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【特集】金脈眠る未来の食、「ビーガン関連株」に大相場の気配 <株探トップ特集>

全世界の食肉の安定供給を担う成長分野として人工肉や乳製品代替市場が注目されている。米国に新規上場したビヨンド・ミートは大人気となり、世界的にも話題を呼んだ。

―食の在り方が変わる、ビヨンド・ミートの衝撃波が東京市場にも上陸へ―

 5G革命並みに、食の在り方が変わってしまう可能性がある。いま、肉を含めた農畜産商品の代替品産業に注目が集まっている。全世界の食肉の安定供給を担う成長分野として期待されるのがクリーンミート(人工肉)や乳製品代替品市場だ。現在、食肉産業は金額ベースでは世界で年間7500億ドル(約80兆円)の市場規模と推定されているが、2040年に人間が消費する肉のほとんどは、容器のなかで培養されるか、肉と同じ見た目と味の植物性製品にとって代わるであろうと英紙「ガーディアン」が指摘している。肉食を減らそうという世界的な流れがあることは間違いない。急増するビーガンが欧米中心に巻き起こしたブームがいずれ日本も含めたアジアを席巻し定着する可能性が高い。関連銘柄にスポットライトを当てた。

●ビーガン急増中で市場からも熱い視線

 キーワードは「ビーガン」。一般的にベジタリアンが肉や魚を食べないことに対して、動物の肉、卵・乳製品やはちみつを一切口にしない人たちを指す。米国では09年時点でビーガンが人口の1%だった。しかし、13年では同2.5%、17年には同6%とここ数年間でビーガン人口が6倍に増え、都市部においてはかなり多くのレストランにベジタリアン・ビーガンメニューが導入されている。イギリスでは17年現在のベジタリアン人口は全国民の約3%にすぎないが、首都ロンドンには80近くのビーガン専門レストランがあることから、菜食の浸透率の高さがうかがえる。一方、日本では欧米と違う食文化があり、健康に対する危機感や環境問題への意識の違いから現在もビーガン食は浸透していない。ただ、世界各国でビーガン人口が急増するなか、観光立国を目指す日本においてもいずれ飲食店などでそうした客層への対応が迫られることが予想される。

●人工肉ハンバーガーの立役者となる三井物産

 総合商社で三井グループの中核である三井物産 <8031> の20年3月期最終利益は、前期比8.6%増の4500億円と8期ぶりに過去最高益を更新する見通しとなっている。19年5月、米国のベンチャー企業で人工肉の製造・販売を手掛けるビヨンド・ミートが上場し初日株価は2倍以上となった。更に6月10日には、第1四半期の業績の急拡大を受け、株価がIPO初日の2.6倍と更に急上昇した。三井物産は今年上場したビヨンド・ミートに出資している(比率は未公表)ことですでに恩恵を受けているが、今後日本での販売に向けて準備をしている。健康志向の高まりや、東京五輪を控え訪日外国人観光客の増大を背景に、ベジタリアンへの配慮から日本でも大きな関心を呼ぶことは間違いなさそうだ。

●乳製品代替品市場の急拡大で恩恵を受ける銘柄群

 世界的乳糖不耐症や菜食者の増加により乳製品代替品市場はアジア地域を中心に急拡大している。定番の豆乳に加え、アーモンドミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、オーツミルクがチーズ、ヨーグルト、バター、菓子などを代替する。世界各国の市場調査レポートを扱うグローバルインフォメーションによると、18年の同市場は137億6000万ドルとみられ、19年から向こう5年間において年率平均約9.9%増で推移すると推測される。18年にはアジア太平洋地域が全世界の45%を占め、市場として最大とされる。以下に関連銘柄を厳選した。

 ケンコーマヨネーズ <2915> は業務用マヨネーズ大手。大豆ミートを使用したメニューを外食店など業務用に投入し、キーマカレーやボロネーゼとして訪日客が利用するベジタリアンへ対応した食材として販売している。足もとインバウンド中食の市場拡大により業績が好調で、20年3月期も売上高が前期比2.7%増の760億円、営業利益が同5.9%増の33億円と増収増益基調にある。

 大塚ホールディングス <4578> 傘下の大塚食品では大豆をベースにしたハンバーグの製品化に成功している。6月18日よりミートシリーズの第2弾として、ハンバーグに続き「ゼロミート ソーセージタイプ」を関東エリア中心に先行発売しラインアップを強化している。また、18年に本場インドへ動物性原料を使わない「日本式カレー」の「ボンカレー」を輸出しており、注目されている。

 不二製油グループ本社 <2607> は油脂大手でありながら、製油や製菓材と並び、大豆関連事業に積極的に進出している。大豆ミートをはじめ、独自の分離技術により豆乳クリーム、豆乳チーズや植物性素材をベースとした食品の展開を強化し、女性層を中心に話題となっている。1月には北米において、業務チョコレート世界3位の米ブロマーチョコレートカンパニーを傘下に収め、20年3月には2期ぶりに最高益を更新することが見込まれる。

 ユーグレナ <2931> はミドリムシを活用した健康食品や化粧品の製造・販売を手がける。ミドリムシは、藻の一種であり、ベジタリアンが不足しがちなビタミンB12などの栄養素が豊富に含まれており、今後ますます注目されることとなりそうだ。業績面では、19年9月期は、連結経常損益が63億7300万円の赤字(前期は10億9600万円の赤字)の予想と損失額は拡大する見込み。ただ、内訳をみると中間期時点で63億5600万円の赤字を計上しており、下期は1700万円の赤字予想と業績は大幅に改善する見通しにある。

 オイシックス・ラ・大地 <3182> [東証M]は、安心安全な農産品や加工食品、ミールキットなどの食品宅配を展開する。4月、アメリカ本土48州を対象に毎週ビーガン食のミールキット宅配を展開するスリーライムズ(マサチューセッツ州)の株式を100%取得し、子会社化することを発表している。20年3月期はのれん消却などの影響で、営業利益は前期比4.9%減の22億円を計画している。オイシックス・ラ・大地は18年2月に買収した同業のらでぃっしゅぼーやの業績をいち早く黒字化させている。スリーライムズは18年12月期の最終損益が442万ドルの赤字だったが、今回の買収でも同社の顧客サービスのノウハウを生かし収益力を向上させることが期待されている。(編集部訂正:記載したスリーライムズの最終損益の数値に誤りがありましたので訂正いたしました。【誤】442億ドル→【正】442万ドル)

 ヱスビー食品 <2805> [東証2]は動物性の原料を一切使用しないカレーを開発した。18年に第3回「日本ベジタリアンアワード」を受賞し、今後も注目される。

 江崎グリコ <2206> は豆乳やトウモロコシ由来の食物繊維といった素材で糖質やカロリーをコントロールしたクッキーなどの開発・製造を手掛ける。「SUNAO」シリーズを開発し、「おやつを我慢する」のではなく、「自分の欲に素直になっておやつ時間をギルトフリー(罪悪感なし)にする」需要をいち早く捉えた菓子メーカーとして注目を集めている。

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