【通貨】為替週間見通し:やや強含みか、米税制改革実現や12月利上げへの期待残る
ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより
■ドル反転、米税制改革法案可決への期待高まる
先週のドル・円は反転。北朝鮮による弾道ミサイル発射や中国本土株安を嫌ってリスク回避のドル売り・円買いが活発となり、ドル・円は一時111円を割り込んだ。しかしながら、パウエル次期米FRB議長は上院での承認公聴会で12月の利上げを支持する方針を示したことや、米上院での税制改革法案の可決が期待されたことから、ドルを買い戻す動きが急速に広がった。上院での可決に必要となる票を獲得したとの報道を好感してドル・円は1日のニューヨーク市場で112円87銭まで買われる場面があった。
しかしながら、前米大統領補佐官(国家安全保障担当)のマイケル・フリン被告は、昨年の米大統領選へのロシアの関与について捜査当局に協力することに同意したことから米国株が急落し、リスク回避的なドル売り・円買いが広がったことから、ドル・円は一時111円41銭まで反落した。ただ、税制改革法案の採決が2日までに予想されていることから、リスク回避のドル売り・円買いは一巡。ドル・円は112円台を回復し、112円20銭でこの週の取引を終えた。先週のドル・円の取引レンジは110円84銭から112円87銭となった。ドル・円の取引レンジ:110円84銭-112円87銭。
■やや強含みか、米税制改革実現や12月利上げへの期待残る
今週のドル・円はやや強含みか。引き続き米税制改正法案の審議の行方が焦点となりそうだ。4日までに上院本会議で税制改革法案を採決し、可決された後に両院で法案を一本化する作業に入ることになる。8日に暫定予算が期限切れとなるため、議会は8日までに予算案を承認しなければならないが、再度暫定予算を組むことで政府機関閉鎖などのリスクは回避されるとみられる。
両院の法案は、法人減税の実施時期以外にも違いがあるものの、水面下での調整は行われている。両院での調整は難航するとの見方は少なくないが、クリスマスまでの法案可決・成立への期待は後退していない。トランプ政権による経済政策の進展への期待は再び高まり、株高・ドル高の相場展開となる可能性がある。
ただし、トランプ政権で安全保障担当の大統領補佐官を務めていたフリン前大統領補佐官が米連邦捜査局(FBI)への虚偽説明で訴追されたことから、トランプ政権に対する信頼感は大幅に低下し、政権運営にも悪影響を及ぼすとの懸念が広がっている。暫定予算の成立や税制改革法案の一本化に向けた両院での調整作業がこの問題の影響を強く受けるとは言い切れないものの、政治不安の高まりを警戒してリスク回避的な取引が拡大する可能性は残されている。
なお、今週発表される経済指標では、8日発表予定の11月米雇用統計が最も注目されているようだ。市場予想を大幅に下回る内容でなければ、今月12-13日に開催する連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げが決定されるとみられており、日米金利差の拡大を意識したドル買いが入りやすい見通し。
【米・11月ISM非製造業景況指数】(5日発表予定)
5日発表の米11月ISM非製造業景況指数。10月の60.1を下回る59.0と予想されている。7-9月期国内総生産(GDP)改定値は予想を上回る上方修正となっており、ISM非製造業景況指数はそれを裏付ける内容であることが期待される。
【米・11月雇用統計】(8日発表予定)
8日発表の米11月雇用統計は、失業率が4.1%、非農業部門雇用者数は前月比+21.0万人、平均時給は前月比+0.3%と予想されている。いずれも想定を大きく下回らなければ、12月利上げ観測は後退しない見通し。
予想レンジ:111円50銭-114円50銭
《FA》
提供:フィスコ