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【特集】衆院選・与党大勝で「安定の日本」に世界の評価、上昇相場“本番”はこれから(上) <三編集長座談会>

山岡和雅(外国為替担当編集長)、中村潤一(株式担当編集長)、森成俊(商品先物担当編集長)

―株式・為替・コモディティ3人のスペシャリストが語る衆院選後のマーケットの行方―

株式投資サイト「株探」「みんなの株式」、外国為替情報サイト「KlugFX」を中心にマーケット情報、分析記事を日々配信するminkabu PRESS編集部。その株式、為替、コモディティ各分野のベテラン編集長3人が、衆院選後に連騰記録更新を重ねる日本株、レンジブレイクがみえてきたドル円、明暗分かれる銅と金相場など、誰もが気になるマーケットの行方を読み解く。第1回目の今回は株式のスペシャリストである中村潤一編集長の相場分析をお届けする。(10月23日の対談を掲載)

【出席者】
中村潤一(株式担当編集長)、山岡和雅(外国為替担当編集長)、森成俊(商品先物担当編集長)


●日本株 59年ぶりの記録更新、“相場は変わった”

――株式相場はこんなに勢いよく上がり続けて大丈夫なんでしょうか

中村(株式担当編集長) 少し過熱感はありますが、EPS(1株利益)の比較でみた場合、決して割高ではないし、バブル的に買われているわけでもありません。為替も企業の想定レートより円安方向に振れており、その分はまだ相場に織り込まれていません。

 なんといっても、14連騰は1960年の12月から1961年の1月にかけて半世紀以上前に記録されたもの。あのバブル期にも越えることはなかった、その記録を抜いて“最長”を更新したことは、瞬間風速で達成したものとはいえ、「相場は変わった」ことを暗示するものと考えています。将棋の藤井聡太四段の“29連勝”も約30年ぶりの歴代1位の記録で、今はそのときの高揚感に似たものがあります。

 株価上昇の背景にある最大の要因は、米国の株高。日本株はそれに追随していると見るのが正しいところ。加えて円安と良好な企業業績。衆院選を与党圧勝で終え、これまで成果がはっきりしなかったアベノミクスですが、気合いを入れて仕上げてくるのではという期待もあります。こうした様々な条件が重なって、いまの上昇相場が形づくられているのではないでしょうか。

――選挙で思い出すのは、2005年の小泉郵政改革の解散総選挙。あの時の相場もすごかった

中村 そう。ただ、違いもあります。あの時はパラダイム(枠組み)の組み替えという「変化」への期待があり、それに株式市場が反応しました。今回は政策的には「継続」であり、大きな変化は見込めません。その意味では、このまま強調展開が続くという感じではないと思います。上昇トレンドは変わらないけれども、どこかで踊り場的な感じで押し目が来るのでは。

 いまは世界的にまだ過剰流動性相場の余熱が残っています。しかし、米国でバランスシートの縮小、ヨーロッパでテーパリング(量的緩和の縮小)が進むと、金融相場の色彩は徐々に弱まってきます。業績相場に入って、全体がそれを意識し始めると、「相場はすでに八合目くらいまできた」という印象があります。来年はまだ強いとは思うのですが、今年のような相場とは色合いが違ってくるでしょう。ただ、明らかに下降トレンドへ転じなければ、全体は止まっても、個別株物色は十分に楽しめる相場になるんじゃないかと。

――日経平均の上値はどうでしょう

中村 96年6月高値2万2666円が上値のフシとして意識されており、これを抜くかどうかがポイント。これを抜くと91年3月につけた高値2万7146円までフシはありません。2万2666円まで1000円前後に迫りましたが、1回は調整を入れる可能性が高そうです。

 外部環境では先ほど触れたように、米国株が最大のポイントになります。北朝鮮のミサイル発射でも崩れなかった日本株ですが、米国株が下げて日本株が上がるという構図は考えにくい。米国株は割高な領域に入ってきており、もし景気が傾き出してEPSが下げると、株価の下げも急なものになるかもしれません。FRBの次の議長が誰になるかでかなり景色は変わると思います。

――相場を牽引してきた人気の半導体関連も過去の高値圏にきています

 半導体関連の株価に関しては、どこまで業績を織り込んだのかが焦点。収益的にはまだまだ上があるのでしょうが、利益が拡大しながら株価が下げに入ることは往々にしてあること。特に製造装置や工作機械では損益の赤字段階から株価は立ち上がり、利益がピークをつける前に天井を打つ傾向が見受けられます。

 いまは指標株である東京エレクトロン <8035> の株価がどこまでいくかに注目しています。同社株は2000年につけた最高値2万0090円にあと800円ほどの水準まで上げてきています。当時よりは収益は遙かに伸びていますので、ファンダメンタルズ面からは買われすぎということではありません。ただ、過去の高値圏までくると、どこかで反転するんじゃないかという意識も働きます。ここから本腰を入れて買いにいきましょうというムードにはなりにくいかとも思いますが、本当にパラダイムシフトが半導体のマーケットを押し上げているのであれば、最高値更新は一つの通過点に過ぎません。

(10月26日にFX担当の山岡編集長、27日にCX担当の森編集長の相場分析を配信する予定です)

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