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【特集】原油相場に“乱気流気配”―慢心の産油国、OPEC事前協議は不調か <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

―焦点は延長期間、協調減産の見えない出口戦略“波乱の種”に―

●産油国を統率しきれぬサウジ、ロシア

 今週30日に石油輸出国機構(OPEC)総会が行われる。世界的な過剰在庫が減少に向かっているものの、まだ十分に在庫が減少しておらず、道半ばであることから、OPEC加盟国とロシアなどの非加盟国は協調減産期間の延長を協議する。今年5月のOPEC総会後は、日量で約180万バレルの減産規模が不十分であるとの認識が強かったことから失望売りが続いたが、現在は減産規模に疑問を投げかける市場参加者はほとんど見当たらない。焦点は協調減産の延長期間である。

 現行の協調減産は2018年3月末で終了する。ロシアのプーチン大統領が9ヵ月間延長し、2018年末まで実施するのも選択肢の一つであるとしたことで、9ヵ月間の延長案が事前協議の軸となってきたが、コンセンサスは固まっていない。サウジアラビアのムハンマド皇太子がプーチン大統領の案を支持する方針を示唆したものの、意見調整は進まなかった。6ヵ月、あるいは3ヵ月で十分との提案があるようだ。協調減産を主導しているロシアやサウジの統率力に限界が見え隠れするほか、敵対関係にあるサウジとイランがレバノンやカタール、イエメンで代理戦争を繰り広げており、中東の亀裂が大きくなっていることも合意形成を難しくしている。

 OPEC月報によると、9月の経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油在庫は29億8,500万バレルと、過去5年平均を1億5,400万バレル上回る水準まで減少した。この平均値への到達が容易であるか、そうでないのかという点を巡っても、産油国の認識が割れていると思われる。達成の可能性を評価するにあたって、米国のシェールオイルの増産動向や世界の石油需要など様々な要因を考慮する必要があるものの、見通しは見通しであり、合意形成の土台としては不安定である。

●出口戦略を軽んじる産油国の危うさ

 延長する期間次第では、協調減産終了後の出口戦略に関する議論も必要である。例えば、来年6月末で協調減産を終了する場合、来年後半から各国が自由に増産するなら原油価格は沈み、過剰在庫相場へ逆戻りするリスクがある。このリスクを回避するために出口戦略が必要となる。出口戦略ができ上がらない限り、協調減産を終えることはできない。現行の協調減産のもとで、過剰在庫が十分に縮小し、原油価格が十分に回復しても、OPECを中心とした産油国の協調行動に当面終わりはない。

 減産期間の延長議論を突き詰めると、出口戦略にたどり着く。しかし、産油国の当局者の発言からは出口戦略に関する示唆が全く得られない。出口戦略の策定に困難が伴うとしても、議論すらまだ始まっていないのだろうか。過剰在庫が減少し原油価格が上昇していることで、一部の産油国には慢心が生まれている可能性があり、雑な話し合いしか行われていないのではないかと疑う。産油国の歳入に直結するOPEC総会が中途半端なものであるはずはないが、今のところこの懸念を払拭してくれる手がかりはない。

 5月のOPEC総会と同じ手続きならば、総会の前日に行われる共同閣僚監視委員会(JMMC)で、総会での合意内容が勧告される。JMMCにかけて原油相場では乱気流が発生しそうだ。出口戦略に関する言及がなく、産油国の楽観性や慢心が印象づけられると、なおさら値動きが激しくなるのではないか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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