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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆グレートローテーションのぐらつき◆

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

〇米債利回り乱高下、一旦収束の公算〇

NYダウは朝方134ドル安で寄付き、56ドル高で終わった。北朝鮮ミサイルで波乱となった地合いは欧州市場まで残り、ドイツ株1.46%安など、軟調な展開だった。リスク回避から米10年債利回りが、一時2.086%まで低下(前日2.1590%)、2.14%近辺に戻す展開となった。つれて、ドル相場は2年半ぶりの安値から持ち直した。

北朝鮮問題は一気に軍事衝突に発展しないとの見方、8月のCB(コンファレンスボード)消費者信頼感指数が3月以来の高水準となり、6月ケース・シラー住宅指数の上昇など、年後半の米経済に成長期待が戻ったこと、9月1日発表の8月雇用統計は「8月は6年連続下振れ」との弱気が支配的だったが修正ムードが出たこと、などが背景と考えられる。

トランプ政策=9月末期限の連邦債務上限引き上げ問題、NAFTA脱退の恐れ、減税策失望リスクなど、への懸念やFRBの利上げシナリオ後退がリスク回避要因になっていると思われるため、未だ「底を打った」とは言い切れない情勢。投資家心理を投影し、JPモルガン週間顧客調査で、米長期国債保有は「ニュートラル」(ベンチマークと同等)との回答が75%と12年8月以来、5年ぶりの高水準となった。大半の投資家は見送り態勢で、一部、投機的動きで乱高下しやすくなっていると思われる。

北朝鮮問題では、米軍は「真剣に」戦争準備に入っていると見られるが、そのために必要なことがあるとの見方。つまり、韓国軍を戦える状態に戻すことが必要で、先週の米韓合同軍事演習開始辺りから指摘されている。ハリス太平洋軍司令官らが乗り込み、厳しい演説を行い、韓国空軍が国境近くで爆弾8発の投下訓練を行った。文在寅大統領は、対日徴用工問題で急に鉾先を収め、対北で「強力な報復」に方針転換と伝えられる。米韓の統合参謀本部議長が電話会談を行い、軍事的措置を含む厳しい対応措置を講じることで合意した。文政権の対北、対中の親和路線は急速に影が薄くなる公算がある。この問題を任されたトランプ政権の軍人トリオの「現実路線」と受け止められる。

一方、債券から株式への資金シフト(グレートローテーション)に逆流の見方が出始めている。米銀ウェルズ・ファーゴのファンド投資責任者が、「年金基金は利益を確定し、大幅な損失を被る可能性を制限するため、今後数年のうちに最大1兆ドルの資金を株式から債券に移すことが予想される」とブルームバーグのインタビューで述べた。債券ファンドPIMCOなどでも同様の意見を主張している。債券畑からの呼び込みとも取れなくもないが、リスク回避要因が目白押しなのも事実。超低金利(10年債はリーマン前が無くなる)とリスク多発の綱引き局面が続くものと考えられる。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/8/30号)

《CS》

 提供:フィスコ

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