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【特集】LINEに続きソニーも参戦“AIスピーカー”、狙い目「関連銘柄」は <株探トップ特集>

AMI <日足> 「株探」多機能チャートより

―市場規模急拡大の予想、音声認識技術など展開に期待―

 AI(人工知能)スピーカーを巡る動きが加速している。先行するアマゾン、グーグルなど米国勢を横目に、10月にLINE <3938> が「Clova WAVE(クローバウェーブ)」を発売、今月9日にはソニー <6758> もAIスピーカーを投入する予定にあり、年末商戦も相まってAIスピーカーを取り巻く状況は一層過熱感を帯びている。急拡大するAIスピーカー市場、現状と関連銘柄を追った。

●市場急拡大で一気にヒートアップ

 AIスピーカーが注目を集めている。AIを活用した製品が、さまざまなシーンで脚光を浴びるなか、身近な生活にも広がりをみせてきた。人間が話しかけるだけで音楽再生はもちろん、ニュースや天気などを聞けば最新情報を音声で教えてくれる。それだけではない、「テレビをつけて」「照明を消して」など対応機器を音声で操作することが可能となり、かつて想像した未来がそこにはあるといってもよいだろう。

 株式市場では、IoT(モノのインターネット)時代の到来をハヤす相場が継続している。ただ、その世界観は身近な生活場面においては漠然としたものだった。それを具現化する急先鋒のひとつがAIスピーカーの登場で、関連銘柄もスポットライトが当たっている。米国では既に大ヒット商品になっているが、日本においても10月にグーグルやLINEがAIスピーカーを相次いで投入、さらにアマゾンが「Amazon Echo(アマゾン エコー)」を11月15日に発売しており一気にヒートアップしてきた。

 調査会社の富士経済では、AIスピーカーの国内市場について「製品投入が本格化していることから(17年度の)市場は20万台、18億円が見込まれる。2018年度以降も電機メーカーやオーディオ機器メーカーによる製品開発と市場投入が積極的に進むとみられ、市場拡大が期待される」と指摘。18年度の市場規模は69億円、19年度が117億円と急拡大し、25年度には17年度見込比9.2倍となる165億円に成長すると分析している。

●ソニー、360度サウンドで攻勢

 年末商戦が佳境入りするなか、ソニーがGoogleアシスタント搭載の「LF-S50G」を9日から発売を開始する。既に10月26日から予約を開始しているが、同社では「予約状況については好調だ」(広報)という。また「特に音響についてこだわりをもって設計した。今回の機種については360度サウンドを謳っており、部屋のどの方向に関しても、音を放射することができるようなスピーカーシステムを搭載している。スマートスピーカー(AIスピーカー)を使えば、『だれだれの、なんとかいう曲を流して』と言えば、すぐに音楽を検索することもできる。そのような形で音楽を聴く機会が増えると考えており、そういった点でも音質にもこだわっている」(同)。ソニーの株価は、ここ若干の調整を入れてはいるが高値圏で推移する展開で、AIスピーカー発売が目前に迫り株価を刺激する可能性もある。

 前述の富士経済でも音響面の重要性を指摘しており、「従来のオーディオ機器としての利用に加え、家電操作やオンラインサービスなどの機能が利用可能になることから、ユーザーのすそ野拡大が期待される。オーディオ機器としては、これまでスマートフォンとアクティブスピーカーをワイヤレス接続して音楽鑑賞に利用していたユーザーからの切り替えも進むとみられる」と分析している。

●上場来高値を窺うLINE

 こうした状況下、なにかと話題の多いのがLINEの存在だ。AIスピーカーについては、株式市場でも早くから物色テーマの一角として注目されていたが、10月下旬から同社が「Clova WAVE」のテレビCMを開始すると、一気に注目度がアップ。また11月16日、「Clova WAVE」を17日からビックカメラ <3048> など家電量販店で発売すると発表、これが株価のさらなる追い風になった。これまではネット経由の販売だったが、実店舗で販売することでAIスピーカーを実際に消費者が手に触れることが可能となり、販売促進につながるとの見方からだ。現在、LINEは4800円近辺で推移、16年9月につけた上場来高値5230円を窺う展開となっている。

●オンキヨー、フュートレック、ソケッツにも注目

 販売合戦が激しさを増すなか、音声認識などAIスピーカーを巡る関連銘柄の株価も刺激している。

 オンキヨー <6628> [JQ]は11月17日、AIスピーカー向けに音声認識 を向上させるマイク振動抑制技術を開発したと発表。大音量で音楽を再生している際に、小さな声で発話しても音声認識を可能にするという優れものだ。同社では、この技術に関して特許出願しているほか、同月14日に発表したAI対応スマートスピーカー「G3」にも採用している。株価は、ここ軟調な展開を強いられているが、材料性も豊富で目を配っておきたい銘柄のひとつだ。

 ソケッツ <3634> [東証M]はLINEの音楽サービス「LINE MUSIC」に同社が保有するデータベースを活用した、ユーザー個人ごとに最適化した選曲を行うパーソナライズ、レコメンドサービスを提供しているほか、AIスピーカーへの注力を方針として打ち出しており、今後の展開から目が離せない。また、AIスピーカーなど発話の音声をクリアにする技術で先行するフュートレック <2468> [東証2]にも注目。

●AMIは音声認識技術で輝きを増す

 AIスピーカーの中核技術ともいえる音声認識技術で、ここ輝きを増すのがアドバンスト・メディア <3773> [東証M]だ。株価も好調、11月29日には1469円まで買われ年初来高値を更新している。11月8日に同社傘下のグラモ(東京都豊島区)の「iRemocon(アイリモコン)が、アマゾン提供の音声アシスタント「アマゾン アレクサ」への対応を開始と発表。これにより「アマゾン エコー」に話しかけるだけでエアコンや照明、テレビのコントロールすることが可能になる。

 同社では「まだ各社とも試行錯誤の段階だと思う。当然期待感はあるが、AIスピーカーの広がりとともに、徐々に伸びていければよいと思っている。家電をコントロールするのにいままではスマホでの操作だったが、手で操作するよりも音声でコントロールするという方が自然であり、利便性と言う面で相性がよいのではないか」(広報グループ)。またアイリモコンについては「もともと既存で販売していたものを『アマゾン エコー』に対応した。グラモは、既にレオパレス21 <8848> など各社とさまざまな取り組みを行っておりアイリモコン全体でみると好調だ」(同)という。同社は、11月6日に18年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結決算を発表。売上高が前年同期比56.1%増の14億2400万円と大幅増収を確保、営業損益は前年同期2億6900万円の赤字から9400万円の黒字、最終損益も同5億4800万円の赤字から1億2200万円の黒字となった。

●一気呵成の普及機入りも

 ある関係者は「AIスピーカーを買って、『それでは、なにをするのか』ということになる。もちろんラジオを聞いたり音楽を聴いたりすると思うが、そこから一歩出て、音声でエアコンをつけたり消したする状況が生まれる。“おはよう”といったら電気やテレビがつき、よりIoTが身近になる。ようやく、IoT社会の入り口に立ったわけで、それをAIスピーカーと連携する関連機器が牽引することになる」という。今年が、わが国におけるAIスピーカー元年とすれば、来年は一気呵成の普及期入りとなる可能性もある。

 AIスピーカーは、日本国内では現在、アマゾンとグーグル、そしてLINE三つ巴の争いとなっているが、9日にはソニーも満を持して参戦する。さらに、今後も続々と参入することが予想され、目が離せない状況が当面続きそうだ。

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