したい。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは過去最高となった2月18日時点の35万3649枚から価格急落とともに縮小。3月17日時点で28万1916枚と、手じまい売りが買い戻しを上回った。24日時点では28万8366枚の買い越し。

 金の独自要因では、新型コロナウイルスの影響で供給がひっ迫し、ニューヨーク金に大幅なプレミアムがつく場面も見られた。航空便の運航停止や、南アフリカの鉱山会社の操業停止が影響した。南アでは3月26日から4月16日までの外出制限が発表されている。

 ニューヨーク金のプレミアムは一時100ドルとなり、40年ぶりの高水準となった。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は100オンスとキロ単位の地金に加え、400オンスの地金でも受け渡し可能とすると発表した。

 一方、ロシア中央銀行は4月1日から金購入を停止すると発表した。ロシア中銀は昨年に158トン購入しており、金準備高が十分にあるため更に買い増す必要がないとの見方が出ている。ロシアの購入停止を金ETFで埋め合わせできるかどうかも焦点になりそうだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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