【特集】ゼロから始める「株探」の歩き方 ― (16)リスク管理を徹底して信用取引を活用しよう
信用残高には投資家の心理が映し出される
◆信用取引には奢ることなく謙虚に向き合う
個人投資家のみなさん、こんにちは! 株が大好き、認定テクニカルアナリストの横山利香です。
世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世界の株式市場はコロナショックによって株価下落を余儀なくされています。日経平均株価もとうとう2万円を割り込んでしまい、下降トレンドが加速しています…(2020年3月11日現在)。
信用取引では、株価の上昇局面には信用買いの取引で、株価の下落局面には信用売り(空売り)の取引を行うことで、株価の上昇局面も下落局面も収益チャンスにすることができます。さらに、信用取引は、投資家が証券会社に金銭等の担保(委託保証金)を差し入れることで自分の投資資金以上に株を売買できる証拠金取引ですから、レバレッジを効かせることも可能です。ただし、手持ちの投資資金以上に取引できる一方で、不測の事態などで株価が大きく動くような時には、レバレッジが効いている分、保証金すべてを吹き飛ばしてしまうこともあるハイリスク・ハイリターンの取引手法です。「自分は天才だ!」などと奢ることなく謙虚に、自分の得意な取引手法で信用取引を活用するようにしましょう。ちなみに、取引の仕組みについては前回(「株価の下落も上昇もチャンスにできる信用取引」)を参照ください。
今回も株探を利用して、信用取引を行う時に参考にしたい様々な情報の見方について解説していきます。
◆「追証」は保証金が目減りすることで発生する
信用取引は証拠金取引です。そのため、取引を始めるために委託保証金を担保として証券会社に差し入れなければなりません。委託保証金は現金または有価証券(現物株など)で差し入れることができ、信用取引で新規に取引する額(約定代金)の30%以上が必要になります。この委託保証金は最低の委託保証金維持率(=維持率、20%など証券会社によって決められます)を維持しなければなりません。最低の維持率を割り込むと、委託保証金を追加で入金する必要が発生します。これを「追証(おいしょう)」と言います。
どのような場合に「追証」が発生するのか考えてみましょう。たとえば、コロナショックのようなパニック的な売りで株価が暴落したとします。こうしたケースでは信用買いで買っている株に含み損が発生したり(発生した含み損は全額が保証金から差し引かれます)、委託保証金として担保にしている現物株などが値下がりすることがあります。すると、株価の値下がりで委託保証金率が下がってしまうことになり、最低の維持率を割り込んでしまった場合には、追証が発生してしまうのです。不測の事態がいつ発生するのかは誰にもわかりませんから、資金には余裕を持って、日頃から維持率を確認して追証が発生しないように注意することが大切です。ちなみに、維持率については証券会社の口座内で確認することができます。
◆制度信用には6カ月の返済期限がある
さて、実際に信用取引を行う場合、制度信用と一般信用の2種類のうちのどちらかを選んで取引を行います。制度信用では、返済(たとえば信用買いの場合には返済売り)期限が最長6カ月と決められています。制度信用で取引できる銘柄は、一定の基準を満たした制度信用銘柄(買い建てのみ可能な銘柄)と貸借銘柄(買い建てと売り建てが可能な銘柄)が取引所によって選定されています。一方、一般信用は証券会社が自由に決めることができる取引で、返済期限を無期限としている証券会社もあります。
制度信用は一般信用に比べて金利(買いの約定代金に対して生じる金利)や貸株料(株を借りるために支払う費用)を安く設定している証券会社が多いのですが、返済期限が最長6カ月と決められていて、含み損が出ていてもそれまでに決済しなければなりません。レバレッジをかけて取引しているのに、損切りをずるずると決断できないでいると含み損が増えてしまいかねません。個人的には、レバレッジをかけているのに含み損に6カ月も耐えるなんてことはできないと思っていますが、投資スタイルなどに合わせて使い分けるようにしましょう。
また、金利や貸株料とは別にコストが生じるケースがあることにも注意が必要です。信用取引の売り方は証券会社から株を借りて信用売りを行います。その際に、証券会社は足りない株式を証券金融会社から調達します。しかし、新規の売り建てが増えるなどで、証券金融会社でも株券が不足した場合、証券金融会社は手数料を支払って生保や損保、銀行などの機関投資家から株券を調達しますが、その際には、調達費用として「逆日歩(ぎゃくひぶ)」がかかります。売り方が買い方に支払わなければならないコストで、逆日歩が大きくなると負担が大きくなってしまいますから、売り方は窮地に立たされることもあります。
株探ニュース
横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)
◆信用取引には奢ることなく謙虚に向き合う
個人投資家のみなさん、こんにちは! 株が大好き、認定テクニカルアナリストの横山利香です。
世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世界の株式市場はコロナショックによって株価下落を余儀なくされています。日経平均株価もとうとう2万円を割り込んでしまい、下降トレンドが加速しています…(2020年3月11日現在)。
信用取引では、株価の上昇局面には信用買いの取引で、株価の下落局面には信用売り(空売り)の取引を行うことで、株価の上昇局面も下落局面も収益チャンスにすることができます。さらに、信用取引は、投資家が証券会社に金銭等の担保(委託保証金)を差し入れることで自分の投資資金以上に株を売買できる証拠金取引ですから、レバレッジを効かせることも可能です。ただし、手持ちの投資資金以上に取引できる一方で、不測の事態などで株価が大きく動くような時には、レバレッジが効いている分、保証金すべてを吹き飛ばしてしまうこともあるハイリスク・ハイリターンの取引手法です。「自分は天才だ!」などと奢ることなく謙虚に、自分の得意な取引手法で信用取引を活用するようにしましょう。ちなみに、取引の仕組みについては前回(「株価の下落も上昇もチャンスにできる信用取引」)を参照ください。
今回も株探を利用して、信用取引を行う時に参考にしたい様々な情報の見方について解説していきます。
◆「追証」は保証金が目減りすることで発生する
信用取引は証拠金取引です。そのため、取引を始めるために委託保証金を担保として証券会社に差し入れなければなりません。委託保証金は現金または有価証券(現物株など)で差し入れることができ、信用取引で新規に取引する額(約定代金)の30%以上が必要になります。この委託保証金は最低の委託保証金維持率(=維持率、20%など証券会社によって決められます)を維持しなければなりません。最低の維持率を割り込むと、委託保証金を追加で入金する必要が発生します。これを「追証(おいしょう)」と言います。
どのような場合に「追証」が発生するのか考えてみましょう。たとえば、コロナショックのようなパニック的な売りで株価が暴落したとします。こうしたケースでは信用買いで買っている株に含み損が発生したり(発生した含み損は全額が保証金から差し引かれます)、委託保証金として担保にしている現物株などが値下がりすることがあります。すると、株価の値下がりで委託保証金率が下がってしまうことになり、最低の維持率を割り込んでしまった場合には、追証が発生してしまうのです。不測の事態がいつ発生するのかは誰にもわかりませんから、資金には余裕を持って、日頃から維持率を確認して追証が発生しないように注意することが大切です。ちなみに、維持率については証券会社の口座内で確認することができます。
◆制度信用には6カ月の返済期限がある
さて、実際に信用取引を行う場合、制度信用と一般信用の2種類のうちのどちらかを選んで取引を行います。制度信用では、返済(たとえば信用買いの場合には返済売り)期限が最長6カ月と決められています。制度信用で取引できる銘柄は、一定の基準を満たした制度信用銘柄(買い建てのみ可能な銘柄)と貸借銘柄(買い建てと売り建てが可能な銘柄)が取引所によって選定されています。一方、一般信用は証券会社が自由に決めることができる取引で、返済期限を無期限としている証券会社もあります。
制度信用は一般信用に比べて金利(買いの約定代金に対して生じる金利)や貸株料(株を借りるために支払う費用)を安く設定している証券会社が多いのですが、返済期限が最長6カ月と決められていて、含み損が出ていてもそれまでに決済しなければなりません。レバレッジをかけて取引しているのに、損切りをずるずると決断できないでいると含み損が増えてしまいかねません。個人的には、レバレッジをかけているのに含み損に6カ月も耐えるなんてことはできないと思っていますが、投資スタイルなどに合わせて使い分けるようにしましょう。
また、金利や貸株料とは別にコストが生じるケースがあることにも注意が必要です。信用取引の売り方は証券会社から株を借りて信用売りを行います。その際に、証券会社は足りない株式を証券金融会社から調達します。しかし、新規の売り建てが増えるなどで、証券金融会社でも株券が不足した場合、証券金融会社は手数料を支払って生保や損保、銀行などの機関投資家から株券を調達しますが、その際には、調達費用として「逆日歩(ぎゃくひぶ)」がかかります。売り方が買い方に支払わなければならないコストで、逆日歩が大きくなると負担が大きくなってしまいますから、売り方は窮地に立たされることもあります。
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