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【特集】乱気流突入“原油相場”、サウジ皇太子が求める「原油高」 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

―サウジ・ロシア減産合意観測、王子11人逮捕――見え隠れする権力強化の動き―

●規模拡大を伴わぬ減産延長に潜む陥穽

 ニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が年初来高値を更新した。今月30日に行われる石油輸出国機構(OPEC)を中心とした総会で、2018年末までの協調減産の延長が合意に至るとの観測が強まったことが背景にある。ロシアのプーチン大統領が来年末までの協調減産期間の延長を提案し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子がこれを支持すると示唆した。

 協調減産の要である両国が協調減産期間の延長を支持していることで、この提案は30日の総会で合意に至る可能性が高い。総会の前日に行われる共同閣僚監視委員会(JMMC)で、この延長案が勧告されると想定されることから、実質的には29日の時点で合意内容はほぼ決まる。JMMCはサウジアラビア、クウェート、ロシア、ベネズエラ、アルジェリア、オマーンなどで構成されており、JMMCの勧告内容とOPECの合意内容に相違は生じない見通し。

 ただ、協調減産期間の延長観測が原油高を持続させるとは思えない。日量で約180万バレルの減産規模は変更されない公算だ。今年5月末のOPEC総会では協調減産期間の延長だけが合意に至り、減産規模の拡大など、その他の対応が見送られたことから失望売りが強まった。今回もこのパターンを警戒しなければならない。シェールオイルがけん引し、米国の原油生産量は過去最高水準で推移しているほか、OPEC加盟国のリビアやナイジェリアは増産を続けている。この3ヵ国で年初から日量で約110万バレル増産しており、協調減産の効力はかなり削がれている。

 国際エネルギー機関(IEA)が公表している月報によると、8月の経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油在庫(原油や石油製品の合計)は30億1500万バレルである。協調減産が開始されてから石油在庫は多少減ったが、胸を張って減少していると言えるほどの減少ではない。高止まりと表現するほうが妥当と言える。クウェートのマルズーク石油相は「(協調減産は)功を奏している」などと述べ、減産規模は十分であるかのような口ぶりであるが、在庫推移を見る限り、順調であるようには見えない。

●サウジ王子11人逮捕の波紋

 原油価格が上昇軌道にあることで、中東の産油国は楽観的な価格見通しを描いているのかもしれないが、原油価格を抑制する過剰在庫の解消は道半ばである。というよりも、緒についたばかりである。このまま協調減産を続けるだけで、過剰在庫が減少していくと想定している市場参加者は限られるのではないか。原油高は増産意欲を刺激する。中東を中心とした産油国の自信過剰な態度がまた原油安を招く可能性があり、OPEC総会まで主要産油国の発言を追いかけていかなければならない。楽観には失望がつきものである。

 サウジアラビアで11人の王子や現職の閣僚など有力者が一斉に逮捕された。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の王位継承の地ならしとして、反対勢力の排除が行われたとの見方が有力である。国営石油会社サウジ・アラムコの上場を成功させるために不可欠な原油高が、ムハンマド皇太子の権力強化から連想されている。

 サウジ・アラムコのIPOは、次期国王であるムハンマド皇太子の経済改革の中心であり、原油価格回復の遅れは経済改革の遅れである。サウジにとって原油価格の回復は急務であり、協調減産の今後にも思惑が波及する。サウジアラビア政府は、サウジ・アラムコの時価総額を2兆ドル超(グーグルの親会社であるアルファベットの約3倍)と見通しており、これが成功水準だとするなら、現在の原油高はただの通過点でしかないのかもしれない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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