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【特集】総選挙後も“株高が続く3つの理由”、総仕上げアベノミクスの上昇力 <株探トップ特集>

下された審判、国民の支持は「アベノミクス継続」へ。東京株式市場の上昇は新段階へ入った――。

―2兆円規模の補正予算策定か、一段の金融緩和観測も―

 22日に投開票された衆院選挙は、自民党、公明党が3分の2超の議席を獲得する与党の大勝で終わった。これを受けた23日の東京株式市場は、日経平均株価が前週末に比べ239円01銭高の2万1696円65銭に上昇し、史上初の15連騰を達成した。この日は、与党勝利を好感し外国人買いが入ったとの観測もある。株高が加速する東京市場に今回の選挙結果はどのような影響を与えるのか。アベノミクスの行方と株式市場の見通しを探った。

●「予想の範囲内」も勝ち過ぎず、ほど良い議席数を好感

 衆院選は、自民党は280超、公明党が30近い議席を獲得。与党が3分の2を超す310超の議席を得る勝利で終わった。この結果に対しては、「ほぼ予想の範囲内」と見る声が多い。一時囁かれた自民党単独による議席数300超えはならなかったが、「勝ち過ぎず、負け過ぎない、ちょうど良い議席数」と市場では評価されている。この結果を受け、この日の日経平均は、史上初の15連騰を達成した。日本アジア証券の清水三津雄ストラテジストは「いったん、利益確定売りが出ることも予想されるが、今後の焦点は、これから本格化する決算発表。その結果次第では、日経平均は2万3000円を目指すことは期待できる」とみる。

●日本の政治安定感を評価し外国人は一段の買い越しへ

 そんななか、市場では今後も日本株の上昇が続く3つの理由が指摘されている。第1には外国人買いの継続だ。外国人投資家は9月第4週に現物株ベースでは10週ぶりに買いに転じたが、直近の3週間で1兆3000億円超の買い越しを記録している。「外国人投資家は、衆院選の自民党勝利によるアベノミクス継続を前向きに評価するだろう」(市場関係者)との見方がもっぱらだ。外国人投資家は今年中盤に売り越しを続けた。それだけに、円安基調で業績拡大が続くなか、世界的にみても割安感が強く政治面での安定感が際立つ日本市場への買いは継続させざるを得ないとみられている。

●黒田総裁の去就に関心、日銀は量的緩和強化も

 第2には、黒田日銀総裁の任期が来年4月に迫るなか、日銀の政策に変化が出る可能性もあることだ。自民党が選挙に負け、日銀総裁が交代すれば、金融政策の根幹が変わることが懸念されてきたが、上田ハーローの山内俊哉執行役員は「自民党の勝利でアベノミクスの基本路線が継続することは評価されるだろう」という。もっとも、「新たな日銀総裁の任期は5年間あるだけに、その間には金融緩和の出口(エグジット)を視野に入れる必要もある。この点を考慮すれば、来年4月に向け黒田総裁は交代することもあり得る」と指摘する。しかし、たとえ日銀総裁が代わるとしても当面、予想されるのは「一段と量的緩和を強化することだ」(山内氏)という。日銀の新審議委員に就任した片岡剛士氏は、「現行の緩和は不十分」と主張している。ここ無風状態が続いた日銀金融政策決定会合だが、“アベノミクス総仕上げ”に向け今後の状況次第で日銀の政策が再度、金融市場に円安・株高をもたらす可能性もあるわけだ。

●「消費増税」「憲法改正」を視野に景気刺激策の思惑

 第3には、衆院選を経て一段の景気刺激策が予想されることだ。今後の政治スケジュールをみた場合、見逃せないのが19年10月に予定されている消費税の引き上げだ。さらに、20年を視野に改正憲法の施行も目標となっている。前出の山内氏は「消費税引き上げ後の景気減速の悪影響をできる限り抑えるために、今後、景気対策を実施してくることが予想される。景気の一段の拡大は、憲法改正の実現に向けてもプラスに働くだろう」という。同様に日本アジア証券の清水氏は「今後、2兆円前後の補正予算が打たれる可能性はあると思う」とみている。

 こうしたなか、今後も日本株の上昇基調は続きそうだ。人づくり革命に関連する、JPホールディングス <2749> やリクルートホールディングス <6098> などはもちろんのこと、今後の狙い目のセクターとしては、補正予算の恩恵を受ける大成建設 <1801> など建設株や、出遅れ感のあるソニー <6758> やNEC <6701> など電機株、トヨタ自動車 <7203> などの自動車株、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> など金融株に投資妙味が膨らんでいる。

●市場関係者の見方

◇証券ジャパン 調査情報部長 大谷正之氏

「深押しなく上昇トレンド継続へ」

 自民党が勝利して、与党で全議席の3分の2以上を獲得し、来年9月の自民党総裁選で安倍首相が3選を果たす可能性が高まった。強力な経済政策を推進するためには、長期政権が不可欠と考える市場関係者が歓迎する結果だ。また、長期的には“まだ道半ば”といえるアベノミクスの成果を20年に向けて確かなものにしてほしいという期待感もある。きょうまで15日続伸と、急ピッチな上昇を続けているだけに、小幅な調整はいつあっても不思議ではないが、外国為替市場での円安傾向や株式需給の良好さが追い風となり、深押しすることなく日経平均2万2600円程度までの上昇は想定できそうだ。

◇桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

「米国株牽引で2万2000円突破も」

 全体相場はモメンタム的には行き過ぎに買われている感は否めないが、企業の収益との比較で考えれば今の日経平均は妥当な水準といえる。15連騰の背景は何といっても米国株の強調展開に引っ張られた要素が強い。また、週明け23日の上げ幅が大きくなったのは、為替が円安に振れたことに加え、衆院選の結果も大きい。与党勝利は織り込んでいたとしても、ここまでの大勝はマーケットも織り込んでいなかったと思われる。どこかで調整は入るのだろうが、下値は限定的であり、場合によっては押し目らしい押し目を形成せずに2万2000円台まで走る可能性もありそうだ。

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