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【特集】“OPECの野望”、ロシア含めた原油「異次元カルテル」の虚実 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口英司

―史上最大IPO・サウジアラムコ上場控え価格押し上げ図るサウジの目指すもの―

●進まぬ原油過剰在庫の解消と価格回復

 昨年からニューヨークWTI原油は50ドルの節目を挟んだ展開が続いている。石油輸出国機構(OPEC)を中心とした産油国が生産量を抑制する取り組みを年初から続けている一方で、米国ではシェールオイルの増産が続き、産油国が目指す過剰在庫の解消と原油価格の回復は順調に進まない。消費する側にとっては価格の低位安定は喜ばしい限りだが、産油国は現行の価格水準より一段の上昇を望んでいる。

 OPEC加盟国であるリビアが協調減産を除外され、増産していることも原油価格が回復しない一因である。2011年から2014年半ば頃、ニューヨーク原油価格は100ドルを上回って推移する時期があったことを踏まえると、現在の水準はその半分程度でしかない。サウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコのIPOを控え、サウジ政府にとって原油価格の押し上げは史上最大規模のIPO成功に不可欠である。サウジ政府の試算によると、サウジアラムコの時価総額は2兆ドルにのぼるという。

 結論から述べると、現在の協調減産の枠組みでは原油価格をさらに押し上げることは難しい。協調減産を行う期限が設けられているためである。現在の取り決めでは、2018年3月まで協調減産が行われる予定だが、この期限が終わると産油国は再び増産体制に移行することが予想される。足元の取り組みが奏功し、過剰在庫が解消され、原油価格が回復するとしても、また供給過剰になると懸念される限り、原油価格の回復はおそらく望めない。来月30日に開催予定のOPEC総会で減産期間の再延長などが議論される公算だ。しかし、OPEC総会に関する思惑がいくら値動きを活気づけても、協調減産が期間限定的であるならば、原油価格の上昇は見通せない。

●原油価格の鍵握る“新生OPEC構想”

 今後、ロシアやサウジアラビアなどを中心とした産油国が原油価格をコントロールできるかどうかは、OPECの将来像にかかっている。OPEC加盟国とロシアを含めた非加盟国が一体となって減産している現在の枠組みを叩き台として、産油国の新たなつながりを作り出していかなければならない。バルキンドOPEC事務局長が語っていたカルテルの強化である。OPEC加盟国と減産協力国の原油生産量は世界の50%超を占め、価格影響力は非常に強い。OPECが生まれ変わるための土台として十分である。

 主要産油国にとって現在の協調減産の欠陥は問題ではなく、協調減産の期間や減産規模は表面的な話題でしかない。新生OPEC構想に関する協議の進捗具合によっては、エネルギー市場は新たな時代を迎える。ただ、現時点でその足音はほとんど聞こえていない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口英司)

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