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【特集】馬渕治好氏【強気シナリオに死角は? 師走相場の急所を読む】(1) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―“年末高”に群がる投資家の思惑、その先に見えるもの―

 東京株式市場は前週末から師走相場入り。“月替わりの初日は日経平均株価が上昇する”という鉄板アノマリーは今回も揺るがず、18ヵ月連続の上昇を記録したが、残念ながら週明けはその勢いを持続することができなかった。市場で年末高を唱える声は多いが、その見通しに死角はないのか。長きにわたりマーケットに携わり、豊富な経験に支えられた相場観で定評のあるベテラン市場関係者2人に意見を聞いた。

●「年末にかけ米株主導で下値を探る展開に」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 1日の東京株式市場は日経平均が4日ぶり反落となった。このまま下値を試す展開に移行するかどうかは不明ながら、年末にかけて徐々に軟化傾向をたどるとみている。日本株市場にはファンダメンタルズ面で懸念される売り材料は今のところ見当たらないが、世界株高を主導した米国株が目先調整トレンドに入る可能性が高まっており、その余波で売り圧力にさらされそうだ。

 まず、米国では米トランプ大統領と議会の間で税制改革法案を巡る駆け引きが繰り広げられていたが、2日に米上院が2019年から35%の法人税率を20%に下げることで可決したことは、一般的にはポジティブに受け止められている。ただ、これについては18年からとする下院との間で開始時期にギャップが生じてしまったほか、減税実施そのものについて相場は既に事前に織り込みが進んでいる。

 これに対して、ほとんど織り込まれてこなかったのがロシアゲート問題だ。訴追されたフリン前米大統領補佐官が虚偽の供述を認めたことで1日の米株市場はNYダウが一時350ドルの急落をみせた。その後下げ幅を縮小したとはいえ、火種はくすぶっており、このロシアゲート問題の再燃は今後も相場の重荷となりそうだ。

 米国株市場はPERなど指標面からも割高感が強い。これまではモメンタム相場の色が強く、“上がるから買う、買うから上がる”という形で上値を追い続けてきたが、需給の歯車はいつ反転してもおかしくない状況にある。ロシアゲート問題を契機に米株が売り優勢に傾けば、米ドル安も誘発することから、東京市場でも向かい風が強まることが予想される。

 日経平均は、ここから仮に切り返しに転じたとしても2万3500円前後が当面の上限ラインとなろう。一方、調整局面に移行した場合、意外に下値は深い。ここまで海外短期筋の先物主導の買いで上昇してきたが、その反動が売り圧力として顕在化した際には、年内に2万円近辺への急な調整も視野に入る。

 下値リスクが意識されるなか、相対的に強みを発揮するのは内需系の好業績株だ。中小型材料株の局地戦が想定されるほか、大型株では業績拡大基調でなおかつ安定感のある花王 <4452> やイオン <8267> などが注目される。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程終了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「勝率9割の投資セオリーは存在するか」(東洋経済新報社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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