【特集】まるごと未来都市、成長戦略の要衝「スーパーシティ構想」関連が輝く <株探トップ特集>
未来社会を先取りした世界最先端を行くまちづくり「スーパーシティ構想」。成長戦略の要として安倍信三首相の肝入りで取り組みが進むなか、これを担う有望銘柄群を追った。
―世界で先端技術を活用した都市設計進む、最強の布陣で巻き返す日本のビジョンとは―
第200回臨時国会が4日召集され、参院選後初の本格論戦が12月9日までの67日間にわたって行われる。消費増税に伴う国民生活への影響や日米貿易協定案などが主な議題となる見通しだが、そのほかに注目したいのが先の通常国会で廃案となった「スーパーシティ構想」を含む国家戦略特区法改正案・構造改革特区法改正案の行方だ。スーパーシティ構想を巡っては、安倍晋三首相が9月30日の国家戦略特区諮問会議で「早期実現に取り組む」と述べており、関連銘柄に関心が向かう可能性がある。
●内閣府は自治体からのアイデアを公募
スーパーシティ構想とは、2030年頃に実現される未来社会を先取りした世界最先端を行くまちづくりのこと。具体的には、自動走行・自動配送、キャッシュレス、行政手続きのワンスオンリー化(最初の手続きを行えば、その後のすべての申請・手続きは個人端末からネットで簡単に処理できること)、遠隔医療・介護、遠隔教育、自動ゴミ収集などを積極的に導入した便利で快適な最先端都市が想定されている。似た言葉である「スマートシティ」がエネルギーや交通といった個別分野での取り組み・実証であるのに対し、「スーパーシティ」は更に高い次元に高め“まるごと未来都市をつくる”ことを目指す点に違いがある。
世界各国では、人工知能(AI)やビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような都市設計の動きが急速に進んでいる。例えば、カナダのトロント市ではGoogle系列会社が行政と連携し、ありとあらゆる場所、ヒト、モノの動きをセンサーで把握し、 ビッグデータを使った都市設計が進行中。中国の杭州市ではアリババ系列会社が行政と連携し、交通違反や渋滞対策にカメラ映像のAI分析を役立てている。
日本は海外に比べて遅れている感が否めないものの、政府は成長戦略の肝となるスーパーシティ構想を掲げて巻き返しを図りたい考え。そのためには、個々の規制ごとに協議を進めなければならない現行の国家戦略特区法ではなく、一括して迅速に規制緩和をすることができる改正案の早期成立が必要となる。また、内閣府では9月からスーパーシティ構想の検討を進めている自治体などからのアイデア公募を開始。応募されたアイデアを今後の制度設計や関連施策の政策決定に生かすとともに、応募者との意見交換の場を設けることでスーパーシティ構想の実現を加速させる構えだ。
●ギフティはスーパーシティフォーラムに参加
スーパーシティについては、25年の大阪万博の会場となる夢洲をモデル地区とする案があるほか、神奈川県や埼玉県も構想実現に意欲をみせている。こうしたなか、直近では日立製作所 <6501> が大阪市とデータ利活用に関する連携協定を締結したほか、NEC <6701> はイノベーションを生む共創拠点を大阪市に新設。パナソニック <6752> は、ALSOK <2331> や積水化学工業 <4204> 、大阪ガス <9532> などと社会課題解決に向けた先進的なまちづくり「Suita サスティナブル・スマートタウン」構想を策定した。
また、6月に内閣府が主催した「スーパーシティ スマートシティフォーラム2019」に出展した清水建設 <1803> 、鹿島建設 <1812> 、楽天 <4755> 、富士通 <6702> 、IHI <7013> 、キヤノン <7751> 、リコー <7752> 、凸版印刷 <7911> 、大日本印刷 <7912> 、日本ユニシス <8056> 、三井不動産 <8801> 、NTT <9432> にも活躍の場が広がりそうで、同フォーラムには9月20日に東証マザーズに新規上場したばかりのギフティ <4449> [東証M]も参加している。
●テラスカイ、ブレインパッドなどに商機
スーパーシティは、さまざまなデータを分野横断的に収集・整理し、提供する「データ連携基盤」が軸となることから、グループ会社が内閣府の「農業データ連携基盤」構築に参画した実績のある豆蔵ホールディングス <3756> 、データ連携ミドルウェア「ASTERIA Warp」を提供するアステリア <3853> 、データ連携ツール「DCSpider」を運用するテラスカイ <3915> に注目したい。
このほか、AIエンジン「KIBIT」を活用したソリューションを手掛けるFRONTEO <2158> [東証M]、ビッグデータ活用サービスを提供するブレインパッド <3655> 、AI技術とビッグデータ解析を用いたソリューションビジネスが主力のデータセクション <3905> [東証M]、ビッグデータ分析領域におけるデータサイエンティスト集団であるALBERT <3906> [東証M]なども商機がありそうだ。
●行政支援、遠隔医療・教育、自動配送関連にも注目
これ以外では、行政向け各種支援サービスを手掛けるITbookホールディングス <1447> [東証M]、遠隔画像診断支援サービスを行うイメージ ワン <2667> [JQ]、三井住友カード(東京都港区)が展開する次世代決済プラットフォームを共同構築しているGMOペイメントゲートウェイ <3769> 、国内最大級の量と質を誇る診療データベースを持つメディカル・データ・ビジョン <3902> 、ドローン物流の社会実装を推進しているFIG <4392> 、遠隔教育に不可欠なネットワーク機器を手掛けるアライドテレシスホールディングス <6835> [東証2]などが関連銘柄として挙げられる。
株探ニュース