【特集】帰ってきたトランプラリー、“米国結束”がNYダウを押し上げる <株探トップ特集>
NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより
―復活“トランプ相場”、高まる米国株「一段高」期待の果て―
米株式市場の上昇が止まらない。NYダウやナスダック指数が最高値に沸いている。米国の追加利上げ観測や北朝鮮問題、それにトランプ政権の行方など、不安材料を尻目に米国株は青空圏を快走している。とりわけ、米税制改革に向けた期待は強く、その効果で米国経済は一段と活性化するとの観測も浮上する。高値不安も囁かれるなか、米国株には年末に向け一段の上昇期待が強まっている。
●米ISM指数は13年ぶり高水準、法人税20%への引き下げに現実味
2日の米株式市場は、ダウ工業株30種平均が前日比152ドル51セント高の2万2557ドル60セントと急伸し、最高値を更新した。ナスダック総合株価指数やS&P500種株価指数も上昇し、3指数がそろって最高値を更新した。同日発表された9月の米ISM製造業景況感指数が60.8と13年ぶりの高水準となったことも、米国市場を押し上げる要因に働いた。
足もとの景況感の良さはもちろんだが、直近の米国株上昇の牽引役となったのは、前月下旬にトランプ米政権が大規模な税制改革案を発表したことだ。これは、レーガン政権以来、約30年ぶりの大規模な税制改革とも評されるもの。具体的には、法人税率は従来の35%から20%に引き下げる。また、富裕層や中間層への減税、米企業の過去の保留収益を海外から還流する際の課税減額も盛り込まれた。市場には「法人税の軽減は米企業収益の増加に直結する」と期待する声や「利益の本国還流(レパトリ)によるドル高・円安が進む」と予想する見方が多い。
●12月に米税制改革案の成立も、インフラ投資の始動にも期待感
ただ、大型減税に伴う歳入減による米財政赤字拡大観測で米長期金利が上昇することを懸念する声も出ている。果たして、税制改革案は成立するのか。第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは「富裕層への減税幅を縮小するなど修正を加える形で、最終的に法案が成立することは期待していいと思う」と指摘する。市場には、早ければ12月、遅くても年明けに税制改革法が成立するとの期待も出ている。
外為どっとコム総研の神田卓也調査部長も、今回の税制改革案に対して「トランプ政権が共和党首脳と合意できた点は大きい」と指摘。年内の追加利上げも視野に、早ければ10月中にも1ドル=115円台へ円安が進行する可能性をみている。また、第一生命の桂畑氏は「今後、インフラ投資への期待が出てきてもおかしくない」という。「トランプ政権と民主党の関係改善が前提だが、本来インフラ投資は税制改革より合意しやすい分野だ」ともみている。
●バノン氏更迭はプラス、北朝鮮・ハリケーンで米国結束も
フィリップ証券の庵原浩樹リサーチ部長は「足もとの米国株高は昨年11月からのトランプ相場が続いていることを示している」という。今春のオバマケア代替法案が共和党内の亀裂で頓挫したことから、トランプ政権の政策への期待は急速にしぼんだ。しかし、米大統領選から1年が近づくとともにトランプ政権への期待は再度膨らんでいる。「北朝鮮問題と大型ハリケーン襲来が米国の結束を高める要因に働いた。また、側近で参謀役だったスティーブ・バノン氏を更迭したことも、トランプ政権をひとつにまとめる要因となった」と庵原氏は指摘する。「分断」されたアメリカが再度、「統合」へと動く兆しが見えてきたというわけだ。今後、本格化する第3四半期の米決算発表や北朝鮮問題の行方に左右されるものの、「環境に大きな変化がなければ年末のNYダウは2万3000ドルも期待できる」(桂畑氏)との声もある。
●インフラ関連、半導体、金融株などに再上昇機運強まる
上昇基調を強める米株式市場だが、小型株で構成されるラッセル2000が最高値を更新している。米ホームセンター大手のホーム・デポのような内需株が上昇基調を強めているわけだが、これは「米税制改革による減税で個人消費が盛り上がることを先取りする動き」(庵原氏)とみられている。この内需の盛り上がりは、米国の大手銀行など金融株にもプラスに働く。直近の米アップル株の上値は重いが、海外で蓄積した利益の米国還流による自社株買いも期待できるほか、iPhone Xの供給不足が徐々に解消されれば、再度上昇が見込める。また、米マイクロン・テクノロジーのような半導体関連株も上昇基調を強めている。
米株高はもちろん日本株へのプラス要因に働く。米金融株高期待で三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 、半導体関連の東京エレクトロン <8035> 、アップル関連の村田製作所 <6981> 、インフラ投資関連のコマツ <6301> や信越化学工業 <4063> などを再度マークしたい。
株探ニュース