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【特集】暴走・北朝鮮、“有事の金”買いの行方 <コモディティ特集>

minkabuPRESS CXアナリスト・東海林勇行

―ゴールドETFに資金流入観測、半島情勢と金価格動向を読む―

 米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測の高まりを受けて金が調整局面を迎えたが、北朝鮮情勢に対する懸念から金の投資意欲が強い。8月以降、世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールド(SPDRゴールド・シェア <1326> [東証E])に投資資金が流入し、金をポートフォリオの一部に加える動きが目立っている。米主要株価指数が史上最高値を更新し、リスク選好の動きとなっているが、北朝鮮暴発のリスクもあり、今後の見通しを確認したい。

●当面は北朝鮮リスクが支援要因

 当面は北朝鮮の暴発リスクが金価格の支援要因だ。核開発をめぐり、米朝間の緊張が高まっている。第1次北朝鮮核危機で米国が北朝鮮の脅しに屈したことから、北朝鮮は今回も威嚇を続ければ米国が折れると期待している。ただ、トランプ米大統領はこれまでの北朝鮮政策は失敗と述べている。北朝鮮は2018年前半に核弾頭を載せた大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させると予想され、米国としては完成前に攻撃してでも朝鮮半島の非核化を達成したいと考えている。

 また、マティス米国防長官が「ソウルを大惨事にさらさない軍事オプションがある」と発言した。これまでソウルへの報復攻撃に対する懸念で手詰まり状態となっていたが、これを解決する手段があるなら、冬にかけて攻撃に向けた準備を進めることになりそうだ。北朝鮮は撃てば自殺行為となることを理解しており、米国の攻撃準備が進められると折れるのは北朝鮮になるとみられる。米大統領が11月に日中韓3ヵ国の訪問を予定しており、北朝鮮の戦後処理が話し合われる可能性も出てくる。金は米朝間の対立が続くと高値圏での推移が続くとみられるが、問題が解決すれば利食い売りを受けて調整局面を迎えると予想される。

●米FRBの利上げが長期的には圧迫要因

 金相場の方向は基本的にドルと逆相関の関係にある。20日の米連邦公開市場員会(FOMC)でバランスシート縮小に10月から着手することが発表され、金融政策の正常化や利上げ見通しで今後はドル高に振れやすいことが金の圧迫要因になる。米FRBの利上げ観測が強まってドル高に振れると、金市場から投資資金が流出し、宝飾業者など実需筋の買い意欲が強まる水準まで金価格が下落することになる。

 ただ、これまで米国のインフレが想定通りに進まず、金融政策の正常化に予想以上に時間がかかっており、今後も低インフレとなるようなら、利上げは先送りされる可能性が出てくる。米FOMCでは年内あと1回、来年は3回の利上げが予想された。ハリケーン被害からの復興需要がインフレ要因となり、12月の利上げが正当化されるとみられるが、来年以降もインフレが続くかどうかが焦点である。

●ロシアゲートなど他の政治経済イベントも焦点

 当面は北朝鮮問題と米連邦準備理事会(FRB)の利上げの行方が金市場のメインテーマとなるが、米政権の政策実行に対する懸念やロシアゲート(米大統領選でのロシアの選挙妨害に対する疑惑など)問題、米国の債務上限引き上げ問題など、米国には様々なリスクが残っている。また、米国以外では欧州中央銀行(ECB)など他国の金融政策の正常化が問題なく進められるかどうかや、英国の欧州連合(EU)離脱の行方も焦点となる。10月には中国の共産党大会、日本の衆院解散による総選挙もあり、これらの結果と見通しも確認したい。

(minkabuPRESS CXアナリスト・東海林勇行)

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