市場ニュース

戻る
 

【特集】仮想通貨「復活」の鐘が鳴る! フェイスブック「リブラ」登場の衝撃 <株探トップ特集>

米フェイスブックのユーザーは約27億人。その一部を取り込むだけで、仮想通貨「リブラ」による世界的な巨大経済圏が誕生する。リブラは、足もとのビットコイン価格の上昇要因にもなった。

―2020年サービス開始へ、金融業界に巻き起こる論争の先に見えるもの―

 低迷を続けていた仮想通貨(暗号資産)市場が、にわかに活気づき始めた。2017年末にかけた価格急騰後に一転し暴落した ビットコイン価格は、今春以降、急反騰に転じ「仮想通貨復活」へと期待が膨らんでいる。とりわけ、市場の関心を一身に集めているのが、米フェイスブックによる仮想通貨「Libra(リブラ)」の登場だ。投機性の高いビットコインと異なり、リブラは価格の安定が図られ送金や決済での利用が見込める。その潜在的な成長性は計り知れないものの、懸念要因も少なくはなく金融業界に論争が巻き起こっている。リブラ登場の意味とは何か。そして、これから仮想通貨市場はどう動くのか。

■ビットコインは昨年末安値から4倍強に急騰、半減期による需給好転期待も

 17年を中心に一大ブームを巻き起こした仮想通貨だが、代表的な通貨であるビットコイン価格は17年12月の1ビットコイン=237万円前後をピークに暴落。18年12月には35万円前後と高値から8割強下落した。しかし、今年の春以降、ビットコインは息を吹き返す。6月には149万円台と昨年末の安値から4倍強に急騰し、市場関係者を驚かせた。

 この急騰の背景には何があるのか。市場で囁かれているのは、「米国の利下げ期待で金とともにビットコインに投機資金が流入した」「ビットコイン先物に対する期待が膨らんだ」「米アマゾン・ドットコムによるビットコイン決済への期待が強まった」「マイニング報酬が半分になる半減期が来年5月にも到来し、需給が好転する」――などの思惑だ。そして、フェイスブックが先月18日に発表した仮想通貨「リブラ」への期待がビットコイン価格を一段と押し上げる要因に働いた。

■リブラの価格安定性に高評価、新たな巨大経済圏構築の可能性

 リブラは、最新のブロックチェーン技術を使った仮想通貨であり、短期国債などの資産を裏付けにドルやユーロ、円など主要通貨のバスケットと連動させることで極力価値を安定させる仕組みがとられている。価格変動が大きく投機性の強いビットコインと異なる「ステーブル(安定)コイン」としての性格を持つため、送金や決済に向いた仮想通貨とみられている。

 フェイスブックが抱えるユーザーは世界で27億人にのぼると言われ、そのユーザーの一定数を取り込むだけで、たちまち新たに巨大な経済圏が作られることになる。とりわけ、発展途上国の銀行口座を保有しないユーザーにとっては、決済や送金などの金融サービスを享受できるメリットは大きい。

 リブラには、クレジットカード大手のビザやマスターカード、ライドシェア最大手のウーバーテクノロジーズなどが参加しており、使い勝手の向上への期待も大きい。世界中に瞬時に低コストで送金や決済を可能とするリブラは、金融市場を一変させる可能性も秘めている。

■資金洗浄やデータ漏洩などに懸念、金融当局不在に不安感も

 ただ、リブラに対する懸念も少なくない。その一つは「犯罪資金の洗浄などマネーロンダリングに使われる」というものだ。また、「信頼性が弱い国の通貨からはリブラへの資金逃避が起こるような事態」も想定される。さらに、プライバシー漏洩(ろうえい)が問題視されたフェイスブックへの不信感は強く、「金融取引のデータが漏れた場合の悪影響は無視できない」との声が上がっている。フェイスブックが信用不安に陥ったりした際の影響も警戒され、中央銀行や管轄・監督する規制当局が存在しないリブラにどう対処するかが課題となっている。

 実際、主要国の金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)などは、リブラに厳重な審査を求めている。このため、リブラは20年前半のサービス開始を目指しているが、実際にスタートするか疑問視する見方もある。

■仮想通貨の革新性を再評価、中長期での市場価値の上昇要因に

 ビットコイン反騰の背景にはリブラへの期待も含まれている。それだけに、今後の仮想通貨市場をみるうえでリブラを巡る議論の行方は注視せざるを得ない。マネックス仮想通貨研究所の大槻奈那所長は「金融当局などの警戒感が強いことは確かだ。しかし、例えばリブラが米国で否認されても、アジアなどのリブラを認めてくれる国や地域にサービス提供の場所を移動させてしまうことはできる。その場合、米国はリブラによる税収を失うことになってしまうだろう。また、フェイスブックがやらなくても、別のプラットフォーマーが同様の仮想通貨を発行することもあり得る」と指摘。リブラのような仮想通貨が登場する流れを後退させることは難しい、という見方だ。

 また、足もとのビットコイン価格は再度、軟化している。「14年の仮想通貨取引所マウントゴックスの破綻後、仮想通貨価格は、やはり高値から8割近く下落し、2年をかけて反騰局面に入った。今回の暴落後の下落率は十分だが、調整期間は1年強で反発状態となった。足もとの上昇はややスピード違反かも知れない」と大槻氏は言う。とは言え、仮想通貨市場にリブラのようなイノベーティブな通貨が登場することを再認識させた意味は大きい。リブラの登場は、中長期的にはビットコイン価格が17年末の最高値更新を目指すことへの期待感を膨らませる要因となっていることは確かだ。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均