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【特集】燃費規制強化で高まる需要、“自動車軽量化”ニーズ捉える銘柄は <株探トップ特集>

三菱マ <日足> 「株探」多機能チャートより

―自動車産業激変の時代に欠かせない軽さ追求、成長分野めぐり競争激化―

 世界的に環境・燃費規制が強化されるなか、自動車の軽量化ニーズが一段と高まっている。これは、車体が軽ければ軽いほど燃焼消費量が少なくなり、消費燃料が少なければ少ないほど排出ガスが低減できるからだ。軽量化のカギを握るのが部品メーカーや素材メーカーの取り組みで、足もとでは開発生産拠点を新設する動きなどが活発化。27日から東京ビッグサイトで開催される「東京モーターショー2017」では電気自動車(EV)自動運転技術が関心を集めるとみられるが、エンジン搭載車であれEVであれ欠かせない“自動車軽量化”にも注目してみたい。

●搭載機器の拡大などで車重は増加の傾向

 近年、自動車の燃費規制が厳しさを増している。例えば、最も厳しいとされる欧州の2021年規制では15年規制と比較して30%近くのCO2排出削減が求められており、自動車メーカーにとって大きな課題。エンジンの効率化だけで燃費・排出ガスを改善するのは難しく、15~16年にかけて発覚した一部自動車メーカーの排出ガスや燃費データの改ざんもこうしたことが起因している。一方で、最近の自動車は快適性を向上させるために搭載する機器が拡大し、衝突安全性能を高めるため部材の厚みが増すなど、自動車の総重量は増加する傾向にある。重量を100キロ軽量化すると燃費が1リットル当たり1キロ向上するといわれることから、排出ガスの低減や燃費改善を実現するためには車体の軽量化が必要不可欠となる。

 環境対策として、イギリスやフランスが40年までにガソリン車やディーゼル車の国内販売を禁止すると表明し、中国なども追随する構えをみせるなど、世界的に推進機運が高まるEVでも車体軽量化は大きな意味を持つ。EVの弱点のひとつとされる走行距離の短さを克服するためには、搭載されるリチウムイオン2次電池の性能向上とともに、車体を軽くして走行距離を伸ばすことが求められ、これに適した軽量・高強度な素材の需要はさらに高まることが予想される。

●三菱マはアルミ板材の米国生産を検討

 そこで、軽量素材の一番手として挙げられるのが、耐食性に優れ、鉄に比べて比重が3分の1というアルミニウムだ。ラジエーターやエアコンなどの熱交換器のほか、フードやドアといったボディーでも鉄からアルミへの置き換えが進んでいる。こうしたなか、環境規制で先行する欧米で事業を拡大する動きが相次いでおり、UACJ <5741> は今年4月から、子会社がメキシコに設立した自動車関連部品の販売会社が営業活動をスタート。三菱マテリアル <5711> 子会社の三菱アルミニウムは9月、北米に自動車熱交換器用板材の製造拠点を設置する検討を開始した。

●東レは欧州に新素材の開発拠点を新設へ

 樹脂材料はアルミを含め金属よりも比重が小さいため、軽量化の効果はさらに大きい。また、樹脂は複雑な形状に成形可能であることから自動車設計の自由度が増し、リサイクルも容易といった特徴があり、今後さらに自動車部材の樹脂化が進むことが見込まれる。直近では、三菱ケミカルホールディングス <4188> 傘下の三菱ケミカルが16日に、欧米市場での炭素繊維事業の拡大を目的に、イタリアの炭素繊維強化プラスチック(CFRP)自動車部品製造販売会社に出資すると発表。三井化学 <4183> は1日付で、子会社で進めていた熱可塑性エラストマー「ミラストマー」の増産設備が稼働したほか、DIC <4631> は9月、PPS(ポリフェニレンサルファイド)コンパウンドの生産能力を増強する計画を明らかにした。

 また、東レ <3402> は17日に、自動車関連メーカーが集積するドイツのミュンヘン近郊に環境車向け新素材の開発拠点「オートモーティブセンター欧州」を来年8月に開設すると発表。旭化成 <3407> は1日付で、ドイツのドルマーゲン市に欧州R&Dセンターを開設した。

●ジーテクト、メックは「マルチマテリアル」技術で注目

 このほか、アルミやチタン、CFRPなどを組み合わせることで車体を軽くする技術「マルチマテリアル」も熱い視線を集めている。この分野では、鉄とアルミを接合する「TSW」という独自工法を持つジーテクト <5970> 、樹脂と金属を直接接合させるための金属表面処理技術を有するメック <4971> 、炭素繊維強化熱可塑性樹脂シート材の成形が可能な真空プレス装置を開発済みの北川精機 <6327> [JQ]、ガス軟窒化処理という方法で部品の軽量化につながる処理方法を確立しているオーネックス <5987> [JQ]、ハイテン材(高張力鋼板)の加工技術に強みを持つ東プレ <5975> などに注目したい。

 また、木などの繊維から作るセルロースナノファイバー(CNF)が「マルチマテリアル」進展のカギを握るともいわれるなか、デンソー <6902> やダイキョーニシカワ <4246> 、トヨタ紡織 <3116> 、アイシン精機 <7259> 、マクセルホールディングス <6810> などが参加する自動車向けCNF実用化プロジェクトが環境省主導で動き出している。

 これ以外では、住友重機械工業 <6302> にもビジネス機会の拡大が期待できる。同社は9月に、開発を進めていた自動車ボディー・フレームの大幅な軽量化を実現する製造システム(STAF)の評価設備が完成。同社はSTAFを次世代の成長事業と位置付け、24年に100億円の売り上げを目指す方針で、既に車体部品への適用に向けて自動車メーカーと検討を始めている。

●住友理工や日本精工は東京モーターショーに出展

 今週末から開催される「東京モーターショー2017」では、各メーカーが自動車軽量化につながる製品を展示する予定だ。例えば、住友理工 <5191> がラジエーターなどに使われるホースで従来比20%軽量化した製品などを紹介するほか、日本精工 <6471> はEVのドライブシステム全体のさらなる小型化・軽量化を実現する「トラクション スクウェア ドライブ」などを出展予定。ケーヒン <7251> は小型・軽量化した新開発の次世代型電子制御スロットルボディー、豊田合成 <7282> は樹脂を採用した次世代フロントモジュール、八千代工業 <7298> [JQ]は樹脂製燃料タンク、日立金属 <5486> は高強度・高靭性ダクタイル鋳鉄などの軽量化技術、日信工業 <7230> は燃費向上に貢献するアルミ製品を、それぞれ出品する。

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